紙の本
色々と考えさせられました
2015/09/06 23:07
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねったいぎょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、まさに大絶滅が進行中であるという。確かに、うちの近所でも20年ぐらい前まではカエルがいました。夜には鳴き声が聞こえたものです。しかし、住宅を建てたり自然破壊をしたため、カエルはいなくなってしまいました。カエルがいなくなっても生活に支障はありませんが、生物の多様性が失われることは人類にとっても危機なのです。
この大絶滅を阻止することはできるのか。作者は、淡々と大絶滅が進んでいる証拠を提示していきます。これを読んで何を感じるかは、読者それぞれ違うでしょう。まずは事実を知ることが重要です。そして、何かをできる人は具体的な行動に移せばいいのだと思います。
色々と考えさせらる本ですね。この本は、できるだけ多くの人に読んでほしいです。
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ペルム紀末の大絶滅が古生代を終わらせ,白堊紀末の大絶滅が中生代を終わらせたように,現在進行中の種の激減は「人新世末の大絶滅」となって新生代を終わらせてしまうのだろうか?
先史時代から大型哺乳類を狩って絶滅させてきた人類は,近代化以降,化石燃料の使用による地球温暖化・海洋の酸性化,輸送による外来種の拡散,開発による棲息地の分断によって動植物の絶滅をさらに加速させてきてしまった。その速度は前例を見ないもので,この事態はやがては人類自身の絶滅にまでつながるのかも知れない。豊富な具体例とともに警鐘を鳴らす一冊。
初めて聞いたときは「人新世」なんて大袈裟な,なんて思っていたりもしたけれど,認識が甘かったかなぁ。長い間地殻に閉じ込められていた炭素は人間の活動で大気中へと大量に解放され,遠い将来からでも検出可能な地質学的痕跡を地球に刻みつつある。張本人でありながら,これを何とかしなければと考え,努力するのも人間だというのは不思議な感覚だ。どうにかなるものか,ならないものか,これは全く分からないとしか言いようがないけれど,現代人としては,ともかく人類がこれまでに獲得した知識,これから獲得していく智慧は失われずに後世に伝わっていってほしいな。後継者は別にホモサピじゃなくてもいいや。
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地球に生命が誕生して以降、過去5億年の間に天変地異による 5度の「大絶滅」があったとされるが、今日世界各地で急速に進む種の絶滅は人類の活動によるものであり、これを「6度目の大絶滅」と位置づけ、各地での取材をもとに未来に警鐘を鳴らすノンフィクション。
著者は、「絶滅」という概念自体が実はそれほど古いものではないことを生物史の観点から解説するとともに、アマゾンやアンデス山脈の森林、オーストラリアや地中海の孤島、アメリカ北東部の洞窟など、世界各地で絶滅危惧種の保存等に従事する人々に同行取材し、人類は、古くは大型動物を狩りによって絶滅させ、現代では化石燃料の大量使用による大気温度の上昇や海水の酸性化を急速に進めることで、多くの種の絶滅を招いていると指摘する。
「6度目の大絶滅」の結果は、人類自身の「絶滅」に他ならない。その意味で人類は絶滅の加害者であると同時に被害者でもある。地球の歴史からすればほんの小さな存在に過ぎない人類が、その欲望と探究心ゆえに自らの絶滅を導いてしまうという絶望感とともに、そんな中でも希望を捨てずに地道な活動を続ける人々の姿が描かれる。殊更危機感を煽るのではなく、徹底した現地取材を客観的に、時にユーモアも交えながら綴られる物語は、その深刻なテーマと分量の割に、のめり込んで一気に読んでしまう面白さがある。
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ある人類学者は「ヒトは六度目の大絶滅の原因であるのみならず、その犠牲者にもなるかもしれない」と警告する。遠い将来、ヒトではない或る地球上の生き物が、このような人類という生き物がいたと振り返るときが訪れるのであろうか。生命の絶滅も地球の消滅も、気の遠くなるような未来には必ずやってくるのは間違いのないことなのであります。
