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私が、何を書こうとも何を言おうとも、浅すぎる書評になってしまうくらい、美しく切なく、大人の、純粋な恋愛小説だった。過去は変えられるもの、と語ったこと。現在を生き、過去を見つめ、過去を変えつつ、狂おしいほどに愛と向き合うふたり。切なく哀しいストーリー。音楽のことはわからないけれど、溢れる美しい音楽と、美しい言葉。いつまでも、いつまでも、余韻が消えない。きっと、何度も読み返すであろう、物語。
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大人の美しくも切ない恋愛小説、時事的な事や音楽の話も著者のとてもしっかりとした見識で絡めてあって読み応え十分、とても楽しめました。「分人主義」に続く著者の新機軸は「過去は変えられる」のようです。
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「未来は常に過去を変えている」。
確かに、知らなかった過去の事実を後から知ることで、その過去に対する認識は変わる。人とのすれ違いは、この物語ほどまではいかなくても、そうした知りえなかった事実や認識の違いの積み重ねで起こる。それを偶然と思うか必然と思うか。それに第三者の意図が加わったらどうなのか。運命と諦めるのは簡単だが、何か出来たかもしれない。あるいはしない方がよかったのかもしれない、と思うと運命では片付けられない。
「過去を変えながら、現在を変えないままでいる」ことが可能であれば、そうしたいと思うことが私にもある。しかし過去の事実を知りようのない今は、現在を変えずに生きていくしかない。
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未来は常に過去を変えている。
自分の心さえも持て余しているのに
言葉にできない思いを
その人が紡ぎ出してくれる。
自分の心を引き出してくれるのに
一番の弱さを見せられない。
大人の恋は
一途で、臆病。
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前半はモタモタと
後半は加速的に読了。
主題としては、
過去は未来によって書き換えることができる
いま直面している問題も
未来から俯瞰することによって
また違った一面をとらえることができる、
ということだろうか。
他にも、イラクの紛争問題、
ユーゴスラビアの民族問題、
リーマンショックに於ける金融危機など
物語を語るにおいて欠かせないテーマだったのだろうと思いつつ、不勉強で知識の足りない私にとって、
話の主筋の他に理解することに努めなければいけないのが少し大変だった。
後半の、洋子とソリッチの話が、
とても重要で大切なことを書かれていると思ったのに、
読み解くに困難で、数カ所読み飛ばしてしまった。
改めて読み返した時に理解できればと思う。
また、しばしば話題に上がる『幸福の金貨』の話が、
この物語と二重写しになっているのではと思ったが、
しっかり理解するにはもう一度読み返す必要があると感じた。
弱さや狡さを抱えつつ、
根本的に悪い人間がいない、
人に対して肯定的な(特に主役ふたりは、悲しいくらい物分りがよすぎる)話だと思った。
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心が痛くなるような切なくて美しい恋愛小説。
魂が呼び合うような運命の恋だというのに、早苗のささいな嘘から、すれ違い結ばれないというのは何とももどかしい。蒔野と洋子を取り巻く複雑な状況や思いが絡み合って…あーどう書いても陳腐な表現になってしまう。二人の高尚な会話にもついていけなかった(-_-)
ニューヨークで、マーキン・コンサート・ホールの舞台に立った蒔野は、会場に洋子がいることに気づく。二度目のアンコールに応えこう言うのだ。
「今日のマチネの終わりに、みなさんのためにもう一曲特別な曲を演奏します。」 for you がみなさんのためにではなく、本当はただ洋子だけのために。そして、あの「幸福の硬貨」を弾きはじめると、洋子の感情は抑え切れず涙と共に溢れ出した。これが一番心に残るシーンだった。
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平野さんの小説は、『日蝕』や『葬送』などの評価から非常に晦渋な小説という印象があり、敢えて読むのを避けていた作家のひとりであった。しかし、読書論や分人主義に関する評論を読み、その流れで、その思想を下敷きとした小説『ドーン』も読んでイメージが変わった。この小説については、SNSなどで見かけた他の方の評価が高く、それではということで手に取ってみた。
