紙の本
許されない。
2018/09/20 01:17
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投稿者:ねこさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
人を殺したら年齢など関係なく
罪を償うべきだと思う。
名前を変えて顔を変えて
何食わぬ顔で生きているなんて
私には許せない。
社会どころか遺族にさえ犯人の名前すら
教えてもらえないなんて殺され損でしかない。
彼は喜んだり楽しんだりしてはいけない、
笑ったりしてはいけないのだと思う。
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先に読んだ『Aではない君と』が、現在の犯罪に対する親と子の問題であるのに対し、この作品は、過去に犯罪を犯した者にどう対応するか、どういう態度で接しられるか、を問いかける。
14歳の時に猟奇的殺人を犯し、少年院を経て社会に復帰した鈴木、中学時に友人の自殺の引き金を引いたと思い悩む益田、そしてAV女優という過去に怯える美代子、彼らがそれぞれに交差し、過去が浮かび上がる。
彼らが、今の良好な関係でいてほしいという思いで、頁を繰るのをためらいながらも、その先の破たんを予感し結果を知りたいという矛盾した思いのまま、読み進んだ。
読み手に重い問いかけをする、著者渾身の傑作。
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世間を騒がせた犯罪者が自分の近くに居たら どうするか⁉︎
わからない! その立場になってみないと・・・
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最近薬丸岳さんの作品を立て続けに読んでる。
何作か読んだ中で私はこの友罪が1番ページをめくる手が止まらなかった。
S先生の軽率な行動にイラつきつつも、続きが気になってぶっ通しで読み切った。
多くの人が読みながら益田を自分に置き換えながら読んだんじゃないだろうか。
自分ならどうするか。
私もそれを考えた。
きっと私は鈴木から逃げてしまうだろうな。
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14年前に起こった2人の男児の殺害事件。犯人は14歳の少年だったため名前が報道されることもなく、その後の少年の行方はマスコミもつかめなくなるのだが…
自分の友人や恋人が過去に人を殺していたとしたら、それでも関係を続けられるか?
この本の問いかけはそれに尽きます。登場人物たちの懊悩はそのまま読者への問いかけです。
友人の鈴木が殺人者ではないかと疑う益田、鈴木に思いを寄せる美世子、少年院時代から鈴木のサポートを続けてきた弥生、それぞれの視点から話は語られます。
それぞれが過去に影を抱えており、彼らが鈴木と向かい合うことはそれぞれの過去と向き合うことでもあります。
小学校時代の友人の自殺や雑誌社でのアルバイト時代に人の人生に干渉してしまうなどの苦い経験を持つ益田、
AV女優の過去を持ち、その時代を知る元交際相手から脅迫を受ける美世子、
鈴木のサポートに追われ自身の息子と向かい合えず、家庭を壊してしまった弥生、
それぞれに過去に傷を持つ人々が、鈴木という消しようのない過去を持った男の存在に触れることで、そして変わろうとする彼に触れることで、どのように過去と対峙するのか、少年犯罪のその後という本軸だけでなく、それぞれのドラマも読ませます。
まるで潮が引いていくかのように、鈴木に対しての周りの人々の反応が変わっていく姿はあまりに薄情ではないか、と思う反面、致し方ない、あるいはいい気味だ、と思う自分もどこかにいたりもします。
読んでいる段階では、もし自分の身に起こったら、相手が更正していると思えるようであれば、なんでそんなことをしたのか、今はどう考えているのか、相手から話を聞いたうえで判断したい、と思いましたが、
でも一方でそんなことが自分に本当にできるのか、という思いも抱いたり、結局答えは見つけられなかった気がします。
この手の話でよく聞くのは贖罪であったり、赦しであったりします。しかし、何が贖罪になるのか、被害者や被害者遺族、被害者の関係者以外が、そうした罪を犯した人に何を求めるべきなのか、そうしたことも深く考えさせられます。
あくまで自分の考えですが、犯人は”赦せない”。だから社会から”排除する”。というのは、何かが違うような気もします。もちろん被害者のことを考えると、そう割り切れないことも確かで、結局どうなんだ、という話ではあるのですが。
薬丸さんの少年犯罪ものが、他の少年犯罪ものと一線を画しているように思うのは、単に悲しみや怒りなどといった激情にかられず、何が正しいのかとひたすらに思い惑う著者の姿が、筆勢から浮かび上がってくるからだと思います。それは少年法の賛成派とも反対派とも少し違う視点からの問いかけです。
