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崖っぷちの国民皆保険
2015/05/31 10:11
11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
堤氏による、アメリカ合衆国の医療制度にかかるレポートの続編です。今回も現地取材を基にした渾身のレポートとなっています。
前巻では、「オバマケア」は少数の大企業の利益のための制度であり、「中流消滅への最後のトドメ」となると喝破。「米国企業の次のターゲットは日本だ」と警鐘を鳴らし、締めくくっていました。本巻では、「日本の国民皆保険制度」を守るためにどうすれば良いかということに力点を置いたレポートとなっています。
「ずっと前から、アメリカは日本の国民皆保険制度については邪魔だ邪魔だと言い続けてきた(73ページ)」。そして、「いまの日本は、国民皆保険制度をはじめ、貴いものを守る代わりに、ないがしろにして、外国に安く売り飛ばすような、間違った方向に進んでいます(211ページ)」。つまり、素晴らしい制度である国民皆保険について、国民はあまりにも無知であることから、その隙につけこみ形骸化しようとする動きが顕著になっているとのことです。
「政府やマスコミが医師たちを積極的に仮想敵にし始めたら要注意です(130ページ)」。確かに、医療改革はアベノミクスの成長戦略の一つと位置づけられ、TPPに反対する医療業界は農協と同様に成長戦略の抵抗勢力(=国民の敵)だと政府等に喧伝されています。さらに政府は国家戦略特区で、国民皆保険制度を形骸化させ、日本全国に拡大させていく手法を取ろうとしているそうです(203ページ)。しかも、その利益は日本国民ではなく、米国企業が享受するという仕組みです。
小泉・竹中が一億総中流と言われた日本社会を根底からぶっ壊し、格差社会に移行させました。さらに安倍が仕上げようとしている新自由主義(=アベノミクス)は、オバマ戦略の延長線上にあり、富める者はますます富んでいき、中間層以下は脱落します。まさに今、集団的自衛権の議論を隠れ蓑としながら、その陰で安倍は何をしようとしているのか、我々は細心の注意を払う必要があります。
強欲資本主義は日本国民から何を奪おうとしているのかを知るために、本書は必読の書だと思いました。
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国民皆保険制度って、知ってる?よネ?
2019/01/04 15:03
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投稿者:野間丸男 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「国民皆保険制度」は、日本の誇れる制度である。
超高齢化社会になって、「高齢者の医療費の高騰で、保険制度が危ない!」は本当?
アメリカの“オバマケア”も日本の制度の真似なのか。
しかし、その制度には、いろいろ問題があるという。
さすが! 命の沙汰も金次第のアメリカだなぁ~!
それは、対岸の火事ではない。
日本も無知と無関心では、一握りの拝金主義者のマネーゲームの食い物にされる!
著者の提言が、現実になりつつある現状を憂い、関心を持たなくてわ!
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目から鱗
2016/03/01 10:27
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投稿者:earthbound - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の新薬承認スピードがヨーロッパ諸国と同程度
の本のように政府が薬価交渉権を持ってない、アメリカでは薬価は製薬会社の言い値で決まってします。
なんか恐ろしい文言が並んでいます。
我々はまたもや「お馬鹿なマスコミ」に踊らされているのでしょうか?
