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表題作「忍ぶ川」を含む7つの短編集である。「驢馬」の1編だけ満州人の留学生の差別を描いた作品で、他の6編は「忍ぶ川」に連なる作品と捉えてもいいのではないだろうか。
「忍ぶ川」は昭和初期の恋愛小説。不幸な過去を互いに持ちながらも出会い、果てに結ばれるという目新しいストーリーではないが、情景や心情が読み手に見事に投影されきて、胸が熱くなる。改めて微妙な加減を表す日本語の凄さと平明な言葉でここまで読み手に迫ってくる、三浦氏の文筆の素晴らしさを感じることができた作品だった。
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夫婦の出会いから結婚、そしてその後までを描いた作品。
男性目線でありがちな
初々しい妻→出産を経て強くなる妻→妻と言うより母
「出会った頃に戻りた〜い」みたいな。
リアルに描かれていて 確かにあくびが出た。
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短編集。
「忍ぶ川」「初夜」「帰郷」・・・自身の体験をもとにした青春小説。
「団欒」・・・上の設定を少し変えた、少し暗い話。
「恥の譜」「幻燈書集」・・・自分の家族をもとに、兄弟が何人も不幸な人生を送る一家の話。
「驢馬」…太平洋戦争中、日本に留学した満州人の話。
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表題作の「忍ぶ川」と「初夜」「帰郷」はある男女の出会いから、夫婦となったその後までを描いたもの。陰気になりがちなストーリーを寸でのところで明るく爽やかに描いていて、とても健全な印象だ。
この3編と「恥の譜」「幻燈畫集」は作者自身がモチーフとなっている。特にあとの2編は、5人もいる兄姉のうち4人が尋常でない亡び方をした、いわば亡びの血というべきものに対する恐怖や恥を描き、前半の3編とは様相を異にしている。こころなしか太宰の「晩年」を思わせる短編集だ。
最後の「驢馬」だけはモチーフもまったく違い、満州人留学生の目を通して見た大戦下の日本を描く。ちょっとおぞましい。
☆芥川賞
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図書館で借りたが、一度なくして大騒ぎだった。見つかったが、読み始めるとあっという間に読み終わった。深川をあまり描いていないのに、雰囲気にものすごく下町らしさが表れていた。(雪国とマッチしていた?)
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主人公が因縁めいた血との訣別を果たすあたりの心境を読むと、とても力が湧く
「囚われる」ということが生きていく上で必ずしも意味を持たないとわかったとき、人間はそこから抜け出せるんだと思う
生と死は難しく考えることではなく、こういう自然な繰り返しの上に成り立っているのかも
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図書館で。この作品で芥川賞取られたんですね。
昭和初期のお話と言うことをあまり意識しないで読み始めた為、なんとなく最初から違和感を感じました。忍ぶ川だけならこういう純愛話も良いね、で終わった気がするのですがその後を読んでしまうとあまりいただけない感じが。
なんというかこんな理想的な奥さんいないんじゃない?みたいな感じがします。大体夫の方が子供がいらないと言っておいたくせに。奥さんもサバサバと掻把しましょうって辺り違和感が。喧嘩も口論もしないでその結論ですか?女性ってそういうところもっと悩む気もするんですけどね。大体奥さん側は子供欲しがってるわけだし…
という訳で無職の彼を否定しないで意見もせず、別居中は旦那実家で義父母姉と仲良く暮らし内職で生活費も稼いでくれる男性の理想のような奥様すごいなあと思いました。
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第44回(1960年下半期)芥川賞受賞作。この回はなかなかに豊作で、候補作の中には倉橋由美子「夏の終り」や、柴田翔「ロクタル管の話」などもあった。ただし、選考委員のほとんどは本作を推している。作品の文体は私小説風であるが、そのようなタッチを意識して書かれた小説なのだろう。したがって、年代以上に古いタイプの小説という感じを受ける。第44回といえば、安部公房や大江健三郎よりも後なのだから。また、小説全体は、モノトーンに覆われ、ハッピーエンドであるにもかかわらず、ヒロインの志乃には薄倖そうなイメージが付き纏う。
