紙の本
特攻−戦争と日本人(中公新書)
2015/10/17 23:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ねこすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
中公新書らしい、硬派な内容だった。帯に書かれているように、特攻が美学か外道かは評価が分かれるとは思う。純粋な思いで特攻に向かった者もいれば、断ることのできない雰囲気の中で、嫌々ながら行った者もいる。だから、過度に特攻を美化するようなことも、全ての兵が強制されたと断ずることも慎むことなのだと思う。ただ、指揮官の中でも、特攻を統率の外道と評した者がいたことには少し安心した。豊富な資料に基づいて、実証的に記されていくところは、中公新書の強みだと思う。
作戦初期こそ、特攻が有効に機能していたがため、対策が取られたあとでも同じことを繰り返してしまったのだろう。このあたりでも、本来合理的な集団であるべき軍隊組織が組織としての体をなしていなかったと感じた。
また、実行する側の人間と命令する側の人間との意識の違いのくだりは興味深い。命令する側は即効に向かっていった人間は皆自らの望んだと言い、命令される側は恨みを述べる手記を残していたりする。読書全般に言えることだが、書いた人間の置かれた立場を考慮することは、物事の実態を知るのに有効だと思う。
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死を見つめる
2016/06/28 18:53
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投稿者:ニッキー - この投稿者のレビュー一覧を見る
特攻とは何か。青春を特攻で散らす戦争。戦後世代からは、事実は知識として分かっても、その新城にはなかなか理解がおよばない。その理解への文章による追体験へ誘ってくれるのが本書であろう。
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一方的な見方を一方的な見方で修正しようとした感じで少々残念。この手の本はどんなに周到にしているつもりでも著者の思い入れがどうしても表出するもの、その意味でもったいないと思う。
それにしても特攻を巡る疎外態のおぞましさはまさに戦慄モノ。まだ100年も経たない紛れもない事実が自分の生活する国の歴史に存在することをやっぱり強く意識しないと。例えば北方面がどうとか言って優越感を煽ってる場合じゃない、似たようなもんだったんだと思うんですがね、当方は。
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特攻。
世界戦史の中で日本だけが実行した十死零生の自爆攻撃。
特攻が実行される前、その下地、特攻が許容される日本人の潜在意識、という歴史的且つ精神的な背景。
そして特攻が実行されるに至った経緯、発案者、実施者、命令する側から見た特攻、命令される側である一般兵士の特攻。
視点によって全く違う特攻が其処にある。戦後、生き残った命令者は特攻は自発的なものであったと言い張り、生き残った特攻隊員は自分の意志すら確認されない命令であったと言う。もちろん自発的な特攻もあったのだろうし、有無をいわさず特攻部隊に異動になる事もあったのだろう。
一括りで全体を説明することはとても難しい。大正時代から昭和初期に男子として生まれたが故に特攻せざるを得なかった多くの若者たち。
重く深く考えさせられる話でした。
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特攻しなかった人たちの本を2冊続けて読んだあとだっただけに本書は少しパンチが弱かった。しかし、本書は特攻は志願か強制かや、特攻の成果はどれほどであったか等、調査や生存者のインタビューに基づき、航空隊だけでなく、その後の桜花、回天、大和、震洋までバランスよい記述をしている。これでは、特攻を美化する人たちも反論できまい。また、特攻を最初に命令したという大西瀧次郎についても大西自身がそれを「外道」であると認識していたこと、最後は自分も特攻したことを挙げ、口だけ「おれもあとに続く」といいながら戦後もしぶとく生き残った将校たちへの批判を忘れない。
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特攻の歴史を概観できる新書。特攻が「組織的行動」になる前から、その雄姿を讃える土壌があったこと(楠木正成、肉弾三勇士…)をはじめに指摘。そこからどう「特別攻撃隊」として編成していったかが語られる。止む無く始めた特攻も、「敷島隊」の戦果から積極的に採用されていくが、米軍の対抗策から次第に戦果も上がらなくなっていき、末期には特攻じたいが自己目的化していく。
本書が珍しいのは、短いながら「特攻」の戦後史が書かれている点だ。かつて神と崇められたが、戦後には犬死と評価され、「特攻くずれ」という差別語も生まれる。また『戦艦大和ノ最期』も当初(1950年代前半)は戦争賛美として批判されたという。戦前戦後の断絶・ねじれ。
あと時々説明として入るトリビアルな解説は、それら知識に疎いので勉強になった。>特攻は二階級特進、攻撃機と戦闘機の違い、部隊名の付け方( 「三四一空 」は 、三 =戦闘機部隊で 、四 =呉鎮守府所属の 、一 =常設部隊)