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みんなのレビュー9件

みんなの評価3.4

評価内訳

9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本

足立紳は「来ている」。

2016/04/06 08:09

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る

文芸評論家北上次郎に「中年男性なら共感必至の小説」と言わしめた脚本家足立紳の作家デビュー作である。
 足立紳について少し説明すると、1972年生まれ。あの相米慎二監督に師事し、助監督や脚本を勉強してきた。第1回「松田優作賞」を「百円の恋」で受賞、どうもそのあたりから運がつき始め(あるいは才能が開花)、同作で「菊島隆三賞」「日本アカデミー賞優秀脚本賞」を受賞。一躍注目を集める脚本家になった。
 そして、遂に作家デビューである。すごい。
 しかし、このように脚光を浴びだしたのは最近の話で、それまではどうしていたかというと、おそらくこの小説の主人公柳田豪太のような売れないシナリオライターであったのだろう。(違ったら申し訳ないが)

 シナリオライターで生活ができるという人はホンノ一握りしかいないという。別にシナリオライターだけではなく、作家もそうだと耳にしたことがある。
 この国の人口が1億人だとすれば、こういう仕事を生業にしている人でそれ単独で生活できている人は一握り以下であることは間違いない。
 豪太のように年収35万(年金生活者以下ではないか)という人の方がきっと多い。
 ではどういう生活をしているかというと、豪太のように働き者の奥さんの稼ぎでなんとか生きていくしかない。
 まさに乳房にとまった蚊の如くである。

 そんな豪太が奥さんと娘を連れて香川まで取材旅行に出かけていくのが、この小説のメインストーリー。
 随所に豪太の情けない、しかし切実な話が散りばめられている。
 特に女房とのセックスのハードルが高くなっていることに気づく豪太の、それでもとばかり奥さんの豊かな胸に迫る場面では、つい応援したくなる。

 作品全体は中編小説に位置づけられる長さだが、やはり豪太のみじめさが終盤やや鼻につく感じがした。
 できれば、うんと短くして短編連作の方がもっと鋭くなったかもしれない。
 でも、こういう作品が直木賞の候補になれば面白いのだが。
 まさか、いやありえる。
 何しろ今足立紳は「来ている」。

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2016/04/21 08:48

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2016/05/13 01:26

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2016/11/07 23:00

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2017/01/25 22:58

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