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途中の偶然にもほどがある出来事で少し興ざめした。
しかし、それを補ってもあまりあるほどのラストは本当に良かったと思う。
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蒔野聡史と小峰洋子という互いに40代に差し掛かる男女の恋愛。本作で平野啓一郎初読。
本流は40代の男女の恋愛にありつつ、国際問題、政治・社会問題や文学・音楽といった芸術関係等々をこれでもかと配置することで非常に立体的な印象のある作品。この手の作品は、無知な僕から見ると知識のひけらかしに思えて「鼻持ちならねえ」みたいな感想に辿り着きがちなんだけど、本作は全くそんなことがない。それは、繰り返すけど本作の本流はあくまで男女の恋愛にあり、40代のいい大人が初対面で恋に落ちてしまうその様を、「直感」だとか「運命」みたいな安易な言葉で表現したって全然許されるはずのところを、二人の感情をしつこいくらいに丁寧に、胸焼けするくらいに流麗に描いてくれる作者の筆力が、膨大な知識を単なる装飾とした恋愛小説に仕上げていてくれるから、ということなんだと思う。
読み終わった今でも、僕はこの二人の恋愛は「運命」としか言えないものだと思っている。それは運命に対する僕の個人的な考えから出てくる感想であって、人生は「なるようにしかならない」くらいの考えしか持っていない僕には、この二人のそれぞれの運命とそこから沸き立つ感情が、お互いのライフステージを伴ってここまで著しくリンクする奇跡というのがとてもじゃないけど許容できない。許容できないけど目の前に立ち現れることは神の思し召しとでも位置づけるしかなく、そういう意味でこの二人の出来事は僕にとっては「運命」となる。
そんな運命的な出来事を、置かれた状況も立場も違う男女を使って描き切る作者が凄すぎる。この二人にはモデルがいると序文で言ってるけど、「嘘だろ絶対」と未だに思っている僕が居つつ、本作には「お前には分からんよ」と僕には想像し得ない事実を突きつけるような説得力と、何より事実であってほしいと思わせる魅力に溢れている。
物理的な離別の時でさえお互いの感情は非常に近いものがあったと思うので、本作は断じて「悲恋」ではなく、なんなら高尚な「純愛」だと言い切っちゃってもいいくらいに思っているけど、それでもやっぱり、心身ともに二人には幸せになって欲しいと願わずにいられない程度には、悲劇的な話だった。キーマンとなる三谷ほど、自分の生き方に確固たる信念を持っているわけではないけど、あの嘘のメールを送ってしまう心境にはとても共感してしまって、心を揺さぶられてしまった。意識的にか無意識的にか、三谷の取ってしまった行動に近いことって僕も絶対やってきただろうなと、自分と三谷を切り離して見ることができなくなってしまった。主役の二人がある意味近寄りがたい人間に思われるだけに、三谷に感情移入してしまう人ももしかしたら結構多いんじゃないかな、と思う。
読了後、揺れっぱなしの気持ちのまま序文を読みなおして、さらに気持ちが揺れ動いた。決して長くはない文章の中にこの二人の恋愛の物悲しさが凝縮されている気がして。余計な断りとして、わざわざ「あとからここに添えられたものである」と記した作者も、もしかしたら今の僕と同じような気持ちでこれ書いたのかもしれないという予感がして、なんとなく作者に対して親近感が湧いた。
揺れっぱなしの気持ち���余韻に浸るのも悪くはないんだけど、今はあえて他の作品を読んで気持ちを上書きしてしまいたい。僕は日頃全く読書をしない人間だが、読書の愉しみというのはこういうことでもあるのかもしれないと気づかせてくれたことだけでも、僕にとっては本作を読んだ意義がある。とても辛くて、よい作品だった。
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平野啓一郎、文体があまり好きじゃない
三谷がふつうに悪いヤツでしょ
ふたりのやりとりとかラストとか 想い合う様子、描き方は良い、かなあ
