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富山駅から車で約1時間半、富山市の最南端の県境にあるのが大長谷地区。1年の半分は雪に覆われ毎年2~3メートルの積雪がある。かつては養蚕や炭焼きが盛んで、1950年代には1700人ほどいた住民も、いまや61人。しかしながら、耕作放棄地が増えているわりに、道周りの草はきれいに刈られているし、そば祭りには県内外から多くの人が集まる。これを可能にしているのが大長谷出身の青年会。ことあるごとに帰巣本能のように村へ戻り、祭りや運動会などのイベントを自主的に運営している。戻ってくる人の多くは元住民。中学時代から寮生活で週に一度は山に帰り家の手伝いをするのが当たり前だった人たち。村は、そば祭りなど、名目をつくって呼び寄せ、また、若者も大義名分があるから帰りやすい。ちなみに青年会は自治会費を納めておらず、逆に自治会から助成をしてもらっている。住民票がない人ばかりで構成されるちょっと変わった自治組織だ。大長谷には家のない人もいるが、共同で空き家を買い上げたりして移住希望者や自然農を学ぶ人に貸している。
人口減少対策はいまや全国の自治体や地域に共通する課題。本書では、中山間地域にあって社会増を実現し、全国から注目を浴びている島根県邑南町をはじめ、様々な戦略をもって人口減少に立ち向かう事例が紹介されている。キーワードは地元愛。誰しも生まれ育った地元がある。