紙の本
大正から昭和にかけて女性の権利獲得に奔走した活動家、平塚らいてう氏の評論・随筆集です!
2020/05/05 11:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、大正から昭和にかけて活躍した思想家であり、評論家でもあり、フェミニストでもあった平塚らいてう氏による代表的な評論・随筆を36篇収録したものです。平塚氏は婦人参政権等、女性の権利獲得に奔走した活動家の一人として知られますが、結局、その実現は第二次世界大戦後、連合国軍の日本における占領政策実施機関GHQ主導による「日本の戦後改革」を待たざるを得えませんでした。しかしながら、1911年(明治44年)9月、彼女が25歳の時、雑誌「青鞜」発刊を祝い、自らが寄せた文章の表題『元始、女性は太陽であった』は、女性の権利獲得運動を象徴する言葉の一つとして、永く人々の記憶に残ることになりました。そのような平塚氏による、「新しい女」、「独立するについて両親に」、「個人としての生活と性としての生活との間の争闘について」、「母性の主張について与謝野晶子氏に与う」、「母としての1年間」、「母性保護の主張は依頼主義か」、「物価騰貴を感謝する人」、「母性保護問題について再び与謝野晶子氏に寄す」、「婦人の労働問題と種族問題」をはじめとした代表作が収録されています。
投稿元:
レビューを見る
速読出来ない。奥が深い。
不幸かな、昔から現代にいたるまで、
根本的な問題が何一つ変わってない。
このままでは、日本があぶない。
投稿元:
レビューを見る
平塚らいてうは、今から123年前の1886年2月10に東京に生まれた思想家・評論家。
「元始女性は太陽であった」はあまりにも有名な言葉ですが、これは性差別や男尊女卑の抑圧された社会から女性の自我の解放を目指した、日本初の女性文芸誌「青鞜」の創刊の辞でした。
世間から冷たい眼で見られ嘲笑されても、投石されスキャンダラスにまみれても屈しなかった平塚らいてう、どうかするとはるか昔の明治時代の女権拡張論者のようなイメージで考えがちですが、とんでもない、85歳まで生きてベトナム反戦運動も闘って、1971年に永眠したのでした。
たしか7年程前、たまたま訪れた東京は神保町の岩波ホールで、羽田澄子監督作品『元始、女性は太陽であった・・・平塚らいてうの生涯』を上映していたので、躊躇せず当初の約束を遅らせて、飛び込んで見たことがありました。
私の中では、彼女は日本で初めて女性による女性のための雑誌「青鞜」を創刊した女性解放の闘士という、いかついイメージが先行していましたが、わずか14秒の動く映像としての平塚らいてうを見て、そして19歳のとき禅に出会って精神と身体を解き放って揺るぎない境地に到達したり、森田草平と心中未遂や年下の画学生・奥村博史と恋愛、未入籍の結婚・出産などなど、単なる男勝りの突っ張っているだけの人ではなかったことを思い出しました。
挿入されている周辺の人びとの証言で、自分の家の周りでデモをするなんてみっともないとか、あっ、そうそう瀬戸内寂聴師匠が、結婚は個人の結びつきが大事で法律に認められる必要はないという平塚らいてうの見解に対して、つまり姑はいやだというんですよ、あつかましい話でしょう、と答えていたり面白いものがありました。
それにしても、『元始、女性は太陽であった』が出たのが明治44年ですから1911年、わずか98年前に、よろい・かぶとをまとって一人の女性が宣言しなければならなかったほど、女性は人間として認められていなかったという現実を、思い知らなければならないと思います。
収められている代表的評論36編は、心配していたほどではなく、比較的短く読みやすい文章ですし、彼女の思想の発展過程に応じてまとめられていて、そして編者の米田佐代子のわかりやすい解説によってより鮮明に理解できる構成になっていて、見事な編集だと思いました。
ともかく、どれほど世間の批判にさらされても信念を曲げず、自ら結婚制度や家制度を否定するからには戸籍上も我が子を私生児にすることもいとわないという徹底ぶりに、私にはとても出来ないと消極的に思う反面、自分で自分の生きる道を決然と選んで切り開くという生き方に憧れ、ものすごくカッコいいと思う気持ちも湧いてきます。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
わたしたちは、
いつでも現実を視る鋭い眼と、
遥かな未来を見透かす長い眼と、
心の内側を凝視する、
かつて瞬きをしたことのない深い眼と
この三つの眼をもって
生きたいと思います。
「人類にひとつ言葉を」平塚らいてう
投稿元:
レビューを見る
平塚を読み女性主義について考える。この主義の根本にある母性、恋愛、愛とはいかなるものか。それらは本能とくくられて無前提に用いられている感はあるものの、所々でその定義を見出すことが出来る。具体的に考えるには半世紀以上前に絶版になっているエレン・ケイの著作に当たらねばなるまい。
平塚の思想とその変化を時間で追いながら知り、雰囲気をつかむのに好適な一冊。戦争の前に斃れた女性主義の思想は、絶対的な価値なき今日の時代に一条の光を投げかけるものである。