それは、饒舌な小説で、そして小説らしい小説だった。端正な小説で、例えば第二章で終わりにして切り取ったとしても、優れた短編小説として読むことができる。正直に言うと小説を夢中で読んだのは久しぶりだ。その語り口やプロットは、なぜか二十歳のころに夢中で読んだミラン・クンデラの小説を自分に思い起こさせた。クンデラの小説と同じように、音楽について多く触れられるところもそういう印象を受けた原因のひとつなのかもしれない。そしてもちろん「恋愛」に対する小説としてのスタンスが似ている、と言えるのかもしれない。
クンデラの小説が、恋愛小説でありながらもそれだけではなくそこに恋愛を越えた人生哲学のような何かを含むように、この小説も正しく恋愛小説でありながらもそれだけに留まらない。そして恋愛と絡んで、生殖(Reproduction)がテーマになっていることも見逃すべきではない。子供という存在が無から現れることで、それは過去に対して引き返せない一線が引かれたことが意味されている。その事実において、なかったことにはできない過去となることが強く意識されているのだ。洋子が蒔野とパリで会う前に行った婚約者リチャードとの性行為による妊娠の可能性があることから求愛を受けることを躊躇し、その心配がなくなったとの瞬間に受け入れる気持ちになったというところからそのテーマへの布石がひかれている。この点は、この小説を何歳のときに読むのかで受け止め方が変わるだろうなと思う。
イラク紛争、リーマンショック、東日本大震災、といった現代の歴史のフレームを鍵とすることで、個人の意志や選択では抗えない運命があることが示される。さらには、30年戦争、第一次大戦、第二次大戦(長崎原爆投下)、ユーゴ紛争、という過去の戦禍を登場人物の会話や体験の中に絡めることで、何度か言及される「過去」についての我々の姿勢のようなものを語らせてもいる。
しかし、ひとつ言わせてもらえれば、自分の好みかもしれないが ラストは違った形であってほしかった。もっと違えようがあったはずであるがゆえに、違和感が残った。
☆『マチネの終わりに』特設サイト
http://k-hirano.corkagency.com/lp/matinee-no-owari-ni/
新聞連載だったらしい。
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2016.9.12
よーこさんと平野さんの対談をきっかけに知った本。平野さんは初読み。
大人の洗練された恋愛ーーー相手を思って高揚する気持ちや嫉妬、不安、いろんな感情は歳を重ねても変わらずにあるものなんだと。私はこの登場人物たちよりまだまだ子どもだけど、その事実に、ただただ、ああそうなんだと。
ラストには安堵。この先この二人がどうなるのか現実的なところは分からないけれど、結婚という形で結ばれなくても心が通い合う存在もあるのかなあ。そうだとしたら、一生を誓い合ってする結婚ってなんなんだろう。
願わくば、心から愛する人と生涯を共にしたいな。
それにしても、知的で美人な女性なんて、素敵すぎる。
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とにかく、文章のひとつひとつがしっくりくる。
ハーレクインロマンス的な設定であるにもかかわらず、政治的な問題を不自然でなく絡めて、読み応えのある作品になっている。
このユーゴスラビアの映画監督のモデルは誰?
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「羊と鋼の森」のレビューでこの本が推されていたため手に取ってみた。
主役の一人がギタリストなため、音楽に関するものが多いし、もう一人の主役の女性も頭が良く映画や音楽に造詣が深いため、二人の会話のレベルが高い!
ついていけなくて、なかなか読み進められないところもあったが、二人の擦れ違いや想い合いに「これぞ大人の恋愛か」としみじみ思わされた。
また、イラク問題。
最近いろんな国でテロが勃発している中、外国で、外国のために暮らしている人々のことを思うと胸が苦しくなった。
大人の恋愛。とくにこういった擦れ違いものは、昼ドラなどでよく描かれてきたものだろう。
しかし、その背景や心理描写、モデルがいるほぼノンフィクションなことを思うと、良いものを読んだ、という気持ちになれた。
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ギタリスト蒔野聡史、ジャーナリスト小峰洋子。
今までも平野啓一郎さんの作品を他の皆さんのように堪能したかったのだけれど、
翻訳された文章のような咀嚼してから受け入れなければならぬ遠回り感があり、ストーリーに集中出来ないバカな子だった。
でも!
