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中学生感覚が生々しくよみがえる
2018/05/12 06:26
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『オーダーメイド殺人クラブ』の語り手は中2女子・小林アン。バスケ部で、クラスの「派手組」の方に属しているけれど、死や猟奇的なものに惹かれることは誰にも言えない秘密。アンは、わがままでクラス内のヒエラルキーの上位に居る芹香と倖とは部活が一緒で仲がいいはずがちょっとしたことで「外され」てしまうという中学生に典型的な不安定な人間関係に悩み、赤毛のアンが好きで「イケてない」母親に苛立ち、何か特別な【事件】を起こすことで特別になりたいと考えます。そして、学校外で遭遇したきっかけとなる些細な事件からクラスメートである徳川勝利に、彼女の希望に沿って殺してくれるように頼み、二人でその計画を練るという物語です。
アンの方の心情はまだ分からないでもないのですが、徳川君の「私を殺して」と言われて「いいよ」と答えるのはちょっと。。。もちろん彼が承諾しなければ話が始まらないのは分かりますけど、「君、かなり変だよ」と突っ込まずにはいられませんね。
アンの思考やクラスや部活などでの出来事の描写は、生き生きと生々しく、そのあまりの臨場感にすっかり埃をかぶって記憶の引き出しの奥深くに忘れ去られていたような中学生時代の感覚が急に取り出されて目の前に突き出されたようで、その埃っぽさに思わずくしゃみをしそうになるような、何とも言えない苦々しい思春期の青臭さのイタさを感じました(笑)
この作品を主人公と同じ中2の時に読んだらどうだったでしょうか。たぶん途中までは「そうそう」とものすごく共感して(猟奇的なものに惹かれるという趣味は別として)、つまんないリストカットなんかじゃなくて、もっと別のことをしようと思ったかもしれませんが、それだけに結末には納得しなかったのではないかと考えられます。小説の中では数ベージで3年以上も経過してしまっても、現実の「今」を生きる身にとってはそれは真似できない時間の経過と成長ですので、やはりこの作品はせめて高校生になってから中学時代を思い出として振り返るようになってからじゃないと納得できるお話ではないのではないでしょうか。
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張りつめた空気
2017/10/17 05:26
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生特有のコンプレックスやピアープレッシャーがリアルに描かれています。死に惹きつけられる少女の心も伝わってきました。
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中学2年生のアンは、友人たちから唐突に無視されるようになった。
それは、想像していたよりもずっと辛くて苦しい日々。
自意識過剰な自分、中二病だと自覚している。
それでも、自分は人とは違うのだと証明したい。この日々からも解放されたい。そんな誰にも打ち明けられずにいた思いを、カースト下位の徳川にだけは打ち明けられた。
だから彼女は、彼に依頼した。
彼女を彼女の望む形で殺して欲しい、と。
身に覚えのある閉塞感が、徐々にアンと徳川への感情移入を促す。
またお気に入りの作品が増えました。
表紙は単行本の方が好きだったから、そこが残念でならない。
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単行本の時から何度も図書館で借りて読んだ本。
やっと文庫本になったのですぐに購入。
何度読んでもいいです。
内容的には好き嫌いは別れるかもしれないけど、中学生のヒエラルキーとか、ほんとにまざまざと見せられるものがあります。
親への反抗とかくだらない女子同士のはぶりあいとか、多くの人に経験があると思います。
どうしても妥協できずに尖っていたのに、大人になると自然と妥協を覚える。どうしてそういうことができるかと考えると、私たちはどこかで挫折を味わい「余生を生き」ているから、なのだろう。
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前半は主人公の悲劇のヒロインっぷり、厨二っぷりにうんざりして、中盤は子供の残酷さ学校カーストの不条理さに嫌悪感を持って読んでたのに最後はいつも通りあー!辻村先生の本好き!大好き!ってなった。
辻村先生の書く学校とか田舎とか何かしらの組織カーストは現実より誇張してる(と思いたい)けど可能性は0ではない所が胸にきてツライ
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中二病同士の初恋はかくも面倒くさい、とは大槻さん名言です!
