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老人介護問題をテーマに、現代社会の矛盾や人間の善悪を鋭く突く衝撃作。日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。
読み終わっても心の整理が未だに出来ない。それほど深くえぐられたように考えさせられる。自分自身だけでなく、妻と子供、両親の数年後を想像してしまう。そして、決して明るい展望が見えてこない現実に気が滅入る。
また、『絆』という言葉のもうひとつの意味を初めて知った。これにも身震いする。何もかもが衝撃的で文句なしの見事な傑作。
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老人介護の問題とミステリがいい感じに組み合わさっている。
安全地帯の人がつくった、自宅介護を前提とした今のシステムには無理があると思う。
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「身内の介護というのは、多くの人が直面する問題だ。極めてプライベートなのに、社会問題でもある。」(解説文)
「人間ならば、守られるべき尊厳がある。生きながらえるだけで尊厳が損なわれる状況に陥っているなら死を与えるべきだ」との信念を持ち、「犯罪を犯したことは認めたとしても、罪は背負わない」と宣言する犯人。
「たとえどれほど立派な信念に基づいていようとも、救いのための殺人など認めるわけにはいかない」と、検事は対決する。
彼の殺人という行為は、救済と言えるのか。
そして、繰り返し語られるイエスの言葉。
「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」
少子高齢化と人口減少が進展し、介護問題が我々に重くのしかかる、そんな現代に一石を投じる日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。
3.11.以降、流行語とさえなった”絆”、この言葉には、手枷足枷、人の自由を縛るものという意味もあると、著者は記している。
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(15.10.26)
現代の日本における介護や終末医療に関する問題を提起するような、限りなくノンフィクションに近い話。自分も祖母の介護を目の当たりにしていた経験から、とても考えさせられる一冊だった。被介護者にとって、また家族を介護する者にとって、本当の幸せとは一体何なのだろうか。そして日本の社会福祉制度は、高齢化の加速する今後の社会においても本当に機能するのだろうか…うーむ。
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犯人に激しく同意してしまった。実態を知らず、自分は安全地帯にいながら正義感たっぷりに『後悔させ、罪悪感を負わせなければならない』と犯人を詰問する検事の大友こそが罪人だと思った。犯人は誰かという謎と、介護という身近な社会問題が小難しくなく描かれていてとても面白かった。
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介護の問題を扱った社会派小説。ミステリー要素も入り、読みやすく介護の問題も学べる。こういった小説をかける人はすごいと思うし、読んでいても色々勉強になる。社会に対する憤りを読み応えのある、小説にして世に出せる能力を持つ人は、多くの人に問題を提起し、投げかけることができるので、世界を変えられる能力さえ持つと思う。
まだ、人事に考えていた介護の問題だが、読んでいて心痛い。「介護なんてボランティアでするものだから、儲かってはいけない」と言う意見が強いのだろうか?その考えこそが一番の問題で、続けられる構図づくりが必要だと思う。
死について、自然界では自力で生きられないものは死んでいくしかない。人間だけが、延命の科学を得たが、負の効用も少なく無く、
尊厳死も重要な選択肢の一つだと思うが少数派だろうか。
考えさせられる一冊。
【知】
知通常の事故では約九割が不起訴、死亡事故でも三割以上が不起訴となり、罰金や免停など道路交通法上の処分だけで罪には問われない事がある。
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おそまきながら手を伸ばしたロスト・ケア。文庫版解説で近藤史恵さんが「正直、あらすじを聞いた時点では好みではなく最後に残して読んだが一気に引き込まれた」と書いているがその通〜り〜。
手に取れなかったらまさにそのせい。
「介護疲れ」「高齢化社会」「ケア施設」・・・・えー、こんないきなりの重たいコンテンツ、エンタメとして成立しなさそう。暗そう。救われなさそう。共感しづらそう。できれば目を背けたいな。
そんな気分にずどんと襲われ、作者の「絶叫」を読んでほどなく手に入れたはずのこの作品は、ずーとずーと、いわゆる積読状態。宗教・老後・世界経済とかって、私の苦手分野なのですよ。
で、何とか開いて読み始め、冒頭の裁判をこれからでてくる登場人物たちとともに「君誰?」と思いながら読んでゆく。犯人が「彼」とされているだが裁判〜判決まで描かれるので、つまりは若干、コロンボ形式ではあるわけだ。犯人(彼、だから誰かはわからないにしても)がいて結論があり、関係者がそこにいて、もうあらかたこんな感じか・・と思わせての導入なので。ところがこれが、かなりリズミカル。最初がサクサク進んで、さあこのひとたちはなんなの、ということで予想通りそのひとたちの物語が順繰りに続く。おーこれはありがたい、飽きない飽きない。
イニシエーションラブで、「もう一度読み直したくなる」だったらこれも、そうじゃない?