ついについにずぶずぶと入り込め、胸をかき乱される作品となる。
しかも恋愛小説で。
まず、その事が嬉しい。
そして、
「未来はつねに過去を変えている」
について。
この本を手にとってよかったと思えた。
胸に響く言葉に出会えた。
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芥川賞作家、平野啓一郎さんの新作恋愛小説。
Facebookでは毎日、平野さんの投稿を拝見しているが
実は、平野さんの作品を読んだことがなかった。
さらに、なんとかの森、がトラウマになり
恋愛小説は避けて通っていた。
しかしあれから30年も経っている。
平野さんの作品を読み始めるにあたり
新作であるこの本から始めようと思った。
最後の一行を読み終わった時
まるでスイッチが入ったかのように
涙が噴き出し、しばし声を上げて泣いた。
人の世はそんなものだ、という
諦めなのか絶望なのか、逆に希望なのか。
そんな理由はどうでもよかった。
ただ泣きたかった。
恋愛とは、人を愛するとは、愛する人とともに生きるとは...
一度、他人にそうした感情を持ってしまった以上
そこに純・不純、正・誤などないと私は思っている。
しかし、生まれたばかりの赤子のような想いも
すぐに現世の手垢にまみれて
「私たちの恋愛」は二次元的なものになり
行く末に思いを馳せれば馳せるほど
それはプレゼン相手のいない企画書の山
のような無意味なものになる。
蒔野と洋子が出会い、一直線に描かれた線には
4年の間に、複数の他者の線がからみつき
どんなに二人が望んでも
太い一本の線であり続けることができなかった。
しかし人間関係の線というものが
結んだり、切れたりの繰り返しである以上
それは永遠に変わり続けるはずだ。
目の前に、背中合わせで立っている絶望と希望に
いつでも微笑みかけられる余裕を持ちたい。
ことほどさように「恋愛」について考えさせられたが
何よりも、この小説を骨太にしているのは
洋子の言う「ヴェニスに死す症候群」や
イラクからパリに逃れて来た友人の苦境
といった、現代の人間の生き方や政治的な問題が
確かな目線で描かれていることだ。
ここには書かないが、残しておきたい言葉がたくさんあった。
この小説のコアでもある蒔野のこの言葉だけ書いておく。
「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。
だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。
変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。
過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
蒔野に会う前の自分は、もう今の自分ではないと洋子は思う。
この世に変わらないものなどない。
それこそが生き続けなければいけない人間の
唯一の希望なのだと私は思う。
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おしゃれですなぁ、大人ですなぁ~。
でも、この何とも言えない
人生のすれ違いの連続、
もどかしいのが堪りません!
ちょっと翻訳もののような文体は
読みづらかったものの
じらしてじらしての
終盤でのコンサートのシーンは
鳥肌ものでしたわ。
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クラシックギターの演奏者として芸術を極めようとする男性と、ジャーナリストとして過酷な場に身を置くことも厭わない女性。一度会っただけで、運命の相手と感じて強烈に惹かれ合う男女の恋愛を描いた小説。
前半は、芸術性でくるみながらも、別の女性のなり振り構わない妨害や、じれったいすれ違いなど、余りにもお決まりのパターンにやや鼻白む。が、後半は二人それぞれの深刻な苦しみによって、絵空事から現実に降りてきたと感じた。
ギターの音色が聴こえてくるような雰囲気にどっぷりと漬かって、高尚な大人の恋愛世界を楽しめるか、それとも何だかねと冷めた目で読み終えるかは、紙一重。
いい作品だとは思いつつ、紆余曲折を経た二人の姿をやや退き気味に見てしまうのは、私の擦れた心に問題があるのかしら。
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平野さんは新作が出たら必ず読む作家さんの一人。だから内容を特に確認することなく手に取った。
ちょうど読んだときに、僕は失恋の傷をいやしている最中で、今このタイミングでこの本が読めたことに喜びを感じた。お互いのことを思いあっているという部分は違うけれど、不運な偶然から結ばれない二人のやり取りが思いが届かない自分とシンクロして、共感でき、とても励まされているような気持になった。
また、この二人の生活ややり取りの美しさ≒この物語の美しさにかなり酔っぱらうことができた。つらい現実を忘れることができた。
こんなに物語に吸い込まれたのは久しぶりだった。
最後に一番響いた言葉を。
「なるほど、恋の効能は、人を謙虚にさせることだった。年齢とともに人が恋愛から遠ざかってしまうのは、愛したいという情熱の枯渇より、愛されるために自分に何が欠けているのかという、十代ならば誰もが知っているあの澄んだ自意識の煩悩を鈍化させてしまうからである。」