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人間が現在、地球に引き起こしている6度目の大絶滅。目につきやすい動物だけではなく、珊瑚礁や森、コウモリなど、網羅的と言うより具体的な説明なのが説得力を増している。さかしらな「対策」が示されるわけではないのも、正しい姿勢だと思う。その前の隕石衝突や火山活動、氷河期などによる大絶滅の説明も興味深かった。
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「現在、六度目の大絶滅が進行中であり、今回の原因はひとえに人類が生態系の景観を変えたことにある」。生物はどう滅び、そして今どう滅びつつしつつあるのかを追った13の現地取材をまとめた1冊。2014年度ピューリッツァ賞(ノンフィクション部門)受賞作。
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大げさかもしれないが、21世紀の「沈黙の春」とでも言うべきインパクト。地球史上5度あった大絶滅はいずれも自然が原因だったが、現在、6度目の大絶滅が人類によって引き起こされている。
センセーショナルが故、感情的な環境保護主義者の言にも見えるが、この説は、著者のフィールドワークからも、提示される数字からも非常に説得力が高い。
350Pに渡る本書は、人類が今回の絶滅の加害者であり被害者にもなるだろうという諦観的な締め括りで終わる。
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★2015年12月12日読了『6度目の大絶滅』エリザベス・コルバート著 鍛原多恵子訳 評価B+
期待通りの面白い科学ジャーナリストの著作だった。
これまで生物学上でBIG5と呼ばれる5回の生物大絶滅が認識されており、今進行中の絶滅の危機は6回目。他の種の絶滅に追い込んでいるのは、現生人類である。いずれ我々も自らの手で絶滅にむかうとして、資源の浪費、環境汚染、森林伐採、放出二酸化炭素による温暖化へ警鐘を鳴らす。
以下備忘録
■絶滅ビッグ5
1. オルドビス紀末445百万年前 氷期襲来
2. デボン紀後期380百万年前
3. ベルム期末250百万年前 温暖化と海洋化学状態の変化
4. 三畳紀後期200百万年前
5. 白亜紀末60百万年前 隕石衝突
6. 人新世? アントロポセン 人が大気の組成を変える?
■ 海酸性化 大気中のCO2現在400ppm ⇒2050年:500ppm? 産業革命前の倍 平均気温+1.9~3.9度
海が毎年250億トンの炭素を吸収⇒酸性化pH8.2から世紀末にはpH7.8へ
=生物生態系への深刻な影響が懸念される。
たとえば、サンゴ=海中の熱帯多雨林=生態系のための設計構造が崩壊する。
■植物の移動も加速するが、それを阻む障壁(道路、更地、都市)が樹木の種の絶滅へ
■種数・面積関係(SAR) S(面積)=CA(面積)z(zは乗数、CとZは定数、Zは常に1未満)
■ネアンデルタール人の滅亡も現生人類が引き金らしい
現生人類の遺伝子にネアンデルタール人のDNAが垣間見られ、ヨーロッパ人、アジア人はアフリカ人よりもネアンデルタール人に近い。
■現生人類が世界を変える存在。そして何かを求めてやまない心を持つことが最大の特徴。それは狂気の遺伝子か?
■現生人類と類人猿の差は、集団的な問題解決能力の差。
■言語により情報が保存され、変更され次世代へその知識が引き継がれて蓄積していく。また、コミュニケーションにより社会融和が図られ、人は進化から自由になった。一方で、他の種を絶滅に追い込むことにより、人類も自分がとまっている枝を切っている。
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ダイナミックな地球史のなかで大絶滅というと、恐竜を絶滅させた白亜紀の隕石衝突説をまず連想すると思いますが、それ以外にも生物は何度か大量に地球上から姿を消し、その後は全く違う生物が繁栄するということが起こっています。過去に5回、そのような出来事が確認されていることから「ビッグファイブ」と呼ばれているそうですが、これらの要因は1つではありません。
オルドビス紀末の絶滅=氷期
ペルム紀末、三畳紀末、ジュラ紀初期=地球温暖化と海洋化学状態の変化
白亜紀末=隕石衝突
ところが現在でも生物はどんどん姿を消しています。「絶滅危惧種」という言葉を聞いたことがあると思いますが、人間のスケールで当てはめれば緩やかに減少しているように見えるかもしれませんが、地球史のスケールで見ると、尋常ではないスピードで地球上から生物がいなくなっている。それは「6度目の大絶滅」と呼んでもいい規模であり、その要因は一体何か?というのが本書のテーマ。だいたい察しがつくと思いますが・・・・。