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物語自体より、文章が印象的です。デビュー作の『日蝕』もそうでしたが、平野さんの文章がとても好きです。
『マチネの終わりに』の文章は、かなり気取ってます(笑)鼻に付く直前。
でも、昔読んだヨーロッパ作家の名作集の古っぽい翻訳を思わせる文体。それが登場人物やシチュエーションにマッチしています。
大人の恋の物語。
叶わなくともジンワリ響きます。
最終的に叶っても、あの2人に生活感が出ちゃったら嫌だから、あの終わり方でよし。
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40代の恋愛がテーマ。
主人公の二人とほぼ同世代なので、パートナーへの愛は冷めても子供への愛情は冷めない、とか、心というかメンタルが思わしくないときは、刺激よりも癒しのほうが必要なのはそうだろうな、とか、やっぱり人生で一番好きだった人のことは忘れることはできないなぁ、等々、理解できるところは思った以上にあった。
でも、この主人公の二人、美しくて才媛な女と、天才ギタリストの男という、あまりにも完全すぎて嘘っぽいというか、一昔前の話っぽく感じてしまった。
まぁ、そのせいでいらぬ嫉妬を受けるわけだし、つまらぬ横やりが入って遠回りをするわけですが。
二人が完全なので、ギタリストの妻になった女のした行為にあんまり苛立たなかった。
正直、この二人が感情的に怒ったり、苛立ったりしている様子が見たかったかもしれません。
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美しい文章でした
美しい恋愛でした
もどかしいけれど
音楽の素養がない私はちょっと近づけない部分もあったけれど
住む世界も想いも広がっていて憧れました
美しいラストでした
マチネの終わりに
でも共感しにくかったな
≪ コンサート 心の余韻 そのままに ≫
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内容紹介
天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)。深く愛し合いながら一緒になることが許されない二人が、再び巡り逢う日はやってくるのか――。
出会った瞬間から強く惹かれ合った蒔野と洋子。しかし、洋子には婚約者がいた。スランプに陥りもがく蒔野。人知れず体の不調に苦しむ洋子。やがて、蒔野と洋子の間にすれ違いが生じ、ついに二人の関係は途絶えてしまうが……。
芥川賞作家が贈る、至高の恋愛小説。
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恋愛小説というよりも、現在、未来によって過去に意味を与えられることへの希望を感じさせるふたりの生き方に感動しました。
何故、と泣きたくなるような事も、後から振り返れば、「あの時の壮絶な苦しみのがあったからこそ今の自分がある。」という価値を見出だして、感謝の気持ちにも変えていける。
これまで自分が漠然と信じてきた「ムダなことなんてひとつもない」というのは、そういうことなのだと繋がった気がします。
生きる意味と向き合い続けた蒔野と洋子が美しかった。
蒔野のスランプとその後のより色彩豊かな人格、音楽へのステップアップは、今の自分の闘病生活とも重なり励まされるものだったし、洋子の視点での蒔野のニューヨークでの演奏の描写には思わず涙が出ました。
大げさかもしれないですが、
私自身、こうやって生きる意味を考えていける歓びに涙が出て、心が震えるほどの感謝を感じました。
結局単行本も買いましたが、最初に読むきっかけになったKindle Unlimitedには感謝!
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大好きな平野さんの最新作です。ファンなのに読むの遅くなっちゃった。
平野さんの作品は恋愛ものじゃないほうが好みなんだけどな・・・なんて思いながら読み始めましたがすぐに撤回!
