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紙の本
池田晶子さんが伝えかったこと−追悼・池田晶子
2007/03/27 23:58
25人中、24人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人生の、おそらく中間地点も過ぎた年令になっても、生きるってどういうことかわからないでいる。幸福って何か、実感できない。だから、何度か池田晶子さんの著作に挑戦するのだが、そのつど挫折、つまり読みきることができなかった。難しいのである。大変よく売れた(実際に読まれたかどうかは知らないが)という『14歳からの哲学』も数十ページで前に進めなくなった。だから、自信をもっていうわけではないが、14歳の君が池田さんの著作を読めないからといって嘆くことはない。52歳のおじさんも読めなかったのだから。ただわかってほしいのは、生きるってことはそれくらい難しいということだ。
そして、『14歳からの哲学』よりは「もう少し柔らかく、ある意味で読みやすく、エッセイふうに」書かれたこの本はなんとか最後のページまで読みきった。でも、それでもなんとかだ。「友愛」とか「道徳」とか「人生」といった16の単元で書かれた内容は、いくら読みやすく書かれていても難しいものだ。難解だ。それでも読みきろうと思ったのは、池田さんが突然亡くなったからだ。今年(2007年)の2月。46歳だった。先に書いた著作をはじめ、池田さんは彗星のごとく現われ、一躍人気文筆家になっていた。ある意味絶頂期の、突然の訃報だった。池田さんの著作に何度も挑戦し、そのたびに途中で投げ出していた一読者として、なんとか一冊でも読んでしまいたい。そういう思いで本を読むっていうのは不純な動機かしら。
そんなことはない。どういう気持ちであれ、一冊の本を読みおえることは大切なことだ。想像してほしい。もし、君が14歳だとしたら、池田さんは君のお母さんぐらいの年令の人だ。そんな人がどのような気持ちで亡くなったか、その人が生きている時、どのようなことを書いていたのか知りたいと思わないか。「なんだかんだといっても死んじゃったら終わりだよ」って思っていないか。そうかもしれない。死んだら生きていないのだから。でも、池田さんだってそう書いている。「いいかい、生きている者は必ず死ぬ。それは絶対的なことだ」(182頁)
これはある意味すごい文章だ。池田さんが自身の死についてどこまで自覚があったのか知らない。しかし、「不思議を知り、それについて考えるなんて、これ以上の面白さが人間の人生にあるものだろうか」(186頁)と続く文章は池田晶子という人間の、高らかな勝利宣言みたいなものだ。生きていくことは難しい。きっと池田さんが書いてきた多くの著作よりも、本当は比較できないくらい難しいものだ。でも、きっと生きていくということはその難しさ以上に素晴らしいものがあるはずだ。簡単にいってしまえば、そんなことを池田晶子さんは伝えたかったのではないだろうか。だからこそ、この本は池田晶子さんが若い人に読んでもらいたいと強く願った、一冊に違いない。
紙の本
人間は考える葦である
2008/06/03 22:41
18人中、18人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:遊民 - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学2年のときに登校拒否をした僕は、高校進学後も勉強することに意味を見いだせず、アルバイトと旅を繰り返していた。自分はどういう人生を歩んでいくのか、何が自分に向いている職業なのか、そんなことをずっと考えてきたが、社会からドロップアウトして旅を続けながらたどり着いた“答え”が、この本の中にはたくさん詰まっている。
「君は、授業で教わったことについて、自分で考えたことがありますか。文法や年号を覚えて、試験でいい点をとることなんか、その意味では簡単だ。自分で考える必要がないからだ。だから、自分で考えずに覚えただけのことなんか、試験が終われば忘れちゃうんだ。……自分の頭を使って自分でしっかり考えたことというのは、決して忘れることがない。その人の血となり肉となり、本当の知識となって、その人のものになるんだ。人間が賢くなるということは、こういうことだ」
歴史の出来事を覚えるだけではなく、想像して自分で考えること。どこまでも考えていくと答えはない、と著者は説く。そう言われてみると、僕は覚えるだけ(そう思っていた)の歴史や、読解問題の答えが決まっている(受け止め方は人それぞれと思っていた)国語は大嫌いだった。得意だったのは数学や理科の考える教科だったが、歴史も同じように考えればよかったのかと、今ごろになって後悔している。
勉強に疑問を感じたころ、子どもが「なぜ?」という質問をたくさん投げかけるのは好奇心があるからという文章を読んだ。自分の好きな色が青なら、それはなぜなのか? 青い色は海をイメージさせて、ゆったりとした気持ちになるから? なぜゆったりすると落ちつくのか? もしかしたら……。すべてのことに「なぜ?」と問い続けていくひとり遊びをずいぶん楽しんでいた。
好きなことがあれば、もちろん嫌いなこともあった。どうしても友だちになれない人もいた。
「人を好きになるようにしようといっても、嫌いな人は、どうしても好きになれない。君がそう感じる人がいるのと全く同じように、君にそれを感じる人もいるというだけのことだ」
好き嫌いがあるのはしかたない、と著者は言う。嫌いなものを自分で認めて、それにこだわらないこと。嫌いなものがそこに存在することを認めること。好き嫌いを超えて、受け容れることが「愛」だという。