帯にその答えが書かれていますので、隠す必要はないのですが、では、なぜ、人類が6度目の絶滅を引き起こしているといえるのか、その証拠をつかむために著者は各地へと飛び、生物研究者と行動をともにし、そうして得た現実をまとめたのが本書。
発端は「黄金のカエル」と呼ばれる、中米パナマ共和国では普通に見られたカエルが大量に死に、目にすることが珍しくなったことへの関心から。それからすでに絶滅した生物、絶滅危惧種、へと調査が進み、それから生物研究史(絶滅という概念、進化論など)にも少し触れ、また、もはや飼育されている数が全てだという生物、絶滅を食い止めたいと奮闘する研究者の姿が描かれています。
さて、6度目の絶滅に加担しているとされる人類。そういうと現代人の密猟や環境破壊が思い浮かばれ、もちろんそれが大きなインパクトを与えているのはたしかなのですが、興味深いのは、大絶滅は人類が誕生した時点からすでに始まっていた、という点。
人類と近縁種のチンパンジーやボノボ、ゴリラは、遺伝子的にはほとんど同じですが、人類にはあって、近縁種にはない特徴の1つに、仲間と協力しあって問題を解決する能力、が挙げられています。個々の能力では近縁種の方が優れている点があるものの、彼らは互いに協力して物を運んだりはしない。また、ゾウやサイ、ライオンなど、大型で獰猛という特徴=襲われない、ということにつながるのですが、この特徴も人類のその能力では意味をなさない。
こうして人類は地球上のあらゆる地域に移動し、住むようになった。そうすることで外来種がもちこまれ、環境が変えられ、狩りが行われ、やがて生物の多様性は失われ、それが現在も続いているという。
だからこうしましょう、ということは本書には書かれていません。もちろん、読者がこれを読むことで、自分も絶滅に加担していることを意識してもらうことには期待していると思いますが、意識しようとすまいと、人類も地球上で生まれては消えていく生命体の1つに過ぎないということでしょうか。
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THE SIXTH EXTINCTION:
AN UNNATURAL HISTORY
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000816702015.html
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絶滅の概念は、18世紀初頭、キュビエにより、アメリカマストドンをめぐってもたらされた。
クルッツェンは、人新世の語を用いた、これまでの変化として、以下を指摘している。
・人間は地表の3分の1から半分に手を加えた。
・世界中の主要な河川の大半はダムが建設されたり、切り回されたりした。
・肥料工場が、すべての陸上生態系によって自然に固定される量を上回る量の窒素を生産している。
・海洋の沿岸水域における一次生産の3分の1以上が漁業によって消費される。
・人間が世界中の容易に入手可能な淡水の半分以上を使う。
人間の運搬による種の均一化がもたらす効果は、大陸がひとつに結合された場合を想定した思考実験によって、陸生哺乳動物は66%、陸生鳥類は50%減少すると推定される。
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大絶滅にかかわる学説史的なものを背景に、著者が世界各地を訪ねて取材した学者たちの活動をアンサンブル的に(もとは雑誌連載)散りばめてある。カエルのツボカビ、化石発掘、恐竜絶滅、海洋酸性化、熱帯多雨林、サンゴ礁、人新世、ネアンデルタール人などなど盛りだくさん。ヒトの手により現在進行中のまさにグローバルな事態を、地質学的な時間軸の中にすっきり位置づけてくれた。
個々のエピソードは何かしら聞いたことのある話がほとんどだだったが、個人的には以下の点などが新鮮であった:
・イースター島の環境破壊の原因は、直接的にはヒトよりもむしろネズミであった可能性が指摘されている(そのネズミはヒトが連れてきたにせよ)
・生物種の多様性は極から赤道に向かって増えていくが、それがなぜかについては通説がまだない(仮説はたくさんあるが)
・旧人類もネアンデルタール人も他の哺乳類と拡散パターンは同じで、海を越えてマダガスカルやオーストラリアには行かなかった。それをしたのは現生人類だけ
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地球上に「生命」が現れてから約40億年もの間に、さまざまな種が生まれては絶滅していった。
