紙の本
ふたりの学者が往復書簡で問うもの
2022/04/24 21:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか。
物理学者のアインシュタインが精神分析の始祖フロイトに宛てた公開往復書簡がこの本の内容だ。
なぜアインシュタインはこのような問いをフロイトに投げかけたのか、フロイトはどう向き合ったのか。
もともとは国際連盟の要請を受けて書いたもの。しかしその後、ユダヤ系の二人はナチスドイツの迫害にあうことに。
この往復書簡も長く知られることはなかったという。
なぜ戦争が繰り返されるのか、答えはやはり人間の内側、そこから生み出される文化しかないのかもしれない。
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人類永遠のテーマ
2020/01/28 11:08
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の文明においてもっとも大事だと思われる事柄として戦争を選び、人間の心の中に戦争の解決を阻む様々な障害があることを感じ取っている二人が、文化の発展が人間の心のあり方に変化を引き起こし人類消滅の危険性を生むと同時に、戦争の終焉に向けて歩みだすこともできることに希望を抱いていたことを第二次世界大戦前に意見交換していたという、世界のリーダー達必読の書。
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戦争を防ぐためのフロイトの持論をまとめると「強大な中央集権的な権力のもとで、人と人の間の感情と心の絆を作り上げる」。中露は前者はあるが後者はない。日米は後者はあるが前者がない。これではいつ戦争が起きてもおかしくない、ということか。アインシュタインの問いにはなかった、フロイト自身の関心ごとが興味深い。ひとは戦争をする一方で、戦争に強い憤りを覚える。この矛盾の背景には文化の発展が人間に押し付けた心の在り方が関連するのでは、と、逆にアインシュタインに宿題を出してるようにも思えた。
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戦争に武器開発者として携わっていたアインシュタインと、社会心理学者のフロイト。二人の手紙でのやりとりを翻訳したものが本著です。
タイトル通り、人がなぜ戦争を起こすのか、その要因と解決策について議論されています。
二人の考える「戦争の要因」も「その解決策」もバラバラで、唯一の共通点は二人がユダヤ人であり、平和主義者であるということだけ。
面白いなあと思ったのは、アインシュタインは「武器を作れと命じるひとの存在や、それを売るビジネスが成立している社会に問題がある」と主張する一方で、フロイトは「戦争は、復讐心など、ひとの心理から生じる」と述べている点。
それぞれの立場ならではの見解で、非常に興味深かったです。
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1932年にアインシュタインとフロイトとが「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」をテーマに交わした書簡。
戦争がなぜ無くならないのか、その複雑な問題の根底に潜む問題は、人間の心自体にあるとアインシュタインは考察する。人間には憎悪に駆られ相手を絶滅させようとする欲求がある、と。ではどうすれば、とアインシュタインはフロイトに問う。
対し、フロイトはこう意見する。
人間には2つの欲動、「生への欲動」と「死への欲動」がある。後者が外の対象に向けられると破壊欲動になるが、この攻撃性の内面化が強過ぎると自らに危機を及ぼしてしまう。結論。「人間から攻撃的な性質を取り除くことなど、できそうにもない!」が、人間の攻撃性に戦争とは別のはけ口を見つければ良い。また、人と人との感情と心の絆を作り上げ「生への欲動」を読み覚ませば良い。
さらにフロイトは問題提起する。戦争は自然世界の掟に即している。なのになぜ強い憤りを覚えるのか、と。そしてそれは、心と体が反対せざるを得ないからだ、とフロイトは主張する。文化の発展によって心と体を変化させられ、こうしたあり方を押し付けられるのだ、と。
文化の発展が生み出した心のあり方と、将来の戦争がもたらすとてつもない惨禍への不安とが人間から戦争を消していく、これがフロイトの意見である。
これを読んだ私の意見は、gameが果たせる役割は大きいだろう、ということだ。スポーツであってもテーブルゲームでもネットゲームでも。gameは攻撃性を消化させるばかりでなく、相手への共感と敬意も生むことができるからだ。
ISのメンバーも調べるとオウム同様に意外とインテリ層が多いと聞く。是非彼らとgameとの親密性について知りたい。