深い深い感銘を受けてしまい、この人のファンでよかった、やっぱり素晴らしい小説家だ、とあらためて思い、この作品は私の中で今年のナンバーワンです。
今までの作品よりも読み易く、けれども相変わらず知的好奇心をくすぐられ、そしていつもの美しさや繊細さは顕在で、深く考えさせられ・・・もう、なんと表現したらよいかわかりません。
具体的には難民問題や自爆テロ、被ばくなど社会的テーマを扱いながら、そこに音楽という芸術を絡めた恋愛小説で、そこには哲学を感じ、未来と希望がみえるのです。
作品の構成としては、基本に忠実な「起承転結」から成るきわめてオーソドックスな形なのに全く飽きることはありません。
エンタメ小説のような、起承転転転、みたいなことをしなくても読ませるんですよね。本当に素晴らしい。
今回読んでいて一番胸に沁みたのは「未来は過去を変えられる」ということ。この作品の主題でもあるのではないでしょうか。
人は、未来だけを変えられると思い込んでいるけれどそうではない、未来の行動によって過去の印象も変わりつづける、という考え方です。
日ごろから「分人」を主張される平野さんの、その考え方の延長にあるものだと思います。納得感があり、またひとつ重要なことを教えてもらえた気持ちです。
ああ、本当によい作品。読んでよかった。
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ギター演奏家の蒔野聡史とジャーナリストの小峰洋子の5年半の歳月の物語。一気読みする大人の恋愛小説。メモ。
(1)人は変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は未来は常に過去を変えてる。変えられるとも言えるし変わってしまうとも言える。
(2)いい歳して知的でない女と寝てしまうと明け方惨めな気分になるよ。
(3)恋の効能は人を謙虚にさせること。年齢と共に人が恋愛から遠ざかってしまうのは愛したいという情熱の枯渇より愛される為に自分に何が欠けているのかという十代の澄んだ自意識の煩悶を鈍化させてしまうから。
(4)わたしと結婚して子供を育ててって生活を、蒔野さん、現実的に考えられる?それがこの関係のための正しい答えなのかしら?
(5)孤独というのは、つまりは、この世界への影響力の欠如の意識だった。…自分の存在が他者に対して全く影響力を持ち得ないということ。持ち得なかったと知ること。
(6)みんな自分の人生の主役になりたいって考える。それで苦しんでる。
(7)尊ばれない事は忘れ去られる。これは我ら人類のもっとも人類の美しい掟の一つだ。(アラン)
(8)明晰さとは太陽にもっとも近い傷だ。(ルネシャール)
(9)どんな方法でもいいから、彼の側に居続けたいと思っていました。…正しく生きる事がわたしの人生の目的じゃないんです。わたしの人生の目的は夫なんです。
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自分とは、あまりにかけ離れた人物たち、背景に違和感と憧れを感じつつ、40代の男女の恋に憧れました。数十年ぶりにロマンチックで切ない気持ちを味わいました。年甲斐もなく、こんな気持ちになってみたいと思ってしまいました。
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申し訳ないのですが,個人的にはあまり受け入れることのできない内容でした。感性の違いなのかもしれませんが。
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生まれて始めて、といっていいかもしれません。ほんとうにまっとうな「恋愛小説」を読むという体験をしました。
一気に読み終わり、読後は、ボーッと放心してしまいました。
やっぱり恋は秘めるがデフォルトですね。恋は秘めれば秘めるほど得体の知れない魅力になってその人の雰囲気となって立ちのぼっていくんじゃないでしょうか。それが色気の正体、な気がします。
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この作家さん、初めて読みました。私にとって難しい漢字を使う作家さんでした。きっと年齢は高い人だと推測するのだけど、いくつなんだろう?って、思って調べたけど若かった…。ということは、私の漢字力不足ってことか。
内容的には、婚約者がいる美人の洋子と独身のギタリスト蒔野が出会い意気投合。メールをやりとりしてパリで再開して日本で結婚する約束をするが、ギタリスト蒔野のマネージャー三谷に再会の邪魔をされてそれぞれに結婚して子供ができる。洋子はギタリストのコンサートを見に行き、そこでギタリストの妻となったマネージャー三谷が二人を邪魔した事を知る。蒔野も妻になった三谷から、邪魔をしたのが自分だという事を告白する。やるせない蒔野。
蒔野がニューヨークでリサイタルを開いた時、ようやく洋子が観に来てくれた。ハイドパークの池を散歩しようと思うと舞台から洋子に向けてつぶやく。
そして、歩いているとベンチには洋子が居た…。
最後の出会い方が感動的だった。
プラトニックな二人は、これからどうなるのだろう?
洋子は離婚したが、蒔野は子供が生れたばかり。蒔野は離婚しないだろうし。
親友になるのだろうか?
最後までいっていないし、三谷という鉄壁の障害があれば二人が結ばれるという事はないだろうな~…。
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なんだろう、読み進めることがちょっとだけできなかった、久々の小説でした。
平野さんの小説好きなんですが、どうしても、どうしても一気読みできるような読み方が出来ず、
読み進めることが出来ませんでした。
そういう小説に出会うのもまた、出会うかな。