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佐藤さんが初めて異文化体験してって話で結構自分の留学生活に重ねたりして。外務省の役人とか神学者として生きていくこととか、亡命チェコ人だとかが物語の中央。
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マサル・クロニクル。鈴木宗男先生には申し訳ないが、このような作家を私達にもたらしてくれた田中真紀子先生には、佐藤優を読む度に感謝してしまう。
ミステリでもないしエンタテインメントとも言えない内容で、会話文も堅苦しく、決して「読みやすい」本ではないのに、ここまで読者を引きずり込む魅力は一体何なんだろう。
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ロンドンでチェコからの亡命者である古本屋の経営者や神父に出会ってからも興味深いですが、ベーコンズフィールドにある陸軍語学学校ロシア語科で研修を受けることになるまでの紆余曲折も読み応えがありました。神学部の修士課程でチェコ人の神学者フロマートカを知り、博士論文はフロマートカの研究をかねてチェコのカレル大学への留学の可能性を期待し外務公務員専門職員採用試験を受験し合格。研修先はチェコではなく、イギリスかつ習得すべき言語がロシア語になってしまったもののロンドンでチェコ人亡命者との出会いがあり論文に役立つ本を集めることが出来る。好奇心と行動力には圧倒されました。しかし、外務省勤務という立場と好奇心旺盛で人との出会いに恵まれ交友関係が広がり情報収集にたけているキャラクタであることは相容れない事情が透けて見えるくだりもありました。武者修行時代の回顧録として面白く読みました。
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「ところで、懐疑論者でありながら、人間は社会的活動を積極的に行うことができるのでしょうか」
「本質的な質問ですね」とマストニーク氏は言って、しばらく考え込んだ。そしてこう続けた。
「論理的に説明することができないのですが、懐疑論者の方が社会により積極的に参与することができると思います」
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佐藤優氏については、非常に興味があった。
マスコミによって私に植えつけられた印象は、国策捜査の過程で故意に検察、マスメディアによって操作されたことが明らかになってきたので。
同志社大学神学部卒の外交官という彼のキャリアにも興味があった。
本書は、その佐藤氏が、外務省からイギリスに派遣されロシア語の研修を受けた時期、学生時代からロンドン時代まで親交のあった、亡命チェコ人の古書店店主はじめ、大学の指導教官、聖職者、そして友人たちとの、非常に内容の濃い言葉のやりとり。
佐藤氏は、おそらく非常に知的水準が高いと言って差し支えないと思う。その彼が、同じように知的水準の高い人々と交わす、スリリングな会話は、非常に興味深い。
本書は、その内容からなにか結論や意図を導き出すものではないと思う。
その、知的な会話、そのものを味わうだけで十分読むに値すると思った。
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前作(『紳士協定』)に続いて、著者のイギリス時代のことがわかり興味深い。
当時の東欧についても少し理解が進んだ。
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デイリー・テレグラフ 保守系
ガーディアン 労働党
タイムズ 中間系
インディペンデント 論争の解説が多い
文法の勉強をしていないときに、単語だけをつなげて外国語の本を読む癖はつけないほうがいい。
上智大学 イエズス会系
遠隔地ナショナリズム 米国やカナダに渡ったアイルランド系
人々が完全な相互理解に達することができるという幻想をすてることが不可欠だ
イギリスで免許を書き換えると有効期限が2030年 満70歳まで有効で、氏名や現住所を変更した時にだけ書き換えが必要
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佐藤優に関しては、鈴木宗男に絡んで背任容疑で逮捕・拘留した時の体験をつづった『獄中記』を読んでその特筆すべき博学と特異な感受性に衝撃を受けた。その後も、自ら目にしたロシアの崩壊を描いた『自壊する帝国』なども素晴らしい著作が続いた。一時期、あまりに多作になったためご無沙汰していたが、「プラハ」という文字に惹かれて本書を購入した。学生時代にソ連崩壊から間もないプラハに行ったのは1993年のこと。カレル橋やプラハ城、教会前の旧市街広場は中世ヨーロッパのたたずまいを保っていて、とても美しい街であった。もちろん有名なピルツナービアも本当においしい。
本書はそういうツーリスティックなものとは関係なく、同志社大学神学部の学生時代に研究対象としていたチェコの神学者フロマートカに恋した著者が、外務省のロシア語の教育期間でイギリスに赴任したときに会ったチェコ人たちとのつながりを描いたものである。プラハには実際に行くことすらない。しかし、東欧の書籍を扱う古書店インタープレイスのチェコ人店主マストニーク氏とのやりとりが中心となり人の運命というものを感じさせる展開になっている。その記述が実際に起きたものなのかどうかはわからないのだろうけれども、読ませる本になっている。
時代は1986年から1987年、ゴルバチョフのペレストロイカが始まっていたとはいえ、その数年後に共産圏が崩壊するとは著者含めて登場人物は想定していなかった。マストーニク氏は自身の立場に対する諦念もあってか、ゴルバチョフはソ連を再強化するだろうとすら言っている。そこから起きる事態を知っているものとして読むのが、スリリングな感覚を生むことになる。やはり、この頃の東欧にはそれぞれに大きなドラマがあるのだと思う。学生のときに他のどこでもなく東欧の旅行を選んだのは自分でもぼんやりとながらそういうことを意識してのことでもあった。ろくに語学もできなかったので、そういった事情を深く知ることもなかったのだけれども、やはり東欧には少しばかりの思い入れがある。