現代の私たちは地層や化石などの研究によって過去に5回の大規模な絶滅(ビッグファイブ)があったことを知っている。
(ウィキペディアの地質時代、大量絶滅を参照)
過去の大絶滅では当時に存在した種のうち70〜90%が失われたといわれている。私たちにいちばん馴染みがあるのが白亜紀末の大絶滅で、当時地上で大繁栄していた恐竜類が隕石の落下による影響で一斉に絶滅したことは有名だ。
そして、今現在、6度目の大量絶滅が進行中で、その主な原因が私たち「ヒト」である、という事がこの本のテーマである。
私たちヒト(現生人類)が約15万年前から存在しはじめ、アフリカをはじめとしてヨーロッパやアジアの各地へ拡散していったときから、当時各地に存在していた動物たち、マストドン、マンモス、スミロドン、オオナマケモノなどの巨大獣が次々と絶滅していった。ヒトが原因となる絶滅の有史後の例としてとりあげられているのが1800年に絶滅したとされるオオウミガラスだ。
さらにこの本では今まさに絶滅しようとしているたくさんの種について、調査や保護の様子が記述されている。
グローバル化の影響と思われるツボカビ病によって個体数を激減させている南米の両生類。
二酸化炭素の増加による海水の酸性化によって2000年代末には絶滅する可能性があるとされるサンゴ類。そのサンゴ礁が作りだす生態環境に依存しているといわれる数千〜数百万種の海洋生物たち。
アメリカのコウモリが大量死しているのはヨーロッパのコウモリとは共生しているカビによる「白鼻症」のせいで、これもまたヒトのグローバル化が原因であること。等々。
この本の読者が読後になにか不満を感じたとしたら、それは章構成の乱雑さに混乱したせいかもしれない。
私が思うには、「人類が絶滅という概念を獲得する話(おもにフランスの博物学者キュビエを中心とする)」と「過去の大絶滅(ビッグファイブ)に関連する話(地質学者と物理学者のアルヴァレズ親子が隕石衝突説で古生物学会に殴りこみをかける等)」と「6度目の大絶滅で(たぶんヒトと関わったせいで)滅んだ動物たちの話」と「現在進行中の絶滅危惧種の話」の章が入りまじって構成されているので、読んでいてすこし混乱するのだ。
構成にすこし難があるとはいえこの本のテーマは刺激的で、重要な問題提起をしていると思う。
ヒトが化石燃料を使用して大気中の二酸化炭素濃度が高まり地球温暖化をひきおこしたり、急激な環境改変が生態系の破壊などにつながっていることは一般的に認知されている問題だが、この本ではそういった周知の問題だけではなくて、もっと踏みこんで「ヒト」が世界に及ぼす影響について示唆している。
その点で圧巻なのは最終章の手前、ネアンデルタール人のDNA採取を試み現生人類との関係を研究している遺伝学者ペーボの話だろう。ペーボが探すのはネアンデルタール人にはなくて現生人類にあったもの、彼が「狂気のようなもの」と呼ぶ何か、おそらくは6度目の大絶滅を起こさせる原因でもあり、ヒトのヒトらしさの本質でもあるものだ。それは文中で示唆されているように「飽くなき好奇心を抱く」内容である。
上にあげたウィキペディアの大量絶滅の記事中にもあるが、現代が6度目の大絶滅の最中であるというのは大多数の生物学者の一致した見解だそうだ。
そしてこの本が示唆するように大量絶滅の原因がヒトにあるのかどうかは確定してはいないが、ヒトは温暖化や環境破壊をする一方で絶滅危惧種の保護活動をしたり保護区を作ったりもしているわけで、とても不思議な生物であることは確かだと私は思う。
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NYTの敏腕記者による生物の大量絶滅に関するレポート。
これまでの隕石や噴火、氷河期の到来で5度の大量絶滅があった。
そしていま「サンゴ類の1/3、淡水産貝類の1/3、サメやエイの1/3、哺乳類の1/4、爬虫類の1/5、鳥類の1/6、植物の1/2がこの世から姿を消そうとしている。恐竜時代には1000年に1種だった絶滅が、いま、毎年推定4万種のペースで人知れず進行しているのだ」。
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最初の数章が冗長に感じました。これは原著が描かれた当時に人新世、アントロポセンという概念がまだまだ一般に普及していなかったので世界中で現在かつ過去も含めて人間によって引き起こされた生物の絶滅を物語風に追い、本題(第5章以降)への誘いという体を取ったのではないかと思います。