紙の本
金日成と亡命パイロット
2021/10/15 21:02
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投稿者:雄ヤギ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書で取り上げられているのは、朝鮮戦争直後にソ連の最新戦闘機Mig-15に乗って亡命した盧今錫の人生である。戦前の朝鮮半島北部に生まれ、日本の管理する鉄道の技師の家庭に生まれた盧氏は金日成が北朝鮮の実験を握ると、母がキリスト教徒で、父が日本の会社で働いていたという事実を知られると酷い待遇におかれてしまうため、何とかして憧れの国アメリカに行きたいと考える。その願いをかなえる為に戦闘機のパイロットになりという熱意と努力がすごく伝わると共に、初期北朝鮮の歴史についても知る事ができてよかった。
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アメリカに亡命した元北朝鮮パイロットの物語を通して、金日成やスターリンが何を企んでいたかを知ることができた。狂人が国家を恣にしていた時代の北朝鮮とソ連では、どれだけ多くの人々が犠牲になったことか。北朝鮮では強制収容所に収監されている人がいることが分かっている。いまでも命を賭して脱北が行われている。金日成、金正日、金正恩は三人とも狂っているとしか言いようがない。彼らのもとに生きる人たちは本当に悲惨だ。
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【戦い戦う人,逃げ戦う人】なりふり構わず「偉大なる首領」への階段を駆け上がる金日成と,17分の飛行で脱北に成功した北朝鮮パイロットの人生を相互に描いた作品。立場も生まれも異なる2人が,1つの社会でいかにして振る舞ったかを徹底的な取材を基にあぶり出しています。著者は,『ワシントン・ポスト』や『エコノミスト』で活躍したブレイン・ハーデン。訳者は,翻訳家の高里ひろ。原題は,『The Great Leader and the Fighter Pilot』。
脱北エピソードのパートが特に面白い。どのように脱北するかというスリリングな展開もそうですが,一北朝鮮パイロットが垣間見た創立当初の北朝鮮という視点から読んでも,興味深い記述が多かったです。もちろん,度重なる政治的な危機を金日成がどのようにして乗り切ったかの部分も読み応えありです。
〜彼の射撃の腕は人並みだった。拳銃を抜き,ボディーガードたちに撃たれる前に金日成に数発打ち込むことは可能だと思った。しかし彼は拳銃に触らなかった。手っ取り早い正義を求める青年期の衝動を実行に移すには,彼はあまりにも長く我慢していた。〜
タイトルから想像する以上に見事な一冊☆5つ
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2022.4.28
北朝鮮に関する本を読みたいなと思ってたまたま図書館で手に取った本だったが、非常に面白かった。
タイトルの通り、金日成と亡命パイロットの朝鮮戦争、その後を書いている。2人が直接交わることはほとんどないけれど、同じ頃どんな状況だったかということが交互に書かれているので読みやすい。
なぜ多くの社会主義国の中で北朝鮮だけが孤立していったのか、今につながる前兆を少し理解できた気がする。
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2016年出版。
朝鮮戦争直後に、北朝鮮が戦争で主に使用していたミグ15に乗って38度戦を越え亡命した盧今錫についてのノンフィクション。
盧は植民地時代に日本の企業で働いていた父のおかげで、かなり裕福な生活を送っており、共産主義を憎悪していた。何年にも渡って計画を練り、ついに亡命を成功させる。
本書は、朝鮮戦争それぞれの時期に置かれた北朝鮮の状況と金日成の行動、そして同時期の盧の視点や状況が並列して書かれている。そのため、盧がなにを思い、そしてどのような状況に置かれて亡命という決断を実行したのが非常にわかりやすく、興味深い。
朝鮮戦争中の金日成の行動や、それを巡る中国、ソ連の動きについても比較的詳しく書かれている。この本の面白い点は、ソ連が北朝鮮のパイロット養成を受け持っていたこと、朝鮮戦争にも自国のパイロットを参加させていたが、アメリカは戦争の拡大を避けてそれを無視していたことなど、大国間の思惑にも触れていることだ。