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ベルクソンの哲学的立場と、それにもとづく科学の理解について解説している本です。
著者はまず、ベルクソンの哲学の概要を紹介し、存在論において「生命の哲学」であり、認識論において「直観の哲学」であると述べます。ベルクソン哲学における直観は、実在を内側から把握する方法であり、この方法によって実在は時間的な持続として理解されることになると説明されています。
これに対して自然科学は、固定化された対象を分析する立場だとみなされます。著者は、こうした自然科学の方法では、時間的な持続をとらえることはできず、ただそれが空間化されるかぎりにおいてとらえられるにすぎないと指摘します。そのうえで、数学や物理学、心理学、生理学、生物学といった、自然科学のさまざまな領域においてあつかわれる対象を、持続としての実在の立場からとらえなおし、自然科学的世界観の根底に存在する実在のありようを明らかにしています。
最後に著者は、あらためてベルクソンの哲学観について簡単に説明をおこない、自然科学の立場と哲学の立場はともに手をたずさえながら進んでいくことで、実在の世界についての探求がなされると主張しています。
ベルクソンの哲学的立場が、自然科学の立場とどのような関係にあるのかということを中心に説明がなされている解説書として、有益な内容だったように思います。