大変不安になります。
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迫り来る強欲資本主義の恐怖
2015/10/22 17:32
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投稿者:土塩 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の堤未果は『ルポ貧困大国アメリカ』などのアメリカレポートを発表してきた気鋭のジャーナリスト。
これまでの著者のルポは、経済・社会保障分野にかかわる大国アメリカの下層の人びとの苦悩を描き、なかなか報道されることのない陰の部分に光をあてたという点でわたしは深く感動させられたのであるが、本書ではこれまでの著作にない気概のようなものを感じさせられた。それは日本国民にとって優れた医療制度である国民皆保険制度を守りたいというものであるのだが、そうであるからこそ、本書が、日本とアメリカの医療分野の関係を新自由主義政策(著者は「強欲資本主義」と形容する)とのかかわりにおいて捉え、TPP協定を日本医療制度(=国民皆保険)の変質をもたらすものとして警鐘を鳴らすものとなっているのは、病によって帰らぬ人となった父君への鎮魂歌とも感じられるのである(この点、「あとがき」が興味深い)。
本書には、保健・治療に尽力する日米の様々な医師たちの証言がつづられている。それらの証言はときに保険会社を告発し、ときに製薬会社を告発する。そして、なによりも政治が告発の対象となる。また、熱心に患者に応対するそれらの医師は過酷な労働に疲弊している。それは医療の疲弊でもあるのだ。
公的保険制度のないアメリカでは、骨折しただけで自己破産することがある、とかつて聞いたことがある。公的保険制度を目指したオバマケアの導入を好意的にわたしは受け止めていたが、それがとんでもない制度であることを本書は告発する。
そして、迫り来るTPP。本書は外資の導入によって医療のアメリカ化がより進行し、公的保険制度が崩されかねないことを警告する。
報道されつつあるTPP協定の内容からみると、日本が薬価を安く抑えようとするとアメリカ製薬会社によって日本政府が損害賠償を請求されることにもなりかねないし、これによって健康保険にかかる国・自治体の予算は膨大なものにもなりかねないだろう。著者の洞察は怖いまでに的中している、と思わずにはいられない。
最後に著者は取材した日本人医師たちが指し示す医療のあるべき道を、日本医療への希望として提示するが、先進的な医療制度を持つキューバ共和国を学ぶべきものとして引き合いに出しつつ、投資の自由化を前提としたアメリカとの国交回復によってその医療制度が崩されないかと心配する。著者の目線は、日本国民に注がれるそれと同様に、他国に対しても弱者への優しい眼差しとして注がれるのである。
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長寿と介護、日本が世界で最初に経験する人類未知のこの領域で、どちらの道を進むのか。一つは国民のいのちと健康を守り抜く「国民皆保険制度」を持つ国として。もう一つはかつてないスケールで高齢者ビジネスの投資のチャンスをもたらしてくれる国として。…。
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アメリカのほんの一部になっている金持ちが、いかにしてその富の独占を強めようとしているかについての第二弾。今回は医療について書かれています。オバマケアに始まる皆保険制度、日本のものとの違いとその問題点。そして日本にもまたその爪先が迫ってきているということを、臨場感あふれる書き方で、具体的な話も踏まえて分かりやすく書かれています。このままいくと、知識のない私たちは、知識のある人間たちの良いように制度を利用され、変えられてしまう。そうならないために、行動を呼びかけるところなど迫るものを感じました。
本書の内容を鵜呑みにするのではなく、まず医療について学ぶところから始めるように気づかせていただいた点は良かったと思います。
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高額医療費制度を利用しての入院中に読了。
日本の将来に悲観的な側面はありつつも
希望もまだ多く残されていると感じた。
私が生まれた年に制定された国民皆保険制度は死守するべき大切な制度だと改めて認識した。
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前著に続き、気鋭のアメリカウォッチャーがオバマケアの裏面を告発し、さらに「強欲資本主義」が日本を襲うと、警告する。我が国の、世界に冠たる『国民皆保険』が、その存立を危うくするのだと。
「無知は弱さになる。」その言葉をかみしめながら、日本の、そしてわれわれ一人ひとりの対応を、過たることなきよう眼を据えよう。
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アメリカは先進国だよね?と疑いたくなるような
事例が続々...日本に生まれて良かったと孫子の代まで
言えるようにこの医療皆保険制度を守り抜かねば。アメリカで起こった事は以前は10年後には日本で起こると言われていたけれど今じゃサイクルがもっと早くなっているからここが踏ん張り時なのかも知れない。
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米国では、医療・介護の民営化が進み、莫大な投資マネーが流入し、たくさんのサービスが生まれています。一方、低所得者向けの医療・介護サービスの質の低下は深刻な問題です。
