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心臓に対する主に外科的な治療技法の歴史。
人に焦点を当てた章立てになっており、各章毎に主役として働いた医療者がスポットを浴びる。
最初の心臓手術は1893年だそうなので、その歴史はごく浅い。
・最初にカテーテル検査を(自分を被験者として)行なったフォルスマン
・人工心肺を開発したギボン
・心臓移植の一番乗りをめぐる争い
「死」の定義を心臓死としている国が多かった当時、あいまいな定義しかなかった南アフリカのバーナードが一番の名誉を担った。しかし心臓移植を受けた患者の予後は極めて不良で、受けないほうが長生きしたのではないかという批判も多かった。シクロスポリンの発見によって拒絶反応がおきにくくなり、長期の予後も大幅に改善されたが、カテーテルの隆盛によって心臓手術そのものが減少傾向にある
・ドゥベイキーによる人工心臓の開発
動力源の問題が大きかった。ペースメーカーとは違い、そこそこのエネルギーを長年にわたって供給しないといけないためプルトニウムの使用が研究されていた
・エジプトのミイラを調べてみると、現代人と同じ頻度で冠動脈硬化が起こっている。特定の食習慣に結びつくものではなく、老化に伴う現象だと考えられている。冠動脈のプラークはコレステロールなどの脂肪質ではなく、コレステロールがマクロファージなど免疫細胞に酔って攻撃された残骸。
・スタチンを発見した遠藤章
「医薬品の開発はくじとは違う。くじには必ず景品があるからだ。医薬品を発見する研究には、そもそも景品があるのかどうかさえ誰にもわからない」
実際は、コレステロールのレベルは食事によってほとんど左右されない。その人が持つ酵素のレベルに依存している。キーズ夫妻という研究者が昔提唱したコレステロール神話がまだ生き残っているが、単純に摂取量を減らせばよいというものではない、
LDL,HDLというのはコレステロールのタイプではなく、コレステロールやトリグリセリドが乗るボートのタイプ。HDLに乗っているコレステロールは肝臓で分解され胆汁に排泄されやすい。飽和脂肪酸を取るとLDLの割合が大きくなる。
・ファロー四徴症によるブルーベイビーの手術は1944年に初めて行なわれた。心臓手術の多くは寿命を少し伸ばすだけなのに対し、これは3−4歳の子供に一生を与えることができた。
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本書は心臓のストーリーを語る。なぜ心臓は、他の身体器官より壊れやすいのだろうか? 心臓の故障のストーリーは太古の時代の端を発する。すなわち、私たちの祖先が単なる単細胞生物だった何億年も昔の時代にまでさかのぼる。だが、心臓の科学のストーリーははるかに新しい。たった6000年前に始まったばかりなのだから。さらに言えば心臓の修理という点になると、治療のために生きた心臓に最初の切込みが入れられた19世紀の末まで待たねばならない。この切込みは次々と新たな種類の切込みを生み、やがて母が胸部の皮膚に入れられたものに近いナイフの切込みへと発展する。また本書は、心臓の謎を語る。この謎は人間の本性に関わるものでもあり、ようやく最近になって解かれ始めたに過ぎない。
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前半は心臓医療の話で、後半は進化論的な心臓の話。
心臓治療には多くの人々が関わってきたことが分かる
あふれる情熱で突き進む人、クレイジー(自分の心臓にカテーテルを入れるような)人、あるいは失敗した人などとにかく多くの人が心臓治療の道を拓いてきた。
心臓だけはどうしても治療が難しいためにその発展はここ100年ほどである。
なにしろ心臓を止めたら5分も持たずに死んでしまう。
人工心肺というのが実に画期的だったことがよくわかった。
後半はなぜ心臓に疾患ができるのかに着目している。
そこでは他の動物の心臓と比較したり、進化論的発想で迫ってみたりと毛色が変わって面白い
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☆信州大学医学図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB21230779