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文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩み出すことができる!(byフロイト 55p)
読み始めた時には、実はこんな感想を持つだろうと予想していた。「最も重要な問題意識ではあるが、大した発見はないだろう。なぜならば、世界的な知識人の2人の往復書簡なのに、有名でないから」しかし、今は違う感想を持っている。「もっとこの2人の発言は知られるべきだ。まだまだ、この問いに対する、2人の見解は議論され尽くされてはいない」。
見解の大要については、異例の二つ目の解説、斎藤環さんの要約が参考になる。心理学については不案内な私だったので、フロイトがここまで個人では無く人類の課題について明確に述べていたのが、とても感慨深かった。
そして、改めて私は佐原真さんが述べていた「人類史で戦争を始めたのは一年に換算すると大晦日のことだから、必ず人類によって終わらすことができる」という見解に確信を持つことが出来た。養老孟司さんも、脳科学の立場から、戦争は新しい社会システムから言えば古くなるだろうと予測している。養老孟司氏の云うのは、数百年数千年単位の変化なので、私はこの問いには直接答えていないと思う。フロイトの答も数百年単位の話であり、今ひとつだった。しかし、問題意識はとても大切なことを述べていた。議論をすれば、それも数十年単位に縮むかもしれない。実際これが書かれて既に84年も経っているのだ。
2016年10月25日読了
追記。アインシュタインのふと述べていた疑問、
「私の経験に照らして見ると、「教養のない人」よりも「知識人」と言われる人たちのほうが、暗示にかかりやすいと言えます。「知識人」こそ、大衆操作による暗示にかかり、致命的な行動に走りやすいのです。なぜでしょうか?彼らは現実を、生の現実を、自分の目と自分の耳で捉えないからです。紙の上の文字、それを頼りに複雑に練り上げられた現実を安直に捉えようとするのです」(16p)は、
フロイトは無視してしまった。私は見逃すことが出来ない。誰か、答えて欲しい。
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「人間にとって最も大事だと思われる問題をとりあげ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」という国際連盟(国際連合ではない)からの依頼を受けたのはアインシュタイン。選んだテーマは「戦争」。選んだ相手はフロイト。
二人の手紙は示唆に富むが、アインシュタインの手紙が1通、フロイトの手紙が1通で、議論が深まらない。議論の続きが知りたい。というか、ぼくも質問したい。
当代随一の知性が「戦争をなくす方法」にそれぞれ解を出しているが、数年後には史上最悪の戦争が始まり、アインシュタインもフロイトも亡命を余儀なくされた。国際連盟も崩壊した。彼らの解は間違っていたのか。あるいは解なんかないのか。ぼくも知りたい。
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1930年代に国際連盟の企画により、物理学者であるアインシュタインと精神医学者のフロイトが交換した手紙を書籍化した作品、テーマは「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」である。
アインシュタインからの問いにフロイトが応える形となっているが、アインシュタインの考えでは元々人間には破壊的な欲求があるのだという事、そして戦争を避けるためには絶対的な権力を持つ国際機関が必要で、加盟国は一部主権を放棄しなければならない、という内容。
それに対しフロイトは、戦争というテーマが自分には、そしてアインシュタインにも重たすぎると前置きしたうえで、返事を綴っている。フロイトの長い手紙を要約するのは難しいが、人間の文化度を高め欲動を抑える事により争いが治まる、といった感じの内容(だったと思う…)
イデオロギーの違いや資源の奪い合いなど、戦争となる理由はたくさんあるが、貧富の格差による不満の鬱積なんかも、大きな要因の一つなのではと思う。つまるところ、人に欲求がある限り争いは避けられず、世界中の人々が同時に一瞬で悟りを開けなければ、戦争は無くならないんじゃないでしょうかね。
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解説2編も含め、現代にとって非常に示唆に富む本だと思います。4人の科学者の考え方に、それぞれ賛否は出るかもしれませんが、人間というものや社会というものを理知的にとらえ直す機会になりますし、では私はこの世界でどうあればよいのか?と見つめ直す機会になると思います。
