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世間に大きな衝撃を与えた事件の死刑囚たちと交流したジャーナリストによるルポ。幼女連続殺害事件、奈良女児殺害事件、附属池田小事件、土浦無差別殺傷事件、和歌山毒入りカレー事件の5つがそれぞれ取り上げられている。死刑囚みずからの口から、あるいは手紙によって語られた事件の動機や背景、逮捕後の心境などを紹介していきながら、彼らがいかにして犯罪を犯すに至ったのか、その犯罪を自らの内でどのように整理しているのかを考察していく。
そうして考察した結果として、何か提案や結論を示しているわけではない。とはいえ、それでも数多くの問題提起がなされており、それを読み手それぞれが犯罪の原因や犯罪防止、刑罰のありかたなどを考える非常によいきっかけにはなると思う。
特に、附属池田小事件、土浦無差別殺傷事件の犯人は死刑となることを自ら望んで犯行に及んだわけで、彼らの希望通りに死刑を執行することの意味、さらに戻ってそもそも人に刑罰を与えることとはいかなる行為なのかといったことはなかなか難しい問いであると思う。
また、カレー事件を除けばすべて死刑が執行されており、もう彼らから新たな証言を取ることはできないわけで、資料的な意味でも重要な本ではあると思う。