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帰国して食べたいもののひとつが寿司、鮨、鮓・・・という潜在意識があったからか、どこかの書評でみかけてメモっておいて、つい、図書館で借りてきてしまった。
東南アジアを発祥に中国経由で伝わった「すし」が辿った歴史を紹介。起源のホンナレ(フナずしの類)は、発酵したご飯は味付けのため、食べるときには捨ててしまったとか、千年以上の歴史があり、「すし」と言えば”握り”なんてことになったのは僅か200年でしかないなんて、知ってるようで知らない話が盛りだくさん。
「すし」の変化は、少しでも早く、効率よく食べたいという庶民の欲求によるところが大きかったなんて、Fastfoodが上陸してくる以前に日本でその思想が働いていたなんて面白い。
江戸前寿司、握りが全国に広がったのは、関東大震災や東京空襲が要因だったとか(職人が地方へ移動した)。さらに、大戦後、「飲食営業緊急措置令」なる営業制限が、すし屋の全国展開を後押ししたというのは、ちょっとした豆知識。闇市などの取り締まりのための措置令で、営業ができなくなった、てんぷら屋、ウナギ屋、中華屋、洋食屋。ところが、すし屋は、「米を持って来たら”すし”に加工します」と委託加工ですと東京すし組合が国に掛け合ったというから、きっとなにか強烈なコネがあったのだろう(そのあたりは触れられていない)。こうして委託加工品であるという許認可を得た加工する「すし」、つまり”握りすし”を提供する形態を地方も真似たことで全国区の食べ物になっていったというのは、ちょっと眉唾でもしたくなるような面白い話だ。
その後の展開は、高度経済成長期の社用族によるすし屋の利用や、京樽のセントラルキッチン制、小僧寿しのフランチャイズの導入、そして回転すしの発明と、「すし」そのものの話でなく営業形態の話となっていく。
最後に、世界の「すし」や、未来の「すし」に思いを馳せて締め括るが、ロシアで出てくる”揚げ寿司”、HOTすしに言及がないのが残念。ロシアではHOTすしにトンカツソースとマヨネーズで食べるなど、かなりすしの未来形の最先端を行ってるのではないかと思う。
マグロ、大トロが「すし」の真髄なんて言ってる現在も、長い歴史のほんの瞬間でしかないと、変に通ぶるなと戒めている点はよいね。
非常に簡易に書かれてサクっと読みやすい本だった。漢字にたくさんルビがふってあるなと思ったら、金の星社の本でした。小学生向けの本だったのかな?(汗) でも、楽しい本でした。
さぁ、早く、美味しい「すし」を食べにいくぞ!(まだ帰国後、ちゃんと食べに行ってない)。