この作品はミステリ要素のない群像劇の要素の強い作品ですが、それでも従来の薬丸ファンの方もそうでない方にも、心に波紋を広げる作品であるように思います。
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小説家とは。いつも思うけどすごい。
色んな人の色んな想いを書き分けラストへ向かっていくストーリーに引き込まれる。
その人はそう思うんだ、あの人はそう感じるんだ。
色んな人がいてそれが全て間違いではなく。それがすごい。
読む側も色んな感想を持つんだろうなと思う。
でも小説はフィクションだから。だからラストは光が欲しいなとも思う。
現実はそんなんじゃないんだ、いや、そんな感じなのかとも思う。
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とても考えさせられる話だか、直面しないと答はだせない気がする。
正しい答えなんて無いのかも知れない。
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職場で親しくなった同僚が、実は猟奇的な殺人事件の犯人だったとわかったら・・・神戸の児童連続殺傷事件を彷彿とさせるテーマで非常に重い。
ジャーナリストをめざす同僚、彼と恋人関係になる同僚女性、医療少年院で母親的役割を担っていた教官など周囲の複数の視点から現在の「元少年」の姿が描かれるが、彼が医療少年院での生活を経て更生しているのか、根深い病理や猟奇的傾向が遷延しているのか、周りからはなにもうかがい知れない様子に不安感をあおられる。
罪を償った人、更生した人の人権は尊重されるべきという理想論と、加害者側は十分に守られるのに被害者側が守られない理不尽さや、いくら更生したとはいえ大罪を犯した人を受け入れられるのかという疑問、それ以前に本当に更生しているのかという疑念、さまざまな思いの前に何も結論は出ない。小説の結末はあくまでひとつの結末にすぎず、この問題提起はさすが薬丸岳さん踏み込んだなぁという印象。知らずに彼と親しくなった同僚・益田の葛藤は、まさしく読者の葛藤。
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読んでいる最中、この終わりのない問題を、どのような落し所に持っていくのか気になった。きっと落ちをつけたらそれだけでこの本が『嘘』になってしまう。そういう意味でこのラストは秀逸だったのではないだろうか。
酒鬼薔薇事件を彷彿とさせるが、作者曰く無関係とのこと。だが、酒鬼薔薇事件を念頭に読んだところで、事件の向こう側を書いた本書から受けるイメージは何ら変わらないと思う。
主人公の最後の決意を涙ぐましい友情ととるか、友情という言葉に託けた自己満足ととるか、それは読者しだいだが、一面だけを読んで、友情に感動した!加害者擁護だ!などと言うのはお門違い。作者はデビュー作で、徹底的に被害者感情を書ききった。
本作を以って、薬丸岳は社会派においてオールマイティであることが証明されたのだと思う。
だから本作はあくまで、考え方の1つ、と捉え、新たに著者が違った考え方を提示してくれるのを待とうと思う。
余談だが、本書には過去にAV出演歴があるからと世間から謂れのない差別を受けている女性が出てくる。僕みたいなAV女優のファンなんてやっている身からすれば、こっちの描写の方がキツかったりした。その女性は「悪いことをしているわけじゃない!」と訴える。全くその通り。最近ネットの普及により、AV女優とのコンタクトが容易になったせいか、彼女らの仕事をを蔑み、嘲笑うかのような発言を本人に直接言う輩が出てきた。
そういう輩にひとこと言いたい。
それは職業差別だと。差別なんだと。
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201512/このテーマで薬丸岳なのにこの結末、いい意味で予想を大きく裏切られたし新境地と言っていいのでは。日常の場面でよくある、いわゆる"普通の人達"が発する心ない言動、様々な立場の登場人物達の視点で語られ、当の鈴木の心境は語られないからこそ、読んでて都度「自分だったら?善悪とは?」と考えてしまう、感情移入とは違う思考。赦しは赦されたい側の自己満足、この結末は過去の贖罪の代替に思えるけど、絶対の答がないからこそこう書ききった薬丸岳はすごい。弥生と智也の結末はちょっと納得いかないけど、そこは男性作家故の優しさに思った。
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あなたの隣で笑うその人が、過去に人を殺していたとしたら?
