紙の本
吉田修一『橋を渡る』
2020/04/09 12:48
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投稿者:み - この投稿者のレビュー一覧を見る
【若干のネタバレを含む】
本書の大筋は、帯にも記されていることではあるが、端的に「いまなら、未来は変えられる。」である。各章ごとに、「不正義」に目を背けてきた異なる3人の人物について物語が語られ、最後の章になってようやく、点でしかなかった各物語がつながり線となる。
最初の3章、それぞれほとんどつながらない物語と、それとなく張られた伏線が、最後の章からエピローグにかけて見事にまとめられる。物語をまとめるために、悲惨な未来を用いるのはやや都合が良すぎるようにも思えるのであるが、その点を差し引いても、緻密な構成に目を惹かれる。
本書の著者は芥川賞を受賞した作家であり、現在は芥川賞の選考委員も務めている。このような事実を裏付けるほどの表現力には、当然のことながら、目をみはるものがある。複雑な心情表現や官能的な表現などは、文意を正確に描写しながらも、美しいリズムを損なわない。本書の前半3分の2くらいはいわば非常に平凡な物語であるが、それでも楽しんで読み進めることができるのは、著者の美しい表現力によることが大きいと思う。
メモをとりながら読んだりすると、より理解が深まっておもしろいのではないかと思う。再読したい一冊。
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まさか最後こうなるとは
2016/05/25 16:21
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投稿者:RIN07 - この投稿者のレビュー一覧を見る
それぞれの章で一見無関係な話が、最後にどこかでまとまるのだろうとは思ってましたが、まさかこんな形でまとまるとは思ってもみませんでした。飛び抜けてましたね。驚きました。
一つ一つのエピソードも、日常の中にちょっとした違和感を挟みつつ、全体的には静かに進行していくスタイルですが、それぞれちゃんと読ませてもらえるので、最後の驚きの展開まで飽きずに引っ張られます。
それにしてもこんな話も書けるんですね。著者の作品としては横道世之介や産業スパイものが好きですが、それともまた違うテイストながら読ませる実力はさすがだと思いました。
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議会のヤジと夫の不倫と週刊文春とが混ざって、さぞ(いい意味で)ゲスい内容かと思ったら、最終章で全然関係ない未来の話でガッカリ。
これはひどい。
唯一良かったのは、買ったのがブックオフで定価じゃなかったことくらいだ。
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最初の3つの章は、それぞれの主要人物の日常がただ淡々と描かれているだけ。
それが何かにつながることを期待して、つまらない気持ちを押し殺して読み進めた。
そしてそれらが4章目でどうなるのか…とわくわくしながら読んだが、正直がっかり。
70年後の世界にしては空想的すぎて。
もっとリアルなら楽しめたかもしれない。
結局最初の3章での小さな出来事が70年後はこうなりました、という内容なんだけど、あまり面白みがなくて。
インパクトがないまま終わってしまい、物足りなかった。
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帯コメントには「いまなら、未来は変えられる。大切な人の不倫、不正、裏切り。正義によって裁くか、見ないふりをするか。やさしさに流されてきた3人の男女が立ち止まるときー。新次元の群像ドラマ、ここに誕生。」
とありますが、まさにコメントとして書いてあるように、今まで吉田修一さんの作品を読んできた方からしたら新次元な作品で、思わず「えっ」となるような展開なのではないでしょうか。僕はそうなりました。
今年映画化で話題になるであろう「怒り」と同じように、断片的な物語が最終的にどのように一つにつながっていくのか、発散していく物語がどのように収束していくのか、気になりながら読み進めるのですが、最後の落とし方が今までとは異なる次元だったので、そこに戸惑いながらも、読み進めるときの緊張感や高揚感はさすが吉田修一さん、というものだったと思います。
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3章までは悩ましげな群像劇、4章でまさかのSF?
酒と米とサインの名前、象徴として捉えていいのか・・・
難解な小説かもしれません。
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【いまなら、未来は変えられる!】不倫、不正、裏切り――。正義によって裁くか、見ないふりをするか。読み終えたとき、あなたの生き方が変わる渾身の720枚!
