紙の本
ぬきさしならない言葉にあふれた本
2016/06/04 22:17
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
子どもにとって絵本や物語はどんな意味をもつのか。
この本の中で長田弘さんは明確にこう記しています。「世界のつくり方の秘密を子どもたちに伝える、方法としての本」だと。
「世界のつくり方」という獏とした言葉に強い意志を痛感します。
この世界に生まれてきた子どもは、すでにある世界を生きるのではなく、自分の世界をつくっていく。それはいうならば個性です。
絵本や物語をそのことを伝えてくれている。
では、おとなにとってはどうなのでしょう。やはり同じことかもしれません。常に新しい世界をつくっていく、その方法の一つとして、私たちは本を読んでいるのです。
この本は2015年5月に亡くなった詩人の長田弘さんが絵本について綴ったエッセイをまとめたものです。それに酒井駒子さんがすてきな挿絵をつけています。
日本の絵本も紹介されていますが、海外の絵本の方が多いかもしれません。読書ガイドとして読むのもいいと思います。
それ以上に読書論あるいは絵本論として、長田さんの言葉の一つひとつが心に響いてきます。
いくつか紹介します。
「絵本は、本を読みたい大人にとっても最良の本」。
「読書とはー本の空白のページに、言葉がまるで魔法のようにあらわれてくること」。
「本というのは、場所なのです。あるとき、じぶんにとってのぬきさしならない言葉に、思わずでくわしてしまう場所のこと」。
特に最後の文章はこの本にぴったりです。
この本の中には「ぬきさしならない言葉」がたくさんひそんでいます。「思わずでくわす」どころか、ここにも、そこにも、あそこにも、と見つけることができる「場所」です。
それには「ぬきさしならない」ものを持っていることが肝心かもしれません。
何かを発見する時には、見つけたい何かを持っていることが大事だと思います。
特に絵本については、おとなでもたくさんの発見があります。そのことを長田さんはこの本の中でたくさん教えてくれています。
長田弘さんはもういません。
けれど、長田さんが残してくれたさまざまな詩やエッセイ、そしてこの本のように絵本についての文章はこれからも残り続けると思います。
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長田さんが東京新聞や雑誌に連載していたほんの紹介のコラムをまとめたもの。
主に絵本や児童書が中心だが、大人向きの本や絵本や児童書のガイドブック的な本もあります。
読んだことのあるものは「そうそう、そうなんだよね」とにんまりしたり、読んだことのないものは読みたくなってくる。
でも残念なのは、取り上げられた本の書影がないこと。「入手できないものも多いため」あえて載せなかったとの編集部のコメントがありますが、そういうことではないのでは?絵本などは特にそうですが、絵の雰囲気で手に取りたい気持ちは倍増します。長田さんが書きたかったことも、表紙の絵から理解できたりするものです。掲載の許諾を得ることは大変かもしれませんが、ぜひとも載せてほしかった。
駒子さんの挿絵は、確かにかわいいけれど、取り上げた本を表すものではないし、無いほうがよかったなと思うページもあった。
絵本も出版しているクレヨンハウスなのですから、そこは努力してほしかったなあ。
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詩人、長田さんの選書紹介文。
というよりも素敵な絵本にまつわるお話。
知ってる絵本が出てくると嬉しくなるけれど、
それ以上に、優しく温かい言葉がたくさん。
「絵本は本を読みたい大人にとっても最良の本なのです」
哲学的なお話も、大好きな長新太さんのことも、戦争のことも
たくさんたくさん、小さな世界にはいろんなことが閉じ込められている。
本当に、本当に。
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◆きっかけ
Amazon 2016/11/19
◆感想
い図。いまいち入っていけず気になったところこみざっと読み。2018/2/16
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【図書館】長田弘さんのお気に入り名篇。この本が出た頃から読みたい本に登録していた。値段も結構するので、図書館で借りるしかないなと思っていた。そして今日、図書館の書庫から出してもらって借りてきた。読んだことのある本、読みたいと思った本、素敵な本の紹介本だと思います。これは持っていてもいい本だ!
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詩人の長田弘さんが紹介する子ど向けの本です。
絵は酒井駒子さん。
東京新聞・中日新聞が連載「小さな本の大きな世界」(2004年4月~2015年5月)とUCカード会員誌『てんとう虫』連載「子どもの本のまわりで」(2005年4月号~2006年3月号)に一部修正を加えて編集したものだそうです。
さすが長田弘さんの紹介文はプロの仕事です。
私もちょうどこの本に載っている酒井駒子さんの絵本『BとIとRとD』をレビューしたばかりだったので「絵と文の追いかけっこ」と評した紹介文はプロはこんな風に書かれるのかとため息をつくばかりでした。
長田弘さんは『読書からはじまる』という著書の中でも大人こそが子ども向けの本を読むことの重要性を説いていらっしゃるので、なるほどと思いました。
酒井駒子さんの挿絵はうさぎが本を読んでいる(持っている)絵です。
紹介されている本は興味深いものばかりでしたが、その中で私が読んでみたいと思った本を以下にメモさせていただきます。
・まず、本があること…『エリザベスは本の虫』サラ・スチュワート文・デイビット・スモール絵
・うつくしい本が必要…『ヴァージニア・リー・バートン「ちいさいおうち」作者の素顔』バージニア・ユルマン
・心の木陰をもとめて…「野鳥記コレクション」(全三巻)(CD)
・まなざしを変えるちから…『あっおちてくる ふってくる』ジーン・ジオン
・ゆっくりと、だんだんと…『本の中の世界』湯川秀樹
・ヴァーモントの森…『夜明けまえから 暗くなるまで』ナタリー・キンジーーワーノック
・世界の読み方の魅惑…『白川静さんに学ぶ 漢字は楽しい』小山鉄郎 白川静
・世界が失ったもの…『神なるオオカミ 上・下』唐亜明
・もう一つの世界から…『ミニ・サウルス ズィンクレア・ゾフォクレス』フリーデリーケ・マイレッカー
・もう一つの時間…『絵本処方箋』落合恵子
・「わたしのために本を読んで」…『ぼくのブック・ウーマン』ヘザー・ヘンソン
・「一生もの」の子どもの本…『いまファンタジーにできること』アーシュラ・K・ルニグウィン
・アンソロジー(詞華集)…『キャロライン・ケネディが選ぶ「心に咲く名詩115」』キャロライン・ケネディ
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雨の日、葉に滴る水滴のように静かな落ち着いた表現。
児童文学案内も水先案内人を詩人が務めるとこんなにも美しくなるのか
図書館でこの本を片手に、紹介されている絵本を読んでいく幸福。