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とても切れ味のいい文章
2016/04/09 21:09
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は最初から「なぜ日本では略奪も行動も起きないのか。私の答えは簡単である。世間があるからだ。」とクリアカットに呈示します。
筆者いわく「日本人はみな法のルール以前に世間のルールに縛られている。新自由主義は競争的環境に追い込み世間の様々なルールの肥大化が起きた。その結果、世間全体が深刻なストレスを溜め込んでいき異質なものを排除する同調圧力が強まったのである。」と。
凡庸に多数派につくというのは生存戦略として私たちの身体に染みついており、そこに資源を優先的に配分します。
西洋社会では法のルールがあります。アメリカでは子供が何か悪いことした場合に外出させないと脅します。しかし日本で叱る場合に家から外へ閉め出すよ、と脅すことで、日本人は処罰とは社会からの排除ということを学ぶのだそうです。
「お前なんか出てけ!」ってな感じ、なるほど私の身体に染みついています。そうした「世間」という日本人を強く縛っている非公式なルールが犯罪の防止策になっています。
ある芸能人が不倫をして関係者にはちゃんとケリをつけたのに世間は許してくれないのに不満を述べ「世間ってなんなんだろうね?」って感じのコメントがありましたが、本書では世間の4つの特徴が述べられています。ネタバレになるので詳しくは本書を。
西洋社会にみられない治安のよさや犯罪率の低さを維持してきた世間は、ケガレの排除だけでなく赦しの機能もあるからここまで機能したっていうのはなるほど慧眼です。
「大岡裁きを期待している日本の世間では、正義の実現はお上が一気に為すべきことであって、西欧社会のような地道な民主主義的手続きは必要ない。」っていうのは、個人の自立した民主主義が…ってリベラルが言っても、実際は多数派に歩調を合わせる人がマジョリティという現実が腑に落ちてしまいます。
本書は「だから世間がダメなんだよ」っていうのじゃなく、ちゃんと世間がどういうものか、また卑近な例を豊富にそろえてくれているのでスイスイ読めます。便所飯とか既読スルーとか。ネットなんかで対象物をフルボッコにするあの力も世間によるものって考えたら、なんかもやもやしたものの構造がわかってすっきり腑に落ちます。
中間層が解体されることで低所得者層が増加し社会的格差が拡大しているそうですが、個人化が進むなかで肥大化している「世間」を知るのにとてもよい一冊です。
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