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『あん』がすごく好きな作品だったので、気になって読んでみたのだが作品に入り込む事が出来ずに読む事に苦戦をしてしまった。苦手な国が出ているからだろうとは思う。最初から読むべきでは無かったのかもしれないが…。時間を置いて、いろいろ受け入れてじっくり読むべき作品なのかもしれない。そう思ったりもする。
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日常の中で自分は日本人だ、と認識する場面は少ないけど、海外では嫌というほどルーツを実感させられる場面に出くわすのでしょう。
歴史について問われたら日本人の正しい答えはあるのかと考えてしまう。
世界中みんな国を背負う生き方ではなくその人個人を見ればテロや戦争はおこらない…綺麗ごとですけど。
わかり合うにはたくさん語り合いましょう。
傷ついたとしても。
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ドリアン助川さんの書くものって、いつも心に深く食い込んでくる。短いエッセイでも、人生相談の回答でも。映画にもなった「あん」の読後感など忘れがたい。これもまた、胸の奥に沈んでずっとそこに残るに違いない一冊。
音楽で生きようとニューヨークで苦闘する三十過ぎの拓人が主人公だ。語学学校で出会う若者たちや、バンドを組む仲間たちと、ぶつかったり心をふれあわせたりしながら、なんとか道を開いていこうとする姿が語られていく。みなそれぞれに、自覚しているか否かにかかわらず国や民族を背負っていて、その軋轢やそれを苦しみながら乗り越えようとする姿に胸が痛くなる。
これだけでも異国の地でもがく若者(三十過ぎてるけど。この点も切ない)を描いたものとして十分読ませる。コリアンのユナと近づいていくあたりなど、恋愛小説からはとんと遠ざかってるわたしだが、胸を締め付けられるようだった。
だがしかし、これだけではなかったのだ。読み出してすぐ、舞台が2001年年明けのニューヨークであることから、間違いなく同時多発テロがストーリーに関わってくるだろうとは思っていた。ツインタワーの姿も折に触れて出てくる。その予想通り最終章は9月11日の出来事である。それでも…、ここまでの展開になるとは思いもしなかった。
なにが起こるのかも衝撃だが、それ以上にその描き方に意表を突かれた。同時に、あのテロに対する自分の見方がいかに底の浅いものだったか、痛いほど感じずにはいられなかった。イスラムがどうとかアメリカがどうとか、そういうことは別次元で、あの時確かにたくさんの(本当に数限りない)世界が崩壊したのだ。その重みに、今さら打ちのめされる。
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先日『あん』を読んで興味を持ったドリアン・助川さんの小説です。
ニューヨークを舞台に、ミュージシャンを目指す日本人男性・拓人と韓国人女性・ユナの恋を描いた作品です。
中盤までで印象に残るのは、ニューヨークの街の見事な描写です。そして人種のるつぼであるニューヨークで、人々の普段の姿のすぐ裏に潜む人種や歴史観に基づく偏見や憎悪です。助川さんの来歴を見ると「2000年3月から2002年9月までニューヨークに滞在。日米混成バンドAND SUN SUI CHIE(アンド・サン・スー・チー)を結成し、ライブハウスで歌う。」と書かれているので(時期は少しずれていますが)実体験を反映した物だと思います。私も海外の人との付き合いは有りましたが、その中ではあまり感じた事は無く、そんなにもあるのか?強いのか?という印象です。逆に言えば私がそこまで深く入り込めなかったという事なのでしょう。
そしてエンディング。9・11。
物語はどこか暴走し、拡散したような印象です。何かを伝えたかったのだというのは判るのですが、それが何なのか捕まえられないもどかしさが残りました。
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本書の帯びには「9.11の悲劇を体験した作家が混迷の世に問う長編」とありました。
ニューヨークのマンハッタン周辺を舞台に,色々な国籍の若者たちが交流する中で,自分のアイデンティティーを確認しながら,迷いながら生きていく,命の交流が描かれています。
自分の国と自分とは同じなのか…。あるときには,重荷に感じる国。でも,立ち位置として持っていたい国。タイトルにある「国」は,実際の国であり,心の中の国である。国は自分の一部であるけれども,じゃまな存在ともなる。
英語教室の講師が,国をめぐって言い争う若者たちに言う。
「こういう晩に,人を区別するような話はやめてもらおうか。そういうものを,背負わなくていいときもあるだろう。すくなくとも今夜はそうだ」
「シンプルなことだよ。まずは自分の人生を豊かにしなさい。遠くの大義より,近くの人を大事にしてやることだ」
竹島が,独島が,日本人が,アメリカ人が…と国を背負ってばかりいてはいけない。今,あなたの前にいる人間との出会いをどのように大事にしていくのかです。
本書には,日本からバンドをしようと思ってニューヨークに来た青年・拓人が出てくる。彼のバンドの曲名に「アルマジロ」と「恋歌」というのがあるらしい。これって,そのまま,著者のドリアン助川が所属していた「叫ぶ詩人の会」の楽曲ではないか。わたしのCDラックには,その叫ぶ詩人の会のすべてのCDがある。
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2016年刊。様々な国の生まれの人々がうねるように生きるニューヨークが舞台。日本との過去の戦争で傷付けあった各国の人との関係性。その生々しさに目眩がする。表現も生々しくも美しく、惹かれるものが有るのだが…。結局、どういう設定なんだろう? パラレルワールドに無自覚に悩まされている主人公? 「幻想的」と言えばそうかもだが、余りに激しく厳しい現実から平行世界にジャンプしちゃいました! 的な終わり方だ…。申し訳ないが、個人的には肩透かしを食らった気分。