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【本の内容】
貧窮の中に結ばれた夫婦の愛を高らかにうたって芥川賞受賞の表題作ほか「初夜」「帰郷」「団欒」「恥の譜」「幻燈画集」「驢馬」を収める。
[ 目次 ]
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8月末、79歳で死去した作家の三浦哲郎さんには伝説がある。
30年ほど前、小説の原稿を編集者がなくしてしまい、再度書いた。
間もなくして元の原稿が出てきて、編集者が照らし合わせたところ一字一句同じだった――。
真相は、書き直す直前、元の原稿は見つかっていた。
クビを切られることを覚悟して謝りにいった編集者に、「見つかったのは残念。句読点すら同じに復元する自信もあったのになあ」と語った三浦さんの言葉が誤伝されたらしい。
とはいえ、伝説には説得力があった。
「小説は文章」と思い定め、とことん推敲する短編の達人だったからだ。
妻との出会いから結婚までを描いた初期代表作「忍ぶ川」も文章が端正で、〈読むたびに心の中を清冽な水が流れるような甘美な流露感をたたえた名作〉である。
1988年の「文芸春秋3月号」に発表された読者アンケート「思い出に残る芥川賞作品」では、「太陽の季節」に次ぐ第2位。
新潮文庫は86刷162万3000部のロングセラーになっている。
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[ 参考となる書評 ]
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7つの短編集。6つは連作、でいいのかな。
『忍ぶ川』数奇な運命の6人の兄弟姉妹の末っ子が
ある女性と付き合って結婚するまで。
結婚式での両親がとても嬉しそうで微笑ましい。
連作はその後の生活と過去を綴ったもの。
昭和のつつましく暮らしている夫婦が清々しい。
『白夜を旅する人々』(1985年)を以前読んでいたので
その印象が強くスピンオフのように感じつつ読みました。
『白夜を旅する人々』は6人の兄弟姉妹の上の5人
(メインは次女、長男、長女)
『忍ぶ川』は末っ子が登場人物。
末っ子が上5人と比べると普通の人なので
『白夜を旅する人々』のほうがインパクトはあった。
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表題作は、芥川賞受賞作。
明治から昭和戦前までの古臭い空気をまとった様な作風だが、本作はそれがしっくりとして良い。メロドラマっぽくもある。
「初夜」なんかも、続作に当たるのだと思うが、とても良かった。ただ、それまでで、他の短編は、「忍ぶ川」に散りばめられた要素を主題に書き下ろしたためか、味気無いというか、既視感に近い引き伸ばしを感じた。
そのためか、本作で独立した短編「驢馬」は、とても良かったと感じた。
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ユタを読んでおもしろかったので、他の作品も読んでみたくて読みました。
寒い地方での暮らしや奥様との様子が小説の中から窺える感じでした。
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表題作だけ読む。お互いの不幸や苦労を乗り越えた上でのハッピーエンドが心地良かった。こういうカップルにありがちな、依存心も見当たらず、明るい未来を想像させてくれる。
ただ一点、主人公の口説き方が拙速過ぎて、『モテ力』や『婚活』の参考にならないことは、文学上の重大な瑕疵と言わざるをえない(嘘です…)
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テーマは暗いのに、人間の強さを感じさせる短編小説群であった。日々の生活の厳しさに家族で向かい合いながら、一方で、自殺してしまった家族の存在が負い目となる。豊かさの中で、共同体や家族の崩壊が進んでいる二十一世紀の日本との違いが際立っていた。
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作者三浦哲郎の人生を下敷きにした私小説。
6人兄弟で4人が自殺か失踪をとげてるんだから、どうしたって話は重くなりそうなものだけれど、この作者の文章は、雪の日の朝のように爽やかだ。
妻との出会いと結婚を主に描いているんだけど、この奥さんがまた良い女なんだな