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う〜ん。思ったよりも…レビューみて、買って始めの方は、只の人間ドラマ?みたいなのが各章に分かれていて、つまんないなと流し読みしてたけどこれもレビューから309ページくらいから話が進んでいくって書いてあったのでなんとかたどり着き。確かに、はぁーそう繋がるのね!って思った。けどまあ私がアホなのかそこまで感動しなかった。しかし、本当に最後の最後で良い兆しで終わったので救われたかな
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春、夏、秋の3つの日常の短編が冬の近未来の章で一気に繋がる。
今の選択が未来を創る。いつも正しい人々が間違った事も正しいと思い込んで、間違ってると認められなくて、あの近未来が出来上がったんだろうな。実際の未来はもっとヒドイかも。
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「春」章まで読みましたが、つまらない。
この先面白くなるのか?と思いつつも
中断させていただきます。
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今の選択が未来を創るし、過去の選択が今を創っている・・・って、そりゃそうなんですけど、こうやって不穏な雰囲気バリバリの小説で、じ~~っくり迫られると、なんだか怖くなっちゃいますねぇ。。。
とはいえ、選択する自由があるってことにも感謝しないとですね。
思いがけず「ええっ!そっちに行っちゃうわけ!?」という苦手な展開にまんまと導かれてしまいましたが、響と凜は、なかなか素敵なキャラでした♪
何が正しいかってのは難しいですよね。みんな自分が正しいと思っちゃってたりするわけで、常識や法律でさえあてにならない場合もありますからねぇ・・・。
とか、いろいろ考えると「今を楽しく!今できることを、できるだけ(やりたいだけ?)やればいいや~!」と、やっぱり開き直って生きるしかないな、と思う次第でありますw
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大切な人に裏切られた人達の物語。
誰が、どう、『橋を渡ったのか』。
いろいろと、想像できる話ですが、何故、突然70年後なのか?
春夏秋の三つの物語は、タイムスリップした70年後の冬で繋がっていたということですね。
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春 夏 秋と興味深く読みましたが
冬は別の作品にすればよかったのでは・・・
酒や米 缶詰は未来からの彼らのサインなの?
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都会議員の夫とその妻。夫は幼馴染の会社社長から頼まれて入札金額を教えて賄賂をもらっているのを見る。夫を守ると言いながら、週刊誌にタレコミ。
婚約者を絞殺してしまう男。失踪する。
明良=妻・歩美との二人暮らしだったが、実姉の息子孝太郎を預かることになった。しかし、孝太郎の彼女が子供を身籠ったことで平和な家庭は一変する。
最終章の未来では、この時、生まれた子が登場
篤子=夫・息子と三人暮らしで平穏に暮らしていた彼女だったが、都議会議員である夫が賄賂を貰っている場面を目撃する。苦悩の末彼女は家族の生活を守るために不正に目を瞑ることを決心する。
謙一郎=テレビマンの謙一郎は結婚を控えた彼女がいたが、その彼女は以前の不倫相手のことを忘れることが出来ない。そんな中で彼女から結婚を考え直したいと言われた謙一郎は逆上し彼女の首の手をかける。
響=物語は大きく変わって70年後の日本に。サインと呼ばれるクローンのようなロボットと共存する世界の中、サインである響を軸にストーリーが進んでいく。
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★★★☆☆ 2014~2015年に実際に起こった事件・時事を拾いながら物語が進みます。
淡々と、しかし不穏な空気をまといながら進む3人の主人公の物語が、未来に大きな影響を与えていきます。
冬の章で突然のSF展開になったので面喰らいましたが、なるほど過去と繋がっているのだと納得。
ラストを知れば3人の陰鬱な日々の描写に意味を見つけられます。
ただ読み切れなかった部分もあり、後味は微妙です。
物語の中では未来は変えられたけれど、実際はそうはいかない。響や凜のような存在を私たちは作ってはいけない。