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ゆっくりじっくり読める日を待ってしっかり堪能。
期待していた以上に暖かいものが心にあふれてきて、外出先で読まなくて大正解。
読み終えて、その本をしっかり抱きしめたくなるなんて、そうあることじゃない。その中のみんなが、とてもとてもいとおしくて。
謎のコンシェルジュ結子は、軽やかに星野百貨店をしなやかに、泳ぐように動き回っているようで、みんなが実は魔法の白い猫なのでは、と空想するのも不思議ではないみたい。
だからこそ、結子目線の物語が圧倒的に胸にせまってくる。
色々な人から見た結子がきれいに1つにまとまって、ああ、と胸に落ちてくる。
星野百貨店は、きっと、大丈夫。
私が、いつかそこにたどりつけるまで、そこで待っていてほしい。
なんて、ね。
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優しくて優しくて優しくて、そして温かい。村山小説は真ん中に優しさのコアがあって、その周りをたくさんのいろんな優しさが包み込んでいる。だからどこからめくっても温かい優しさがあふれ出て来る。
悲しいけれどこの世界には多くの嫌なことが転がっている。憎しみや悪意や敵意に振り回されているからこそ、この物語の優しさに救われる。
誰かに裏切られたり傷つけられたり、あるいは逆に自分の中のある誰かへの黒い気持ちに気付いてしまったりするとき、そんな負の感情とのバランスをとるために私たちは村山小説を求めるのかもしれない。こんな嫌なことばかりある世界だけど、もう少しここにいてもいいかもしれない、とそんな気持ちにさせてくれる。自分の中にある優しさをもっと感じてみたい、って思える。
今回の舞台は百貨店。デパートじゃなく百貨店。小さくて古い百貨店。古いからこそそこにはたくさんの人の思いがつまっている。誰かの誰かへの思いと優しいまなざしが、金目銀目の白猫になって奇跡を起こしてくれるんだろうね。魔法や奇跡は、結局誰かの思いが起こしている、そんな気がする。
私も行ってみたいなぁ、星野百貨店。そして魔法を使う猫に会ってみたい。そして一つお願いをしよう。かなうかな。かなうといいな。
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何となく三谷幸喜の有頂天ホテルを思い出した。
老舗の小さな百貨店で働くスタッフの小さな奇跡が周りの人を幸せにしていく。その一つ一つの奇跡が繋がっていく。
ファンタジー要素が少し苦手だったが、きれいな物語でした。
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あなたに故郷の思い出が詰まった場所はありますか。
1人で、家族と、友達と、特別な誰かと訪れた場所。初めて何かをした場所、何度も繰り返し通った場所、とても印象的な出来事があった場所。それはお店だったりレストランだったり公園だったり遊園地だったりするかもしれない。
自分はどうだったかと振り返ってみると、初めて自転車に乗れるようになった日行った場所は隣町の古本屋で、小学生のとき夏休みに毎日通ったのはできたばかりの図書館で、高校時代毎日寄り道していたのは県内最大規模の新刊書店だった。なるべくして書店員になったのだなあと呆れかえるばかりである。
さて、この作品にそんな「故郷の思い出が詰まった場所」として登場するのが風早の街の『星野百貨店』です。
就職して初めてこの街を訪れた人、幼い頃にこの街を離れ戻ってきた人、ずっとこの街に住み続けている人など、それぞれの事情を持ちながらこの百貨店で働いている人たちの願いと奇跡を描く連作短編集です。
この星野百貨店には「願い事をなんでもひとつ叶えてくれる魔法の猫」がいるらしい。
もしも本当にそんな猫に出会えたら・・・?
すべてのエピソードを通して読んで、共通して感じたのはこれは「再会と再生の物語」であるということです。
生き別れの家族と再会し再び一緒に暮らせるようになった人。過去の後悔の場面に立ち戻って前を向けるようになった人。憧れの人に出会って自分の魅力に気づけた人。
出会えたら願いを叶えてくれるという白い猫は再会のきっかけをくれるだけです。過去を変えたり自分を変えたりはしてくれません。そこから自分の願いを叶えるために行動を起こすのはその人自身。けれどきっかけさえあれば前に進む力はそれぞれの人が持っているのです。
この構図は舞台である「星野百貨店」にも当てはまります。不況で存続の危機にある百貨店は「百貨店が大好きな女の子」と再会したのだから、きっと再生できる。白い猫の奇跡で前を向いて進めるようになった従業員たちと同じように、未来に続いていくのではないか。そんな希望を抱かせる物語です。
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時代の波に抗しきれず、「閉店が近いのでは?」と噂が飛び交う星野百貨店。エレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で街の人びとに愛されてきたデパートを守ろうと、今日も売り場に立ちつづける――。百貨店で働く人たちと館内に住むと噂される「白い猫」が織りなす、魔法のような物語!
