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世界でただひとり、彼にだけ与えられた肩書き「電球交換士」。こと切れたランプを再生するのが彼の仕事だ。人々の未来を明るく灯すはずなのに、なぜか、やっかいごとに巻き込まれる―。謎と愉快が絶妙にブレンドされた魅惑の連作集。
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電球交換士の十文字扉の物語。かかりつけのやぶ医者(本人曰く)に、不死身であると宣告されて以来、「どうせ」死なないのだから、という諦めと虚しさのような気分に浸されているような気がしている。電球を交換してほしいという依頼があれば、あちこちに出向いて「十文字電球」に交換するが、その電球にも実は事情があって、いずれこのままではいけないという思いを抱えているのである。行きつけのバーに集う常連客達とのやり取りや、それぞれの事情に考えさせられることもあり、滅びていくものと続いていくもの、そして新しく作られるもののことに思いを馳せたりもする。不死身の我が身の来し方行く末を考えるのも、途方もない心地である。いくつもの軸を持って流れている時間というもののことを考えさせられる一冊でもあるような気がする。
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どこかの家のカーテンごしに見るオレンジ色の灯りのあったかさを想像するランプ。
時代と共に消えていくいろんなもの。
限りあるものだからこそとうとい。
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電球の交換を仕事にする主人公が、なじみのバーや仕事で出会う人たちと交流したり、ちょっとした謎を解いたり、失われるものを思ったりする話。
ちゃん作られた作品であるように感じるが、面白いわけでもなし。
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吉田篤弘の描く世界はいつも嘘の世界。それを承知で読む。しかし承知の筈の自分はいつの間にか何処かに姿を眩まし、最后の頁で妙に物語に嵌まり込んでしまった自分を発見する。そこには急に止まったメリーゴーランドの木馬の上に跨がったままで途方に暮れた顔がある。
寂れた百貨店の屋上に遊技場が存在したのは何時の頃だっただろう。百貨店の屋上に象がいた記憶はさすがに持たないけれど、狭い空間の中に幾らでも見飽きないまばゆい遊具が並んでいた風景の心象はある。大した数の遊具ではなかった筈なのにそれらが無限とも思えたのは、自分の身体の大きさとの比較の問題だけでなく、遊ぶことが許された機会が貴重だったせいでもあるだろう。昔の子供にとって外で走り回るのが遊ぶという意味だった。今となっては、その時代が代え難く大切なもののように思えるが、全てが黄昏めいた記憶の着色を帯びてしまった故の感傷でもあるのは間違いない。たとえそうだったとしても、失ってしまったものや思い出すこともなかったもの、それらに附随する細々とした記憶が次々とよみがえる。吉田篤弘の小説は、読むものの意識を過去に向かわせる。
熱心な吉田篤弘の読者というわけではない。それでも新作が発表されると気になる。必ずしも手に取る訳でもない。しかし必ず確認してしまう。御注進、御注進、と心の中でつぶやきながら。この人には以前すっかり騙されたことがある。存在しないものを存在するかのように描くのがこの人の得意とするところだから。例えば吉田音の小説など。用心しなくてはならない。そう思いながら読み始めるのに、いつの間にかやられてしまう。信じ込むわけではないけれど、何処か懐かしい場所に連れ去られたような気になって、はっとさせられる。
ところで、美術館の電球を交換をする話は何処かで読んだことがあると、かすかな記憶がしつこく主張する。電球だけに「電氣ホテル」だったか、美術館なら「モナ・リザの背中」だったかと本の山から引っ張り出して頁をめくるけれど見つからない。ブクログの過去のレビューから吉田篤弘を検索すると、岸本佐知子編集の「変愛小説集 日本作家編」が網に掛かる。そして「梯子の上から世界は何度だって生まれ変わる」というタイトルに行き当たる。そうか、ここに居たのか。急いで本棚に向かい目指す本を取り出し頁を繰る。なるほど、なるほど、この扉がこうなってあのヤブがそうなるのか。ひょっとして玉子サンドがこの絵になるってことなのか。またまた吉田篤弘ワールドに絡め捕られている自分がいる。
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こんなに面白いとは思ってなかったのでラッキーでした。
途中「森見登美彦が書いた?」と勘違いすることもあったけど・・・
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おお、新刊でてた~!!
吉田ワールド全開っすねー。
いやあ、堪能堪能。
楽しく一冊味わいました。
たまごサンド食べたい~~~!!