本書の背景でもある佐藤優の神学への拘りを個人的には共有することができないのではあるが、学問に対するストイックさについては、その機会を得ることもできたはずであったのに、自ら手放したような過ごし方しかできなかったという後悔もあり、レスペクトするところである。イギリスで相対したマストニーク氏も、宗教を信じているというよりも理神論であり、チェコ人がその民族的特性として宗教も共産主義も信じていない懐疑主義者であると言っている。一方の佐藤優は「神学を研究し続ければ、世の中の現実を、より現実的に理解できる」という。そういった中でチェコの文化や歴史を尊重することを通して深い関係性が築かれていくのである。
しかし、15歳の夏休みに「ソ連・東欧を1人で旅した際に、チェコスロバキア・ポーランド、ルーマニア・ソ連の国境をそれぞれ夜汽車で横断したときのことを思い出した」とさらっと書いているが、どういう行動力なのだろうと思った。語学研修時代にIRAのテロ問題も存在した北アイルランドに4回も行ったというのも含めてやはり違うところあるのだと思う。
※ チェコ出身の小��家、ミラン・クンデラの小説にはチェコスロバキアという国名が出てこないそうだ。ヨーロッパ人になろうとしながら、チェコ人であることを捨てきれないと分析されている。興味深い。
※ チェコに関しては、米原万里が自身が小中学生時代を過ごしたチェコとその後の友人たちの現在を追いかけた『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』も素晴らしい。
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『獄中記』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4000228706
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』のレビュー
http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4043756011
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著者の外交官研修時代を追体験するような精密な描写には目が離せない。
小生は「神学」に全く知見は無いが、佐藤青年が知への探究心に充ち満ちていることは本書でよくわかる。官僚としての人生とさまざまなめぐり合い。本書が示唆する人生の機微は実に興味深い。
小生も我が人生を振り返って、青年時代に著者のような深い考察をカケラなりとも持っていたのかと気恥ずかしい思いを抱いた。本書の続編も楽しみにしたい。
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★3.8(4.00) 2015年3月発行。著者が外務省に入省して2年目にイギリスベーコンズフィールドの陸軍語学学校でロシア語科に留学し、ロシア大使館に赴任するまでの1年2ヶ月間の出来事を記録した自伝。外務省を退官した今だから書ける内容ですね。チェコのフロマートカに心酔し、フロマートカを研究するために、外交官試験を受験。神学的な内容はかなり難しいが、そ例外の内容ななかなか面白いですね。1986年当時、ソ連や英国、それにチェコはこういう国だったのかと。ここまでの内容を書く著者の記憶力、語学力、行動力には敬服。
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元外交官、佐藤優氏の著書。氏は同志社大学神学部に
進学後、研究を続けるために外交官になる。
外交官になればチェコ語習得という大義名分で
チェコスロバキアに行けると考えた結果は
外交官になったものの希望してたチェコ語ではなく
ロシア語に回されたものの、研修先のイギリスで
自身の神学の勉強に非常にプラスになる様々な人と
の出会いがあった。
本書はその出会った人々について書かれている。
特に本書の前半部分を占める亡命者である
チェコ人の古本店主マストニーク氏との
やり取りはまるで物語かのように運命的な
ものを感じた。
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佐藤優氏の外交官研修時代の1年2か月のイギリスでの日々を綴った自伝。古本屋を営む亡命チェコ人との出会い、そして思想、哲学、歴史、言語等、あらゆる影響を受けて物事の見方を深めていく。この自伝を読み進めるなかで、世界について何も知らない読者である私も、複雑な民族の歴史を垣間見ることになる。知的好奇心を刺激される本書でした。佐藤優氏の知識の豊富さに圧倒されます。別の本も読んでみたいです。
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異能の外交官、佐藤優の出発点。古本屋を営む亡命チェコ人との邂逅。それが「知の個人授業」の始まりだった。―26歳、任官2年目。
私が祖国のためにしたことをマサルに知ってほしい。私はもう故郷に帰れないのだから。1986年ロンドン。外交官研修中の私は、祖国の禁書の救出に生涯を捧げる亡命チェコ人の古書店主と出会った。彼の豊かな知性に衝撃を受け、私はその場で弟子入りを願い出た――神学・社会主義思想からスラブの思考法、国家の存在論、亡命者の心理まで、異能の外交官を育んだ濃密な「知の個人授業」を回想する青春自叙伝。
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著者の外務省研修時代の自伝。ロシア語修習のため英陸軍語学学校在校中の1年余りでの出会いが大きく3つの物語で語られる。
・古書店経営のチェコ人亡命者との出会い
・英海軍将校との交流
・亡命ロシア人講師との会話
そのどれもが、濃厚な内容で読者をとらえて離さない。
大国に挟まれた東欧人の悲惨な歴史には、言葉がみつからない。古書店店主の「日本のような列強国民には理解しえないだろう」との言が印象に残る。
わが国のナチズムへはともかく、共産主義への対応の甘さを考えさせられた一冊。
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タイトルにはプラハが付くが、佐藤優の外務省ロンドン留学記であり、当時に一緒にソ連崩壊以前の時代のヨーロッパにタイムスリップする様な感覚を味わる本であった。
そもそもソ連課ロシア語習得にロンドン留学という組合せがユニークであるが、当時の亡命ロシア人との会話からソ連を垣間見る事が出来るのも興味深い。大国に挟まれる社会主義国チェコスロバキアの歴史と境遇は、今のウクライナ問題と重なる点も多く、また英国と北アイルランド問題から見る帝国主義の陰から翻って日本と沖縄の関係性も考えるきっかけになる。
各国政治主導者が、どう責任ある対応すべきなのか、という意味で、正に今読むべき本だと思った。