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風早の街に古くからある星野百貨店が舞台である。建物にも年季が入り、決して近代的とは言えないが、昔からの電灯が脈々と受け継がれているような、愛着のある重々しさがある。街の人たちに愛され、もちろん従業員たちにも愛されている星野百貨店なのだが、もう先がないという噂が飛び交うようなこのごろである。そんなときに、新しく作られたコンシェルジュとしてやって来た芹沢結子は、ちょっぴり不思議な存在ながら、誰からも愛され、なんとなく懐かしさをも感じさせられる女性である。彼女はいったい何者なのか。そして、金と銀の瞳を持つ不思議な白猫の噂とともに、百貨店で働く人たちや、子どものころからお客として来店していたひとたちの、それぞれの深い思いが描かれていて、星野百貨店の存在の大きさがうかがい知れる。どこを読んでも、人のまごころのあたたかさに涙を誘われ、とてもしあわせな心地にさせられる。外では読めない一冊でもある。
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【収録作品】第一幕 空を泳ぐ鯨/第二幕 シンデレラの階段/第三幕 夏の木馬/第四幕 精霊の鏡/幕間/終幕 百貨の魔法
著者らしい、心温まる話。日々の努力を馬鹿にしない生き方やささやかな夢を見る力を肯定してくれる。
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見たものの願いを一つ叶えてくれる猫がいる百貨店。内装も働いている人たちも、とても素敵な百貨店でした。
願いを唱えながらも、前を向き、一歩を踏み出そうとする様子は、読み手の背中を押してくれる作品でした。
伏線も見事に回収されていて、百貨店の再建もとても気になります。どのように再建されるのか…続きを読みたくなりました。
この著者の方の作品はいつもあたたかさと優しさや愛情がたくさん詰めこまれていているなあと思います。
今回も読み終わったあと、穏やかな気持ちになり、あたたかくなりました。
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とても優しくてあたたかく、懐かしい気持ちになれるお話。
あぁ、そうだ、子供のころ、よそゆきのお洋服を着て、親に連れられて、百貨店に行ったなぁ、という日を思い出します。
今は、あの頃に連れて行って貰った百貨店は、改装を終えたり改装中だったりするけれど、ずっと大好きだったレトロな内装の一部は、移築されたりしていて、あれを見つけた時には、涙が出るほど嬉しかったなぁ、という気持ちまで思い出しました。
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夢があってほっこりできて、ホロホロ泣ける素敵な本でした❤︎
働く人を大切にしているから、働く人も会社を大切にしてて、大事に守ってるから、こんなあったかい気持ちになれるお話が出来るんやろーなと思いました。
こんな素敵な会社があったら、ぜひとも働きたいっっ‼︎笑
魔法の猫に出会えたら私は何を願うかなぁ。
思い浮かばないって事はそれなりに充実してるからかなぁ。
この本をツイで紹介してくれた本屋さんに感謝❤︎
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不況の煽りを受けている百貨店で働く人々、
創業者の一族などとそれぞれの目線で
過去に消えてしまった夢や二度と逢えない人が
この百貨店で夢のような時間に遭遇するという物語。
どの登場人物にも秘めた願いがありますが、
それが不思議なことにこの百貨店を中心にして
過去から未来へと続いて誰もが笑顔になれ希望へと繋がるという
読んでいても心が洗われるような思いがする空間でした。
そこには必ず館内に住んでいると噂されている「白い猫」が
現れるというのがまた御伽噺のような楽しさがありました。
私の幼少の頃は百貨店、いわゆるデパートと呼んでいましたが、
休みの日になるといつもより少し身綺麗な服装をして
ご褒美にデパートに行ってお子様ランチを食べたり、
屋上の遊具施設で遊んだり、誕生日にはここでプレゼントを買ったりと
特別な時に特別な場所に行くという今とは違った豪華なイメージがありました。
そんな思い出のあるデパートなので
この百貨店も何処か懐かしい気がして、
改めて百貨店の良さを思い出させてくれた気がします。
特にこの作品での百貨店は小さな商店街から徐々に大きくなり、
地元に長年愛されている百貨店なので余計に思入れが強くなりました。
このような人の心を豊かにし、お客様の為に楽しませてくれる素敵な
百貨店は良と思うので、不況の煽りで厳しくてもいつまでも地元の人の為に長く続いて欲しいと思ってしまいました。