今回は呼称が「俺」だったんで、ちょっといつもと違う感じ。
どこか「探偵はバーにいる」の雰囲気があるような。
と、おもっちゃったんで、どーも頭ん中で大泉洋さんでてきちゃってました。
こうこうこういう話です、とまとめようとすると
なんかとっちらかってしまう感じ。
いろんなイメージがありすぎて、もうおなかいっぱい、というような。
いつもながら不思議な、でも心地よい読み心地で、
しあわせ読書時間でした。
ありがと~。
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"おれは橋本さんに丁重に礼を云うと、ふと思いついて、「もし」と天井を指差した。
「もし、電球を交換する必要があったら、いつでも連絡してください」
ここぞとばかりに、営業用の名刺を渡しておいた。"[p.149_煙突の下で]
不死身の単語に惹かれて。
気負わずにことりことりと。
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タイトルに惹かれて借りましたが、タイトル通り、電球の交換を生業とする男にまつわる物語。説明しづらいのですが、ストーリーがどうこう言う前に、物語全体のトーンが何とも言えず気持ちが良い作品です
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ふわふわとした不思議な感じで、読み心地が良かった♪電球交換士(不死身?)が不思議な事に巻き込まれる話なのに、十文字の卵サンドと青空軒のカレーライス食べたいなぁ(*´-`)という、食いしん坊な感想(^o^;)
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電球交換士の十文字の仕事は、切れた電球を交換すること。
その仕事中に火傷を負ったことがあり、診察された自称ヤブ医者から「不死身」になったと言われる。
そんな十文字を尾行する人間の気配があり......。
2016年8月24日読了。
吉田さんには珍しい、ちょっとハードボイルド的な語り口が新鮮でした。
大人の童話的な部分は変わらずに、でも、好きな部分と苦手な部分が混在している作品でした。
なので、☆は3つ。
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吉田篤弘作品の主人公たちは
実はみなハードボイルドだ。
(ほのぼのとした作風だけを見ると納得できない人もいるかもだけど)
『レインコートを着た犬』に登場する
映画好きの犬、ジャンゴも
『つむじ風食堂の夜』の
雨降り先生やデニーロの親方、
イルクーツクに行きたいと願う果物屋の青年も、
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』の
サンドイッチ屋トロワで働く青年オーリィー(大里)さんと
トロワの主人の息子リツくんも、
『フィンガーボウルの話のつづき』に出てくる
予告編専門の映画監督「ろくろく」も、
『針がとぶ』の短編に登場する
読書と古い映画が好きなホテルのクローク係と
風変わりな少年バリカンも
『78』の
レコード好きの青年、バンシャクとハイザラも
『空ばかり見ていた』の
放浪の床屋ホクトさんも
みなそれぞれがそれぞれの喪失を抱えながらも
自らの信念やルールに従って生きている。
信念を貫く不器用な生きる姿勢や
自分が信じた者のために強くあろうと
もがき続ける男のロマンが吉田作品にはいつもある。
そう、吉田作品は『精神のハードボイルド』なのだ。
そしてこの物語の主人公も同じく。
酒場は好きだが、酒は下戸で、不死身の体を持つ、
世界でただ一人の電球交換士(電球の交換だけを専門に引き受ける)を名乗る男、
その名も十文字 扉(じゅうもんじ・とびら)。
サイド・カー付きのオートバイ「コブラ・ブラザーズ号」と革ジャンでキメ、
いれたてのコーヒーとお手製卵サンドをランチボックスに納め、
あらゆる街の電球を交換して回る十文字が惚れぼれするほどカッコイいい。
短命の血筋に抗うために
どこまでも死なずに世界中の電球を交換し続けることを使命とし生きている十文字。
彼は言う。
電球を交換するという作業は、
死に絶えたものを看取り、
新たな命を与えて
無くした光を取り戻すことで、
すなわち「再生」する仕事なのだと。
活版印刷屋「ミナト町活版印刷倶楽部」の二代目で
酒豪にして美人の春ちゃん(おそらく20~22歳)、
見た目はボーイッシュで色白美人だが、実はニューハーフのマチルダ(年齢不詳)、
口数少なく頼りなさそうな
自称刑事の西園寺剛(さいおんじ・ごう)、
バー「ボヌール」の女主人の『ママ』、
十文字を不死身の男と診断した、
自称ヤブ医者のドクターヤブ、
ドクターヤブの妹で
精神科医のアスカさん、
パンクバンドの元メンバーで
今は美術館で学芸員をする清楚な美女、八田美枝子(はった・みえこ)、
自称二百年生きてきた
「不死身」の先輩、谷原さん、
自称タイムトラベラーの檜垣くん、
そして弾よりも速い男、弾丸男・ハヤテ
などなど、
吉田作品に共通するユーモラスでヘンテコな登場人物たちが
どこかここで��ない世界へ誘ってくれる。
(おとぎ話的な異国情緒を感じさせる不思議な世界観はいつもと同じく、今作では謎が謎を呼び、哲学的要素もチラホラ)
以前にも書いたけど、吉田篤弘の連作短編集は
一冊トータルとしてどうこう評価するよりも、
読んだ人それぞれが
それぞれのお気に入りのストーリーを見つけて、
そのショートストーリーを
何度も何度も読み返すのがベストな楽しみ方だと思う。
(また吉田さんの短編は何度読み返しても、そのたびに心地良さが持続するところがスゴいのだ!)