僕は「物事は肯定することから始まる」と考えるようにしている。最初に否定してしまったら、すれ違ったままでお互いのことは理解できない。フランスの哲学者パスカルの言葉に「人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかしそれは考える葦である」というものがある。「考えること」と「認めること」、それが自分の人生を豊かにするということを、僕は大人になってから気づいた。
著者は別の本の中で、14歳のころに人間は言語と論理を獲得して「人として生まれる」と書いている。登校拒否をした14歳のときにこの本を手にしていたら、どういう人生を過ごすことになっただろうか−−。
紙の本
14歳と大人達
2007/01/03 21:23
10人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:jis - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨今のいじめ問題から始まり、教育の腐敗・深刻さを考えるに子供達の混沌とした世界を想像する。大人の反映とはいえ、子供達が見据える未来無く、信じる物さえ見つからない今、何をどう考え、どう生きるかをこの書は指南する。
著者の解りやすい語り口にだまされてはいけない。「14歳の君へ」というタイトルになっているが、24歳、34歳ひょっとすると44歳でも通用するような高度な内容だ。中高年が読んでもなるほどと感心する。
耳に痛いことが数多く出てくる。14歳という人生これからの若者に向けての物語ではあるが、一つ一つのテーマは、なかなか一筋縄ではいかない。「友愛」から始まって「人生」に終わる16の言葉が持つ途方もない世界を、簡潔に要を得た文章の中に著者の思考が横溢する。
「人間は考える葦である」の通り、考える動物である人間の特質を大いに発揮し、幸福の追求の方法は如何なるものか、世間とは、人生とは、自然とは、他者との関係とは、等々、忙しい大人が忘れていた基本的な思考を、教えてくれる。
人間というのは、有限であると同時に無限であり、この世に存在しているその事自体がかけがえのない事であり、凄いことである事を自然と感得させてくれる。考えることは、己の存在を内から思念する事であり、有限な人生を幸福に生き抜くに必要な大切な恵みである。
あとがきで、前書が各地の学校の副読本として採用されていると書かれている。この本は先ずは親や大人達が読み、子供達に読み聞かせるか、親子が話し合う絶好の参考書として使うべきである。大人と子供が共に読み、考える事の出来る良質の本は今時めずらしい。
紙の本
『14歳からの哲学』よりはもう少し柔かくエッセイ風に書いてあります
2011/10/08 11:58
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生のムスメが図書館で予約していた本を取りに行った。
山田悠介さんの『スイッチを押すとき』だ。
「だれのオススメ?」と聞くと、愛読雑誌「セブンティーン」で映画『スイッチを押すとき』に出演している女優さんの記事を読んで面白そうだったからと言う。そんな本のアプローチもいいなぁ。図書館で本を受け取りながら、ムスメの図書カードを預かっているから、ムスメになにかもう一冊と一緒に借りてきたのが、池田晶子さんのこの一冊なのです。
毎度のことながら池田さんの本には、いつも目からうろこ状態!
読んだ直後には誰かに話をしたくてたまらなくなる。今回もムスメのために借りてきたものの、まずは読んでみようかと思って、熟読した。(^-^)(^-^)
まずはあとがきから読んでみる。「保護者ならびに先生方へ」とあったからだ。(*^_^*)
『14歳からの哲学』よりはもう少し柔かくエッセイ風に書いてみました、と書いてあって、少しほっ。実はムスメにその本を誕生日に贈ったのだが、読んでもさっぱり分からなかったとつい最近聞いたばかりだったからだ。
「受験の役には立ちませんが、人生の役には必ず立ちます。皆様への信頼とともに。」あとがきの最後はこう締めくくられており、あらためて、そうそう!必ず人生の役には立つよと思う。そうして、池田さんに信頼されていると思うと、なぜか身が引き締まる思いを感じたりして…。
まずは目次をご紹介しましょう。
はじめに 14歳の君へ
ほんとうの自分 ほんとうの友達
考えれば知ることができる
君は「誰」なのだろう?
どう考え どう生きるか
ほんと、柔かくエッセイ風に書かれている。
心に響いたり、真実に心底驚いたり、読む人によってストンと心に落ちる箇所はさまざまだろう。今回、わたしが響いたのは次の言葉だった。
「本当の人生とは、人は必ず死ぬという事実をしっかりと受け止めて、しっかりと生きていく人生だ。」
「どういうわけか生まれてきて、せっかく生きているのだから、この面白さを、めいっぱい楽しんでみたいと思わないか。大変だけれども、やり甲斐のあることだ。」
池田晶子さんの死後も彼女の著書は出版される。
求められてるのだなぁと、つくづく思うのです。
そうして、14歳のみならず、多くの人に読んで欲しいと思う。読んだ瞬間、ページをめくるたびに人生が変わります。きっと。
紙の本
生き方って考えると難しいけど、大事なことだ
2019/08/23 21:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生の息子に買いました。親子で一緒に考えてみませんか。世代を超えて読み継がれるロングセラー。手元にそっと置いて頂きたい。エッセイ風で読みやすい1冊です。自分で考えることの魅力をどこまでも丁寧に繰り返し教えてくれる。池田晶子さんの本はいいよーって聞いてたけど、すんごくいい。池田晶子さんの文章は、身近な、生活に根ざした言葉で書かれていて、読みやすいのでオススメです。人生は苦しい?幸福に生きるとは?善く考え、善く生きるとは?ヨシタケシンスケさんのイラストがカバー(全オビ)になったバージョンも登場。「人は弱っているときや元気がありすぎる時、誰かの断言が必要で、そんなとき、池田さんの言葉はグリグリくるのです。」とヨシタケシンスケさんもおっしゃっています。