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首相官邸での有識者会議で古市さんがこの本に収録されている論文を紹介したことが発端とのこと。
最近子育て支援テーマの記事各所でこの本の紹介を目にします。
「子育て支援は、公共事業より投資効果大」という明快な主張について、
丁寧にエビデンスをたどっていくストーリーになってます。
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統計的分析手法を使って本邦が抱える諸問題を解決/改善するためには何をすればよいかを探る。
書名のとおり、子育て支援をすると女性就業率が増え、経済成長率、財政が改善、高齢者率、自殺率、失業率、子供貧困率が低下するという分析結果だ。
高齢者支援から子育て支援に重点をシフトするというのは、ある意味、費用から投資にシフトすることであり、それにより状況が改善するだろうというのは直観的にも納得できる。
本書を読めばわかるとおり、統計的分析は仮説の立て方に大きく左右される。追跡研究にも期待したい。
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本書は、子育て支援を中心とする国の政策効果について、主にOECDのデータを使って実証分析をし検証を行ったものである。本書はだれでも使用できるオープンデータで、地道に丁寧に実証分析を行っており、その姿勢は大変恐れ多いものである。したがって、その分析結果から得られるインプリケーションも当然ながら説得的なものとなっており、示唆に富んだ内容となっている。
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「これからの日本を救うのは、保育サービスを中心とした子育て支援である」――これは著者の結論である。そして、子育て支援の充実を図るための財源として、
・所得税の累進化
・相続税の拡大
・被扶養配偶者優遇制度の限定(高所得世帯は除外)
・資産税の累進化
を小規模に組み合わせる政策を提言している。
こうした結論や提言を導くにあたり、エビデンスを重視している点は非常に評価できる。
例えば、
・労働生産性の向上を図る指標(女性労働力率、保育サービス支出、労働力参加率、男性失業率など)
・女性の労働参加を図る指標(被用者の第二次産業比率、公教育への支出、産休育休のための公的支出など)
などを1つずつ丁寧に統計的に分析している。
その結果、
・潜在的待機児童(就学前保育100万人+学童保育40万人)を完全に解消することで、
・労働生産性を最大限に伸ばし、
・子どもの貧困率を先進国平均にまで減らし、
・財政余裕を10年間かけて先進国平均にまで増やす
ことで、
・潜在的待機児童は完全に解消され、
・翌年の労働生産性成長率は約2.9ポイント増加し、
・子どもの貧困率はOECD平均まで減り、
・合計特殊出生率は約0.02ポイント増え、
・年間自殺者数は約500人減少し、
・財政余裕は10年後にOECD平均にまで増える
と見込まれるというのである。
確かに、科学的分析によればこうした効果が期待できるのは理解できる。しかし、果たして、本当にそうなのだろうか。統計的な処理について私は十分に理解できなかったが、おそらく保育サービスの拡充を行ったところで、著者が述べるようなバラ色の未来があるとは思えない。なぜなら、必ず他の負の要因が新たに出現し、想定シナリオ通りに進まないと考えるからだ。他国の先進事例(例えば出生率の改善を果たしたフランスなど)との比較を加えることで、より内容に厚みが増し、信頼性が高まったのではないだろうか。
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「あとがき」より。
「本書の結論を一言でいえば、『これからの日本を救うのは、保育サービスを中心とした子育て支援である』ということだ」。
書名通りの結論で、至極まっとうな意見。
様々な視点から論じ、且つ、データ・統計をもとに、因果関係を説き、仮説を立て、「では、どうすればいいのか?」といった順番に、結論を導いていく。
筆者の論理はわかるが、やや強引なところもあると感じたり、「机上の空論にすぎないのではないのか?」と考えたりする部分もあった。
ただ、全体的には、筆者の主張が一貫して、「子育て支援」について述べてられており、参考になった。
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同著者の後発新書『子育て支援と経済成長 (朝日新書)』を読めば、内容はあらかた網羅されている。
その新書の学術的な妥当性を知りたいならば、本書をひもとけばよい。
学問的には、より真実に迫るための統計手法の発達が興味深い。
新書は2/20に読んだので、3ヶ月後の読書になった。
今回は自殺について、より気づきを得た。記述は変わっていないと思うが。
・「期待の基礎となっている規範が崩れる」=アノミー。デュルケーム。失業率の上昇率が上がると同年の自殺率があがる。
・女性労働力率が上がると、翌年の自殺率が下がる。
・他者の自殺が自己の自殺に与える影響は、統計的に無視できない。
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クロスナショナルデータを中心に計量分析を用いて、労働生産性向上・財政再建・自殺率低下・子どもの貧困の緩和といった社会問題について、現役世代向け社会保障、とりわけ子育て支援が効果的であると結論付ける。 計量的手法を用いた因果分析はエビデンスとして強力だが手法が難解であり、それをわかりやすく伝えようとする。しかし他方で、結果が実際の現場で適用するには、政策担当者が状況に応じて結果の解釈・検討ができなければならない。このジレンマを解消する方法の1つは、研究者と協働して政策を検討することなのかもしれない。
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効果的な政策を打つための、科学的な裏付けの方法を学ぶため、購読。
結論
子どもの相対的貧困を減らすためには、
・保育サービス
・児童手当
・ワークシェアリング
・失業給付
が有効
ある指標に影響する変数を推定する方法は、
・被説明変数の前年値を説明変数として回帰式に入れ、
・一階階差(全変数を前年値からの差に変換)
して変数を探る。
これが、一階階差GMM推定。
推定の例として、
財政余裕は、高齢化の抑制、失業率の低下、経済成長 によって増加する。
労働生産性向上率の向上には、男性の失業率が下がり女性の就業率が上がることが寄与する。これは、職場での性別多様性が高まることによる。
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とても苦手な数字系、、(笑)でもおすすめの読み進め方とか書いてあって、とっつきやすかった。でもまたの機会にちゃんと読みます。
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柴田さんの子育て支援が先進諸国の半分にすぎない原因の整理が秀逸。
背景①の人口構造の歴史では、日本は、高齢化と少子化において、高齢化は急速に経験したが、少子化は、先進諸国と同様のペースでゆっくりだった。それゆえに、「危機感」が違った
背景②の民主主義では、高齢者の投票率が高く、現役世代の社会保障を「選択」しなかった。20代から30代の投票率が下がったのは、東西冷戦後に顕著になる。
↑これって、なんで?って思った。
背景③の宗教が一番おもしろかった。キリスト教も、カトリック、ルター派、カルヴァン派で分かれる。カトリックは、教会による救済が中心で、個人のボランティアなどが発達しなかった。イタリア周辺は、今でも、子どもの貧困率が高い。ルター派は、政府が救済。ドイツとか北欧諸国。政府が、民間を強く支援すれば、ボランティア活動も育つ。カルヴァン派は、教会も政府も批判するので、個人のボランティアが勃興する。イギリス、アメリカなど英語圏諸国。その点、日本は、大乗仏教がベースで、「人類愛」ではなく「生物愛(一切衆生悉有仏性)」なので、貧民救済の文化が育たなかった。
とはいえ、「選択」が社会を変えることに期待している本書。
政策に反映されてほしい。