古井由吉の作品にハズレは少ない
2018/09/13 18:56
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投稿者:まなしお - この投稿者のレビュー一覧を見る
八篇が収められた連作短編集である。相変わらず濃密な文体で、ちょっと気をそらせば物語の筋道がわからなくなる。全編に雨が降る場面が出てくる。また、時折戦中や戦後すぐの時代の回想が出てくる。古井由吉の作品にハズレは少ない。時間があるときにじっくり読みたい作品だ。
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久しく触れていなかった、上質な文学。スマホもネットも登場しないどころか、穏やかで落ち着きのある文章にはカタカナも少ない。
安易な言葉と早いテンポの刺激的なストーリーが氾濫する今日、ときにはこういう大御所の作品に触れてバランスを取ることも大事だと気づかされた。
8話の短編は、どれも死が身近にある。現実と幻想とが入り交じり、時間も空間も行き来して、ときには怪談のような異世界に紛れ込んだよう。なのに、地に足が着いていて、味わい深い随筆のようにも思えるから不思議だ。
学生時代、芥川賞受賞作の「杳子」を読んで心が揺さぶられたことを思い出す。精神を病んだ女性を描いた作品を理解した自分が、少し大人になったような気がして、ちょっとうれしかったものだった。
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躁がしい徒然
死者の眠りに
踏切り
春の坂道
夜明けの枕
雨の裾
虫の音寒き
冬至まで
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「雨の裾」(古井由吉)を読んだ。私には『凄い!』としか言いようがないくらいに凄い。
とりわけ「夜明けの枕」「雨の裾」は『凄い!』
あまりに深くこれらに思いを巡らせすぎていたため、あっ!と気がついたら家の前を通り過ぎたまま運転していた。(実話)
と、そのくらい魂を揺さぶられている。
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装丁家、菊池信義を撮ったドキュメンタリー映画「つつんで、ひらいて」で、この本の装丁が出来上がるプロセスが丁寧に映し出されていました。
「この本をもう一度手に取って、触りながら、読み返したい。」そんな感じを持ちながら、作家と作品の「幸福」に思い致す体験でした。
映画の感想はブログに書きました。お読みいただければ嬉しい。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202001230001/