紙の本
生きる姿勢
2015/11/03 07:24
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
宮本輝。1947年生まれ。1977年に『泥の河』でデビュー。
吉本ばなな。1964年生まれ。1987年に『キッチン』でデビュー。
吉本さんがデビューをした時には宮本さんはすでに作家として10年の経歴を持つ中堅作家だったことになる。その後から現在に至るまで二人ともに旺盛な執筆活動を続けて、その人気は手堅いものがある。今や二人とも大御所といえる。
それでも、人生の先輩として、作家の先輩として、宮本さんを尊敬する吉本さんの心持ちは美しい。若い人には時にそういうことを乱暴に扱う人も多いが、吉本さんはそうではない。もちろん、宮本さんにそういう資質なりがあるのだろうが。
そんな二人の、これは対談集である。
語られているのは、「作家の資質」や「生きること、書くこと」といった小説家としての事柄や「父として、母として」といった家族との関係、「人間の成長とは」や「「死」はいつも身近にある」といった人生そのものである。
それぞれが独立しているというより、人生の中には家族もあるし、「死」もある。家族の「死」もあるし、病気もある。それらが作品として結晶していくこともある。
7つの対談がまとめられているが、全体がひとつの対談である。
宮本さん吉本さんそれぞれが互いを鏡にして、時に宮本さんの、時に吉本さんの思いが立居振舞が浮かび上がってくる。
宮本さんにしろ吉本さんにしろ、その作品の中に「死」は濃厚である。
吉本さんはそのことについて、こう発言している。
「死ぬということを生活の中で当たり前に意識する、いや意識さえせずに、しかし当然に抱いている」。
この言葉で、吉本さんの作品の意味がぐっとせばまるような気がする。
また、作家から見ての読書ということについても興味深い発言がある。これは宮本さん。
「自分の実人生と、自分が読んださまざまな小説が、あるとき歯車のようにガチャッとはまるときが必ず来ます。それが大人になるということかもしれない」。
そのことに関して、「あとがき」の中で吉本さんは「みんなが本を読まなくなって、日々はやたらに忙しく早い回転ばかりを求められ、ゆっくりものを眺める時間もなく、短時間のひまつぶしには満ち溢れているこの時代の中で」「それは違うんだ」、と宮本さんは言っていると。
やはり波長のあう人同士の対談はいいものだ。
紙の本
涙が流れ落ちる寸前、の読後感。
2015/10/10 22:43
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投稿者:ダリア - この投稿者のレビュー一覧を見る
お二人の人生の深さに、敬服しました。
紙の本
世代を超えて、、
2017/10/20 17:46
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投稿者:mon oncle - この投稿者のレビュー一覧を見る
文学と云う専門性に生きながら、世代を超えて話し合えることに羨望を憶えました。世代が違うからこそみえてくること、おなじ道だから共感しあえること、第一線で書き続けることでわかりあえること・・。私も二人のように語り合える同業者を持ちたいとおもいます。
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こんなに素敵な方たちが、こんなふうにあたたかな想いで小説を書いてくださっていることの幸せをかみしめています。読み終わって、思わず本を抱きしめてしまいました。ありがたいなぁ。嬉しいなぁ。と胸がいっぱいになった対談集でした。
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創作・家族・人間関係・健康・死生観など、小説が問いかける『幸せ』のかたちとは何か。2人の作家の思索が詰まった珠玉の対話集。吉本ばななはちょくちょく読んでいるのだが、宮本輝に関しては恥ずかしながら作品を全く読んだ事がない。この対談集は2人の作家がお互いの作品について、触れ合ったりするので出来れば、両作家の作品を読んでおく事を私はおすすめする。宮本輝の作品に関しては作品名や登場人物を知らないため、何を言ってるかよくわからず…。これを機会に宮本輝の作品を読んでみようかと思う。
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読みやすかった。
宮本輝曰く、”85歳まで小説を書きたいから健康でいたい”って糖質制限やぬるめのお湯に(38℃)に30分入るとか、いろいろ気をつけているんだ。
是非85歳まで書き続けてほしいわ。
死ぬ前にアップルパイとうな丼と鍋焼きうどんだけは食うぞってとこ笑った。
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なぜ小説を読むのか、そしてこのお二人の作品が好きなのかを再確認した。
若者への考察や死生観、健康についてと共感すること、なるほどと思う数々の言葉。
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宮本輝は「錦繍」を読んで感激し大好きになったけど、それ以降彼の作品を何も読んでないのでこれから読んでいく予定。
吉本ばななと宮本輝の対談ということで、迷わず手に取った。
宮本輝の本を読みたくなったし、吉本ばななはカルト小説家になりたかったのかなどと色々ふむふむしながら読んだ。
