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紙の本
盲信と敬愛は紙一重
2016/02/23 19:51
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投稿者:朝に道を聞かば夕に死すとも。かなり。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルからして、たいていの人は「いやいや、和田さん、あなたも一流で、たくさん本出してる学者でしょ?」っていうツッコミが本屋さんで繰り広げられていそうです。
最近の新書は、独特のタイトルがつけられていて、購買を誘う「一行で売る!」みたいなところがあるので、多く本を読む人にとっては「怪しい」と警戒してしまいます。
読後感は、まぁ随分まともだなと思いました。相続税に対して独特の意見をお持ちだったので、もっと極端なことを言いだすのかとハラハラしていましたが、あんまり肝を冷やすようなことは書かれていません。
たとえば、ジニ係数は貧困の指標として用いられますが、高齢者が増えると、ジニ係数も増えるのだから、このものさしは、経済成長期と経済停滞期のそれとはちがうんだから、ジニ係数のアップ=格差拡大と考えるのは早計と示しています。
「はじめに」で「ランセット」「ネイチャー」に意図的な不正がなくても、画期的研究でも8割がたが後に否定される結果になるってのを聞いて、トップジャーナルの説が好きな私は頭を抱えました。
で、あらゆる分野で学問が体系化し、私たちは無宗教なんだけど、学問を盲信する傾向が強いんじゃない?っていう主張が繰り広げられる本です。
学問の本質は新たな仮説を生み出すことであり、例えば医療問題でも欧米人のような多様性のあるモデルをそのまま日本に持ち込むより、平均寿命が高いのに老人医療費の低い長野県を参考にしたら?と述べます。
もし学問が宗教と一緒なら、さまざまな宗教があってもいいのですが、学問特有の問題として、帰納していこうという流れがあります。
私たちはその昔、頭のいい人は「くそインテリ」というくくりで見ていました。でも、冷戦が終わって、何かのモデルについて行くというスタイルがとれなくなったことがわかると、わからない問題が増えて、自分のぼんやりした考えを何かに託したくなります。
そう、学問はそれに応えてくれました。学問は丁寧に「こうなんだよ」と語りかけてくれます。しかし、私たちの人生の選択は「賭け」の連続です。ネットにこそ真実があるとか、自分の経験が全てとか極端に振れずに一つの情報源とか一つの権威にすがりつくのではなく、いろんな話を聞いてみたら?と問いかけます。
仕事や余暇で忙しい私たちはなるべくクリアな回答を希望します。そして、そのためには単純化、一般化がさけられず、投資と一緒で、リスクヘッジは大事なのでしょう。でもいろいろ言われるとかえって「わからん」わけです。
でも、この「わからん」なりに私たちは人生を過ごしており、わからんかったときの対処法の積み重ねをたくさん持っていた方が、この先のもっと「わからん」時代には免疫が少しはつくのかもしれません。
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