紙の本
広がる幻想の世界
2016/03/23 12:35
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
エイモス・チュツオーラはナイジェリア出身の作家だ。幻想的な味わいの作品が多い。「やし酒のみ」では翻訳がぎこちないところが気になったが、本書では流れるような訳文でイメージが入り込んでくる。
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『やし酒飲み』で知られるアフリカの作家、チュツオーラの長編小説。
子供が出来ない妻のため、妊娠する薬を貰うべく旅立った主人公が道中で迎える様々な危機……という、寓話的な成り立ち。途中で立ちはだかる敵(?)の造形もユニークで、『やし酒飲み』に比べるとエンタテイメント性が高い仕上がりになっている。但し道中記とも言える冒険小説パートは、純粋なエンタテイメントとしてはやや盛り上がりに欠けるきらいがあり、主人公が旅から帰還してからの終盤が破天荒で更に面白い。
何処の寓話でもそうだが、禁じられたことを行った者にはそれなりの報いがあるものだw
小説だけを読んでいると『めでたしめでたし』で終わるストーリーだが、解説を読むとそれがまた違う一面を見せて来るところも面白い。
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不妊の治療法を求め狩人が冒険をして帰還する話。
道中は個性的な面々に出会うもののなかなか起伏が乏しく(28歳の日本人にとっては)エンターテインメント性は薄く感じた。
物語の細部に博学的、あるいは人類学的興味を持って眺めることが読中の主な楽しみだったのは正直なところ。
巻末の解説にて言及されていた部分のほか自分が興味を引かれた部分は時間に関するところ。
戦闘などに要した時間を120分といったように分表示でされることがしばしばあり、巻末の解説がいっていたように必ずしもヨルバ文化のみに基づいているわけではないようだ。
一方でひとつの戦いから次のものまで平気で一年くらいたっていたりする。
全体としては正直そこまで楽しめなかったが、アフリカ文学は引き続き読んでいこう。
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やし酒のみ同様、どんどん出てくるエイモス流のこわいやつら
とくにこの話ではめっちゃしつこくてグロすぎるやっかいなやつがでてきてずっとこわい
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現代文学の文脈から逸脱している。小説のセオリーという固定観念が緩む。
ストーリーとしては単調で、強い敵に会う→倒すor逃げるの繰り返しではあるのだが、「なんで?!!」が多くて飽きなかった。
「ジャングルのアブノーマルな蹲踞の姿勢の野生の男」?「頭の取り外しのきく狂暴な野生の男」?
なんだそれは。本当になんなんだ。
また、日本のような仁義ではなく、「生きるため」が正当化された過酷な野生の世界を感じる。
主人公も(日本的な意味では)品性公正とはいえず、他所者を野生の人間と見下したり、生きるためなら当たり前に収奪を行う。
生き残るための排他的コミュニティ、神様との親密な関係、当然のように描かれるそれらが物語の底に光る。
読書体験というか、異文化体験として良い作品だった。