「彼」の登場が、予想通りのありきたりなものではなかったのがちょっと、新鮮だった。うれしいひねり、感謝!
淡々と物語が進み、クールな中に作者の問いかけもあり、でもそれが過剰にうるさくなく、そうして後半、作者がひょいっとおいていった、軽いどんでん返しのおかげでもう一度かるくこの本を流し読みする、したくなる。
それは名作、ではないのかい?
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考えさせられた1冊だった。
世の中のことは全て経験しなければ何も分からない。
私も「介護」と簡単に言っているが
実際に両親の介護が出来るんだろうか?
シングルマザーで息子を育てて
働いて・・・やっと息子も一人前
若さと元気を引き換えに得た自由な時間。
これからが自分の人生だ!
と思った矢先に親の面倒。
きっと思うだろう。
自分の人生っていつでも
誰かに振り回されていると。
これは本なので殺人を侵すが、
親や自分が高級老人ホームへなど
入れないほとんどの国民が
今目の当たりにしている介護問題。
凄く貴重な視点だと思う。
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読み進めていくウチに
頭の中で作っていた人物像を覆され
確信犯という言葉を正しい意味で使い
現実の問題も考えさせられる‥
恐い本だった
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老人の格差、犯罪は認めても罪は認めない「彼」、介護の壮絶さ、家族を縛りたくないけどつながっていたい想いなど、読み終えてからもグルグル頭が回っていてまとまりません。これからの日本がどうなっていくのか、本当に真剣に話し合うべきだと思った。
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題材は良いし胸打つものもある。
ただ、読みだしてすぐに「あ、これは何かあるな」と思わせてしまうようなミステリの構成の仕方はあまり好きじゃない。
サプライズは急に訪れるから驚けるわけで、“何かある”ことをここまで匂わせてくると返って興醒めしちゃう。
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評価も高く、以前から気になっていた本作。
題材が介護だけに、、重いんだろうなぁって思ってたら案の定だった。
身内の介護、、あと何年かしたら確実に身に降りかかる問題であることは認識してる。
だから極力考えないようにしてきた。。
でも本作を読んで、考えさせられた。。
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読み終わって軽く目眩を感じるような衝撃。
宮部みゆきの「火車」に匹敵か或いは超える本格的社会派ミステリーの傑作!
凄い作家に出会って嬉しい。
次作の「絶叫」も楽しみ。
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2023年 再読
前回星3個で今回星4個
読む年齢で感想が変わってくる。経験が増えた分
いろんな気持ちが増える。私は安楽死、尊厳死肯定派でできれば最後は自分で選択したいし 自分や
家族がわからなくなったら死んでしまいたくなる。
殺してくれる人がいたらその人に感謝する。
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個人的には久々の社会派ミステリーの傑作。
小難しい内容かと思いきや、意外とエンタテイメントで
今後も自分に振るかかるであろう現実的な
不安もあってか、ぐいぐいと読み手を渦中へと
誘う展開が秀逸・・・・。
「絶叫」が読みたい