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アインシュタインとフロイトが戦争について手紙を交わすという事実だけですでにお腹いっぱいになりそうな内容だったが、交わされた内容も現代、とりわけ今に大きなヒントがあった。
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以前読んだ、似たようなタイトルの、フロイトの講演録よりも、タナトス(死への欲動)について、あるいはタナトスを巡る問題について、しっかり論じられているように思う。斎藤環の解説もわかりやすい。
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これは,あの相対性理論のアインシュタインと精神分析のフロイトとの往復書簡である。国際連盟がアインシュタインに依頼して実現したらしい。
たった1回きりの書簡で,とても短い手紙だが,二人の著者に触れたことにある者としては,なかなか興味深い。
本書には往復書簡以外にも,解説が充実していて,こちらの方の内容が濃いと思うかもしれない(実際,わたしは,そう思った。手紙自身は,その珍しさから読んでみたくなる)。
一人は養老孟司。もう一人は斎藤環氏。本書の半分以上のページを使っての解説である。二人の書簡の現代的意味を説き明かしてくれて,なかなか読み応えのある解説だった。
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物凄く面白かった。こんな本があったなんて。
国連がアインシュタインに今意見交換したい人と書簡を交わしてくれるよう依頼し、アインシュタインが選んだのはフロイトだった。
2人はタイトルのテーマについて一度きりの書簡を交わして、一定の答えは提示してくれている。テーマもさる事ながら、ふたりの関係性や性格が書簡から読み取れ、大変に面白い。ページ数少ないが大変満足。
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【概略】
国際連盟が1932年にアインシュタインに依頼したのは「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄を、最も意見交換したい相手と書簡を交わしてください」というものだった。アインシュタインが選んだテーマは「人はなぜ、戦争をするのか?」というもので、意見交換したい相手はフロイトだった。アインシュタインの投げかけに対するフロイトは、「生と死の欲動」を通じて返信を展開する。
2019年04月25日 読了
【書評】
いやぁ~・・・事務所を出て名古屋に向けての電車の中、どんどんと読み進んで・・・読み終えてしまった!なんとも興味深い!
読後感としては「これ、道徳の授業で使ったらいいんじゃない?」だった。精神的規範って、あんまり「〇〇であるべきだ」って型枠を押し付けるのだけじゃなく、「迷っていいんだよ。大の大人だって、迷ってるんだから」ぐらいなほうが、いい気がする。・・・決められない人達が多いともいわれるから、危険かな???
生の欲動(エロス)と死の欲動(タナトス)についての考え方、凄く面白かった。とりわけ、どちらが善で、どちらが悪という考え方ではなく、むしろ一つの行動の中に双方の欲動が存在していたり、生の欲動によって突き動かしたその結果が、死の欲動として具現化されるなんてのもまたなんというか・・・0か1かで割り切れない人間の面白さというとバチが当たるかな。
この書簡がやりとりされたのは1932年。第二次世界大戦は起きてない状態。そこから90年近く経った現代の価値基準からフロイトの返信を読むと、とても興味深いよなぁ。どんどん「個」の時代に突入する中で、「国家」という概念は今後、どうなっていくのか。権力もまた暴力となる・・・であるならば、国家の「逸脱ぶり」も、今後は多く見られるかも・・・「テロ」と定義される集団が、「テロ」でなくなる・・・なんて展開も、あったりするのかな。
アインシュタインの手紙に「知識人こそ、大衆操作による暗示にかかり・・・」なんてくだりがあった。そして、フロイトの「文化を高めることが戦争を回避する」なんて返し・・・。自分は、その過程にある、文化を高めた(?)知識人による「お前、そんなことも知らないの?」的、上から目線感・・・これに陥らないようにしないと、と感じた次第。Twitter でも Facebook でも、これが一番・・・いやらしく見える。自分の中でタナトスがムクムクと頭をもたげるのがわかる(笑)
何事も、途中過程というものは、本人はできたつもりでも、外側から見ると未熟なんだよね(脱線)。
「訳」に対しての不満レビューがあったので、同じもので、違う翻訳者のもの、購入してみた。それぐらい、興味深い一冊だ!