自己意識が過剰で、傲慢だけど小心者で、本当の自分をわかってもらいたいけど、自分のことをさらけ出すことはできない。
相手のことを内心では、ばっかみたい、と思いながら、その相手と上手くやっていくことの方が大事。
ああ、私が中学に通っていた頃となにも変わらない。
あの当時はあんなに思いつめていたのに、今ではもう微かな記憶しか残っていないのが本当に不思議だ。
だから、面倒くさいのだろうなと思う。
でも、その時はそれが世界のすべてで決して間違ってはいけないと思っていたのも事実だ。
若いとはそういうことで、年齢を重ねるとは、こういうことなのだろう。
あんな風に男の子と関われるのは特権なのだなと感じる。
うーん、年をとるわけだ(笑)
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久々に、読みたいけど、終わるのが勿体無い!と、思った作品でした。
若くて、綺麗で切なくて儚い。そして、もどかしい。
私にも少女Aとまでならなくても、こんなにイタイことに憧れた時代があったのを思い出し、重ねたりしました。
そして、何より結末が気になって気になって…。きっと現実的に考えれば…でも、それを裏切って欲しい…なんて思いながら読んでました。
結局はこれが現実かな…と思ったり。でも、もう少しこの先の2人を見ていたかったなとさえ思うほどの愛着がわいてしまいました。
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正直結末は読めていた。
これまで辻村作品を読んでいた人ならなんとなくわかったと思う。
でも、それをどうやって結末まで持っていくか、たどり着くやり方は?という見方で読んだ。
つまり、この『事件』は結局起こらないとわかってても、どうやって(どういう心理で)起こさない方向にもってくのか?は、当たり前だけどわかるはずもなく、だから面白かった。
辻村さんは、スクールカーストを描くのがうまい。
どんな学校でも、そのひどさの大小は違えども、必ず存在すると思うスクールカースト。
誰でも経験があるからこそ、その描写が(そのときの状況だけでなく、心理描写も)リアルに見えてくるからより恐ろしい。
あと思春期の親やまわりの大人への心情の描き方もうまい。
ラストが見えてる分、読みながら自分でもラスト考えてみるんだけど、自分が想像したラストよりはるかによくて、やはり辻村作品はいいなーと思った。
得意の他の辻村作品とのシンクロもほんのちょっとだけどあって、そういうのわかると更に楽しめる。
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アンの中学二年生の時期を、クラスメイト達と上手く行ったり行かなかったり、ある意味波乱万丈?な時期を見せてもらった。私の中二時代とは全然違う彼女のその時期に共感できる部分は少なかったけれど、そんな少女達もきっと居たんだろうなと思える。その時期を通り過ぎてきた女子も男子も今はどうしているのだろう。
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湊かなえ告白並みの衝撃で読み進めた。
なるほどこう終わるのかーーー!
ちょっとの涙と暖かい感じ。
解説の大槻ケンヂじゃないけど、
「辻村節、来ターッ」てもんですよ!
こういう辻村作品の中すきだなあ、
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やっと読み終わった。流石にこの作家、こういう話を描いてはこちらが辟易するほど手練れの展開なのだけど、何とも面倒くさいお話ね。
実際の女子中学生が、この本のように、仲間ハズレにしたとかされたとか、クラスのヒエラルキーの中での自分の序列はどうだとかを気にしながら生きているのだとしたら、それはそれは大変だ。
私らの頃とて、頭のいい子は一緒のグループで、ブスの子はやはりそれらだけで固まるってことはあったし、それはそれで序列はついていたのかも知れないけど、まあ、それぞれがそれぞれに相応しい身の置き場だったという感じだったわな。
自分が他の誰とも違うということを自覚したいし認めさせたいという芽生えがある年頃だと思うけど、それを死をもって体現しようとする主人公のイタいことイタいこと。
貸スタジオに写真を撮りに行って、首を絞められて喘ぎながら写真を撮られる場面だけ、そこはエロくて良かったな。
『若さは恥の記憶の連続で…』とは言い得たものだけど、おじさんには世代と性差を感じる作品。
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どうせなら行き着くところまで行ってしまえという気持ちになるのは、多分自分が”中二病”を引き摺っているからなのだろうなあ、と思いました。
せめて古傷を抉られるような感覚で読めないことに、ちょっと危機感を抱きます。
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最後のえっちゃんの告白で、評価が☆☆☆から☆☆☆☆に上がった。
私の頃にもそうだったのかもしれないけど、今の中学生は本当に生きるのが大変そう。
無視されて、外されて。でもいじめにまでは発展しなかったと言っていいのか。
友達同士の付き合い、先生・家族との付き合い。
色々な人がいて、色々な家庭・人生があるのだと少しずつ分かっていく成長期。
苦しみを乗り越えた先にある、まっただ中にいるときには気づかなかった世界。
そこまで描くことで、著者は生きる希望を伝えたかったのか。
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クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、ささいなことで激変する友達との関係に悩んでいる。家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末は--。少年少女の痛切な心理を直木賞作家が丹念に描く、青春小説。
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読後の清涼感がさすが辻村深月。
中高生のヒエラルキー
見事に描いていると思います。
こんなくだらないことに振り回されるのが中高生。大変だなぁ。
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大槻ケンヂの解説の、『おかしくて、バカみたいで、それから愛しくて、懐かしくて、つまり美しい』ってのを読んで、こいつ私の心読んだのかって思った。全く同じ感想であった。はちきれんばかりの自意識がするどくキラキラ輝いてるよう。あああ辻村深月の書く少年少女は何故こんなに自意識過剰で可愛いんだ。