はじめから知っていれば関わらないでいることが出来たのに、既に関わってしまっていたらどうすればいいの?
罪の重さ、得体の知れない不安感、被害者の心情や社会的な評価への配慮。それに反して、自分がその目で確かめてきた人としての優しさや苦しみが嘘だとも思えない。
自分とは関わりのないことに対して、無責任に悪意をバラまいて正義ヅラする人たちへの違和感。
相手と向き合えず、詮索してしまう自分も同類なのかと自己嫌悪に陥る苦しさ。
益田の懊悩に対して、鈴木の内面に関しては表現が少なく、より考えさせられる内容だった。
どうやって終わらせるのかと思っていたけど、ラストが秀逸だった。
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私が読んだ薬丸岳さんの著書のうち、デビュー作であり、江戸川乱歩賞受賞作『天使のナイフ』では少年犯罪の被害者遺族の視点から。『虚夢』ではこちらも被害者遺族視点で少年犯罪ではなく刑法39条を扱っています。
今回、『友罪』は少年犯罪のその後、少年法で守られ十数年経った頃の加害者である鈴木を軸に、主人公の益田、2人の同僚である藤沢、鈴木が院で母親のように慕ってきた白石といった3人の視点から物語は進んでいき、進むにつれ鈴木の過去が明らかになっていく中、益田と藤沢はその事実を突きつけられ鈴木の過去と同時に自分を苦しめていた過去とも向き合っていく・・・。
この本が訴えてくるものは数多くあり、「その過去を知っても友達でいられるか?」、「罪を背負った者の償い、贖罪とはなにか?」、「可塑性を重んじ、被害者を軽んじる法律」など多数あると思います。『虚夢』に関しては心神喪失者は罰しない。責任能力がないものを非難することができないとあることについてこちらも多くの問いを投げかけられます。
薬丸岳さんの著作は本当に考えさせられる点が多い。フィクションではあるが、現実にこういったことは普遍的にも起こりうる。多くの問いに対して目を背けてはならないということを著者は訴え続けているのかもしれない。
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自分の周りにいる人が罪を犯した場合、自分はどのようにその人と付き合っていくか?マスコミのあり方など考えさせられる点が多い。分かりやすい展開だが、もう少し捻りが欲しい感じ。
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傑作。こんなにも心が揺れ動く作品は稀。賛否両論あるだろうが彼らの姿に何かを感じることだろう。
あらすじ(背表紙より)
あなたは“その過去”を知っても友達でいられますか?埼玉の小さな町工場に就職した益田は、同日に入社した鈴木と出会う。無口で陰のある鈴木だったが、同い年の二人は次第に打ち解けてゆく。しかし、あるとき益田は、鈴木が十四年前、連続児童殺傷で日本中を震え上がらせた「黒蛇神事件」の犯人ではないかと疑惑を抱くようになり―。少年犯罪のその後を描いた、著者渾身の長編小説。
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ずっと気になっていた本。ようやく読むことができた。
きれいごとだとわかっていながら、益田には鈴木を擁護して欲しい…藤沢美代子には鈴木に寄り添ってあげて欲しい…と祈るような気持ちで読み進めた。その願いも虚しく、益田が提供したネタが週刊誌に掲載され、鈴木はみんなの前から姿を消すこととなる。これが現実であろう。
これを読みながら思い出したのは神戸で起きたサカキバラ事件である。
筆者は神戸出身で私と同年代なので、やはりこれがベースになっているのだろうと想像する。
そうなると、友達でいられるか…?
やはり無理だ。知ってしまった益田の苦しみは想像を絶するし、同僚や社長の言動もリアルだ。
最後、益田の行動と手記に救われた。
どうか鈴木が読んでくれますように。
以下、印象的な鈴木の言葉。
「いつも過去に苦しめられる…どこに逃げても過去が自分を追いかけてくる。どんなに普通に生きたいと願っても、みんなよってたかって過去をほじくり出してさらしものにしようとするんだ…」
「別に悪いことはしてないじゃないか。人を殺したわけじゃないし、罪を犯したわけでもない。逃げ回ることなんかないよ。」