どの物語も心優しく、温かみのあるものばかりでしたが、
終幕 百貨の魔法の祖父の言葉は感動的で印象深かったです。
ひとの生は砂時計の上になっているようなものなんだ、
足下の砂はさらさらと落ちていく。
思い出も、記憶も、交わした言葉も、
みんな砂のようにどこかに落ちてしまう。
中略
マッチの火のような小さな灯りでも、
誰かの凍えるてのひらを温めることができたら
そんな人生が送れたらと思うんだよ
2017年本屋大賞にノミネートされた「桜風堂ものがたり」と舞台が同じになっている姉妹作になっているというので手に取りました。
「桜風堂ものがたり」ほどの心を揺さぶられるものはあまり無いですが、
村山さんらしい独特な世界感がとても良く表れていて、
静かな時間の流れを感じながら、
疲れた心をほぐしたい時にお勧めな作品だと思います。
大人になっても魔法の話というのも
時には楽しく童心に返るので良いかとも思います。
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子どもの頃のデパートは
休みの日に、家族でおしゃれをして出かける場所だった。
親の買い物につきあったあと、
最上階のレストランでお子様ランチを食べて
おもちゃ売り場でおもちゃをひとつだけ買ってもらう。
私はそんな思い出を持つ最後の世代かもしれない。
不思議なことが次々と起こる風早の街。
この街にある老舗デパートにも
やはり幸せな奇跡がたくさん起きていました。
この作者の物語を読むと必ず、
子どもの頃の幸福な読書体験を思い出すのですが
今回も、デパートの思い出と共に
そんな記憶がよみがえって来ました。
毎回物語のどこかに、思い出の起爆剤のようなものでも仕込んであるのかしら。。。
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街の小さな百貨店で起こるささやかな魔法が素敵。
街に大事にされ、そこで働く人も集う人も大切な思い出がそこにはある。
少女だった彼女も成長し、そこにある思い出を大事に百貨店を継ごうとする。
見守る人も温かく心が満たされる感じがした。
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昭和だなぁ。しみじみ思う。
人情のあった時代。
今は社会も自分も合理性を求めている。
だからこの物語を読んでとてもホッとする。
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連作短編5編+幕間
おしゃれな一幕ものの芝居を見ているような楽しさ.どの物語もあたたかな思いであふれていて,クリスマス前に読むのにぴったりの物語だった.「精霊の鏡」の絵の好きな二人がうまくいきますようにと祈りました.
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書き下ろし
人の善意、温かさを肯定するこういう物語が好き。涙腺緩みっぱなしで困るのだけれど。
風早市にある星野デパートは、戦後の焼け野原から復興したシンボルとして、人々の暮らしと幸せを守ることを社是とし、街の人々からも従業員からも愛されてきた。屋上に遊園地のある老舗デパートには、シンボルのステンドガラスに描かれた白い子猫が現れて願いを叶えるという噂がある。
入社2年目のエレベーターガール松浦いさなは、姉妹都市の北欧から来た市民オーケストラの少女が客船の火災で行方不明になった母が持っていた焼け焦げたテディベアの修理を望んでいると知って力になり、勇気付けるが、自身の行方不明になっている父の声を聞き、父が見たという空飛ぶ鯨を見る。
テナントの靴店の百田咲子は、母が亡くなり父も倒れたために自分が歌を作りヒット曲を出したバンドをやめて家業を継いだ。連絡も取らなくなったツインボーカルの片割れはが芸能界に残っていることを羨ましく思っていたが、行くことを諦めた最後のコンサートで歌う夢を見た。
宝飾贈答品フロアの責任者佐藤健吾は小学生の時に、屋上の遊園地で母に置き去りにされ捨てられた過去があったが、遠方で自分の名前を書いた紙を持った老女が入院したことを知らさせ会いに行って迎える。
資料室勤務で自分は美しくないと思う早乙女一花は、高校生の時に絵のコンクールで星野百貨店の思い出を描いて佳作になったが、群を抜く大賞作の力量に圧倒された。その作者は売れっ子のイラストレーターになっていたが一花の作品の暖かさに惹かれ続けていると星野百貨店を訪ねて来た。一花は化粧品コーナーの美容部員に美しさの引き出し方を教わり、浴衣を着て屋上で二人で花火を見る。
これら全ての話に謎の新人コンシェルジュの結子がかかわるのだが、最後の章で結子の正体がわかり、希望がわく。
こんな老舗デパートには行ってみたいし、ずっと残り続けて欲しい。