高齢化が進む日本も人ごとではなく、質の高い医療や介護の公的サービスを守るためには、手遅れにならないうちに対策をとる必要があります。
詳細なレビューはこちらです↓
http://maemuki-blog.com/?p=6319
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〈気をつけて下さい。どんなに素晴らしいものを持っていても、その価値に気づかなければ隙を作ることになる。そしてそれを狙っている連中がいたら、簡単にかすめとられてしまう。この国でたくさんの者が、大切なものを。当たり前の暮らしを、合法的に奪われてしまったように〉(p.33)
国とマスコミに「日本の医療費は高すぎる」と繰り返し言われ続ける私たち。その最大の支出である医薬製品と医薬機器の輸入超過、そしてその政治的背景を知ることは、今後日本の医療を守るために、不可欠となるだろう。(p.48)
イラク戦争の時に米軍リクルーターが使ったのと同じ手法だ。学費が出る、医療保険に入れる、などと、甘い言葉を並べて高校生を勧誘する軍のリクルーターたち。だがふたを開けてみると、彼ら自身も数年前に同じように騙されて入隊し、前線に行かされることを回避するため、毎月17人の新兵勧誘というノルマ達成に必死になっている。
餌をぶら下げた競争原理を導入し、社会的弱者に、本来同じ立場にいるはずの別な弱者を襲わせる、あのシステムだ。(pp.107-8)
私たちから集めたお金を国が何に使うかに無関心な国民ほど、政府によっては都合がいい。特に、10億円以上政府広告費が費やされる一方で、社会保障費は削減され、医療や介護の自己負担が次々にあげられている今、私たちが黙っていれば、今後ますます政府にやりたい放題をさせてしまう。(p.126)
ニューフェル医師「少数の患者を直接支払いで診るようになってから、患者との距離は前よりずっと近づきました。保険会社に許可をとらなくてもいいので、彼らは何かわからないことがあればいつでも私にメールで質問できる。病気が治っても、子どもを連れて診療所に遊びに来たり、時間があるときはお茶を飲んで雑談する余裕もできます。前だったらそんな非効率なことは論外でした」(p.142)
「小手先のお金と捏造された情報でつぶしても、そのたびに私たちの怒りは大きくなって、広がってゆく。住民運動とは、オセロゲームのように、国民の意識を白から黒へとひっくり返してゆくものなのです。私たちの最大の弱点は無知だったこと。でも一度知識を得たら、目に映る世界はそこから大きく変わるんです。だからこれからも信じて、運動を続けます。いのちを商品にする社会を、子どもたちに残したくないですから。国民の意識を変えてゆくことが、地道で回り道に思えても、結局最後には結果を出すと思うからです」(p.157)
「高齢化を医療技術でなんとかできる、という時代はすでに終わっています。認知症をはじめ、今後も治せない病気がどんどん出てきていますから。医療技術の専門家である医師には、残念ながら、超高齢社会の実像は見えていない。佐久市をみてください。高齢化が急速に進む地方では、特殊な高度医療よりも『すきな人とすてきな所でくらしつづけること、この願いを支える医療としくみ』が大切なのです」(p.181)
「それになぜ私たち医師がこんなに過剰に忙しいか、その理由をほんの少しでも患者さんが知ってくれたら、三分診療の原因が医師ではなく別のところにあることを理解してくれたら、お互いに敵同士���ならず、ともに良い医療を考えられると思うのです」(p.193)
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おおげさな、またかよ、と思っていたが、そんなことない。読んでてぜんぜん笑えなくなってくる。とんでもないことになってんなと。
衝撃的、こりゃ映画になるべ。
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国民会保険制度は社会保障である
アメリカはこの仕組みをこわそうとしている
健康保険制度はかなり複雑である
時間をかけて勉強しなければ理解できない
一部の有識者により国民に知らされぬままこの制度が蝕まれつつある
民間医療保険・薬の自由価格
かわった後に元に戻すことは困難だ
著者の主張は大げさかもしれない
医療にはお金かかかること
知るきっかけになる
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基本的には堤さんの一連の主張を繰り返した本。
これはもう資本主義の終焉だね。自分を含め無知、無関心の結果、この日本でも抜き差しなら無い所までもう来ている。新安保法案の時に一時的に、その成立を阻止しようと市民レベルでも盛り上がったが、日本の皆保険制度は何としても守らねばならない。
もう、アメリカの強欲資本主義の餌食になってはいけないだろう。処方箋は、堤さんの物だけでなく色々あるような気もする。何れにしても、無知、無関心が一番ダメ。
幸い選挙権も18歳に引き下げられる。アメリカでリーマンショック後一人で、保険会社の前でビラ配りする若者姿が本書でも紹介されているが、こうしたことから粘り強く始めなければいけない。
それにしても、マスコミの怠慢は許せない。もっと分かりやすく伝える義務がある。
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やはり、やはり。医療の公平性が怪しくなってきた日本。アメリカばかりでなく、ヨーロッパの成熟した諸制度をもう一度学ぶべきかな、と思う。