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鶴見俊輔 「 埴谷雄高 」埴谷雄高の出自、共産主義の革命活動、転向経験、著作の中の思想など 充実している。
「死霊」の中心命題、創作背景、エピグラフの意味など 不明点が だいぶ読み解けた。「死霊」は 凄い本だと思う。
死霊
*物語の中心が 革命にまつわる集団リンチ
*革命が主題〜死者とのつながり〜主人公は 神ではなく 神や国家によってつくられて 没落した死者〜死者の電話箱=リンチ死亡者から生者への返信
*中心命題=自同律の不快=自分というものの中では 落ち着きが悪いという自覚
*非現実の場所から出発する=死霊は 思考実験
虚無主義の形成(評論)
*埴谷の転向=共産主義から虚無主義へ
*転向(暴力による志の屈服)→「自分は自分である(自同律)」へのためらい〜いつの時点の自分が自分なのか→不快
*マルクス主義にない美学→論理の涅槃=互いに矛盾する判断や行動が交差し、そのまま放っておかれる状態=ぷふい
*植民地で育った出自→自分が日本人であることが嫌になった→ハッピーエンドへの期待をもたない
存在とは
*啞で白痴で美しい静かな娘=存在は自ら忘れ、意識を伴わない
*ニーチェの永遠回帰(世界は同一の状態を永遠に反復している)世界はただ存在しているだけ に似ている?
「悪意と深淵の間に彷徨ひつつ宇宙のごとく私語する死霊達」
*死霊の視点=死んだ人間から宇宙を描く視点は 哲学の考察へ
*転向者の視点〜死霊たちは 自分たちを生かしてくれなかった宇宙を裁く視点
「不合理ゆえに吾信ず」
すべての主張は偽りである。或るものを 同一のものとして 他のものから表白するのは 正しいことではない
死霊の2つの倫理の目標
*必然からの逸脱〜自同律からの逸脱衝動としての不快→死者の声を通して人類を裁くことが倫理の目標
*あらゆる反対命題を考えることで何事も断定できない(論理の涅槃)→慈悲の倫理=すべて善しすべて悪しの無敵戦法の人生観→敵味方の対立を超える
三輪与志
*生まれた以上 新しい生を自らつくることなく、すでに生まれたものを殺すことなく、自分を終わりまで味わう
*その過程で、生きることに伴う不快を 自分の原動力のとする
「人は死ぬ。死ぬことで、初めて、次が生まれる。破れ目から芽が出るのだ」