重力から解放された状態で深い眠りに就ける
「無重力寝台」、
(ぜひとも試してみたい!)
店主の西島さんが何を言う時でも
人生を交えて語り出す
「人生理髪館」、
(お喋りなタクシー運転手と共にこれは勘弁して欲しい…)
ニューハーフ専門の銭湯「桃の湯」、
(間違って入ってしまったらと思うと…汗)
他にも亡き夫の亡霊を追いかける映画館の未亡人や
マチルダと檜垣くんの時空を超えた恋の物語や
(ロマンチック!)
続けてゆくための信念となる春ちゃんの作業場の電球の話など
ヘンテコな登場人物たちが織り成す
ヘンテコなエピソードが
なぜかじんわり心に沁みること沁みること。
吉田篤弘がいつも決まって描くのは、
静かなふりをして饒舌で、
古臭いのに確かなもの。
ふつうの人のふつうの強さや
そこから紡ぎ出されるもの。
そして時とともに滅び行くものと
時が経っても決して変わることのないものだ。
活版印刷屋、スリ、
入れ替え制のない昭和の時代の映画館、サーカス小屋、商店街の銭湯、デパートの屋上の小さな遊園地、
チキンもビーフも冠が何も付かない「ただのカレーライス」、
そして電球交換…。
消え去っていく「古き良きもの
」たちが胸に沁みる。
詩的で寓話的で強烈に郷愁を誘う世界と
吉田作品の根底に流れる
いつかは消えてなくなるものへの憧憬と鎮魂は今作でも描かれている。
不死身の体を持つ十文字の苦悩。
生き続けることは果たして幸せなのか。
(「銀河鉄道999」や「100万回生きたねこ」に通じる永遠のテーマだ)
しかるべき時が来たら、フィラメントが痩せ細って
『こと』切れるのが電球の美学であるように、
人間の体も寿命があって、限られた命だからこそ、
この場所、この時間は
たった今だけのもので、
だからこそ輝きを増す。
人生は短い。明日が来るなんて保障はどこにもない。
だからこそ一期一会なのだ。
自分の殻なんて破って、躊躇することなく
新しい扉を開いていかなきゃ。
読み終わった今、
そんなことを十文字に教わった気がした。
あっ、そうそう、
読めば必ず卵サンドが食べたくなるので
ご注意を。
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洒落たハードボイルド風。
電球交換士 十文字扉の憂鬱な日々。
炭酸水を舐め、女に弱くて、愛車のコブラ・ブラザーズ号に跨る。
この世界観、最高です。大好きです。読んでいて楽しくて、にやにやしてしまう。
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大好きな吉田篤弘さんなのですが、何故か物語に入って行けませんでした。
そうなると、元がフワフワととりとめのない大人の御伽噺的な作風なので、外れて行くばかり。
まあ、たまにはこんなことも有ります。
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また時間の話だ…!
世界観は好きなんだけど私にはちょっとだけ難しい
「人を憂鬱から解放して幸福にするのは、限りある時間を生きている、と実感できるときなのかもしれません」
たまごサンドたべたい
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タイトルに惹かれました。
主治医に不死身だと言われた主人公は電球を交換することを生業としている。柔らかに空間を包みこむ電球の正体とは?主人公は本当に不死身なのか?
いつか切れてしまう儚さと運命を持つ電球をモチーフに人間の時間軸を描きながら、「限りがあるからこそ持ちうる価値」を表現しているように感じた。
短編連作。せわしさを感じさせないので、睡眠前のひとときにもおすすめ。主人公を取り巻く登場人物もいちいち個性的で楽しめる。