彼らの作品読んでる人じゃないと、なかなか共感することは少ないかもしれないけど、私は少しずつ大事に読みたくなる一冊だった。
またパラパラ日常的に読み直したい。
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2015.11.13開始
2015.11.16読了
宮本輝とよしもとばななの対談。
宮本輝氏の成熟さにより、ばななちゃんの未熟さが浮き彫りにされてしまう(笑)と感じるが、ふたりの小説に対する愛と責任感がひしと伝わる良書。
二十代、三十代の若者が成熟しないのは良い小説に巡り合っていないから、という宮本輝氏の言葉に共感。
小説は生涯の友であり伴侶であり師としたいと改めて思った。
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二人は、ただ単純に連載のため、本のために対談をしているんじゃない、と思う。それ以上に、仲のよさ、親密さが行間から伝わってくる。私事ですが、なぜか最近活字を読んでいても頭に入ってこない時期が続いていて、本書についても読んだは読んだけど、というかんじ。お二人ともが言葉を扱う仕事、小説家であるからこそ通じ合う部分が大きいのかもしれない。またいつか、再度読みたいと思う。ただ、吉本ばななさんのあとがきは圧倒的。それはいまの自分でも、よくわかった。読んでるこっちが勇気づけられる。
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人間関係のヒント、創作の作法、家族と結婚、健康、死生観…。人間の「生」を力強く肯定する作品を書き続けるふたりの作家の思索が詰まった、珠玉の対話集。『集英社WEB文芸レンザブロー』連載を加筆修正し単行本化。
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宮本輝と吉本ばななの対談集。
2人の小説には嫌な人が出てこない。そして彼らの小説を読んだ人を癒す力がある。共に言っているが、小説を読んだ誰かが癒されるだけでいい、というような。
確かにその感覚、いま改めてそう感じるかもしれない。
親のこと、子のこと、死のこと、感覚を研ぎ済まされる文章に2人のそれらに対する向かい合い方、考え方を少しでも理解できるいい機会となる本でした。
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なんか言葉にはできないけど、この2人の考え方がわかった気がする。
なんだろう。
こんな回転の早い時代だからこそ、時がゆっくり流れる対話が必要だと思う。
またじっくり読みたい。
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またまた大層なタイトルである。
吉本ばななという作家さんの作品を読んだことがないので、吉本さんのことはよく知らないのだけれど、宮本輝と対等に対談する、作家さんなんだ・・・とちょっと驚く。
というわけで対談集だが、今まで私は宮本輝の作品は諸手を挙げて何でも読んできたし、エッセー、対談集も楽しみに読んできた・・・
でも本作に対しては、うん?となにか心に引っかかる、具体的にどこのどういうフレーズに、というわけではないのだけれど、読後もざらざらした感情が残ってしまった。なんだろう・・・
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世の中を少しでも良いものにしたい、生きるって悪くないと伝えたいと思いながら小説を書いているお二人の対談。病気など苦しいことも体験してきたからこその深い言葉。しぼんでいた風船に少しずつ空気を入れてもらった気分で読み終わった。
二人に共通する、「現実世界では理不尽で大変なことばかりだからせめて小説では心根のきれいな人を書きたい」という考え方がなんだか嬉しい。
自分が吉本ばななさんの小説が好きなのはそういうことなんだと再確認した。だからといってうわべや理想だけでもなくて、苦しいことや汚いことがあることも受け入れた上での心根のよさ。宮本輝さんの小説は読んだことがなかったので、早速読もうと思った。
★文学という仕事は、自分の小さな庭で丹精して育てた花を一輪一輪道行く人に差し上げる仕事なのではないか(柳田国男)
★人の裏側やネガティブな部分もみんな見えてしまう作家としての宿命を、マイナスの形では世に出したくない(吉本ばなな)
★自分にとって相手の嫌な部分が、社会のある仕事のなかにおいては重要な歯車となって機能する場合もある。だから、相手のささやかな欠点によって、こいつ嫌いやと断絶するんじゃなくて、そんな些細な欠点は自分で飲み込んでしまって相手を認められたとしたら、大きな宝物となるんじゃないか。(宮本輝)
★楽観主義というのはその人の天性のものではなく、自己訓練の結果。自分の力では、いまはどうにもできないと覚悟して、ばたばたせずに、もうちょっとどっちへ行くかわからん小舟に乗っていられるかどうか。幸福を求めている限りにおいて、人間は強くいられる。(宮本輝)
★体はなにかを食べて栄養にしているが、魂には魂の食べ物が必要だ。~もしも魂が何も食べていなかったりえげつない食べ物でいっぱいになっていたら、結局は人間を動かす両輪の片方であるところの体が壊れるのだ。(吉本ばなな 鳥たち)
★小説の世界では、心根のきれいな人々を書きたい。(宮本輝)
★好不調はつねに繰り返しつづけるし、浮き沈みはつきものだが、自分のやるべきことを放棄しなければ、思いもよらなかった大きな褒美が突然やってくる。(宮本輝)