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重箱の隅をつつくようと言われるかもしれませんが。。。
櫟(クヌギ)はどんぐりをつけるけど、落葉樹で、照葉樹(常緑広葉樹)ではない。鬱蒼とした森ではなく、明るい雑木林や里山の木で、薪や椎茸の原木にしたりします。帝国大学の林学の先生の説明としてはあり得ない。
最後の大事な場面なのに残念。是非別の木に修正してほしい。
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以前にNHKの特集で見て、明治神宮の森が人工的に造られたものだということは知っていたが、それ以上深く考えたことはなかった。それまでの国のカタチや暮らし、価値観さえも全て覆った一大転換期を必死に生き抜いた人たちが何故明治神宮を造ろうと思ったのか、どういう意志を持ってあの森が造られたのか。この森の完成する時代にここに居る自分と彼らとが繋がっていることを強く感じた。
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何とも味わいのある作品。
明治という時代に対する作者の追悼か。
そして、いつの世においても国見をする天皇という存在。
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『明治の杜』の話でなく、杜の主:明治天皇のお話でしたね。緑や木々の匂い立つ物語をイメージしていたが、ちょっと違った様だ。新聞記者の視点から、明治〜大正へ移りゆく時代背景もうまく描写されていたが、“杜造り物語”への期待ギャップがどうしても払拭出来ずに読了。
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胸が熱くなった。
この物語がどこまで史実で、どこまでがフィクションなのかはわからないけど、見え隠れする真摯な明治天皇の姿に胸が熱くなる。
幕末には興味を持ち、明治維新までは多少の知識があるが明治に入ってから、ましてや天皇についてなんて知識もなければ興味もなかったのだが、この本を読んで、神とあがめられた天皇と庶民の距離というか、人々の天皇を想う姿というのはある意味今も昔も変わらないのだと知った。
1人の人間でありながら、個を隠し日本の帝として世界に人々に向き合った明治天皇を知ることが出来た。読んで本当に良かった。
明治大正を生きた人びとが、天皇を偲んで作った明治神宮に行きたくなった。
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明治神宮建立、また明治という時代について新聞記者の主人公目線で書かれた小説。
淡々と進められる話の中に熱い思いが時折混ざり、ぐっとくる。
女記者の響子、かっこいい!
まかてさんお得意の、切ないけど温かい感じ(?)は今回は少なめ。
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明治神宮の杜がこんな壮大な計画のもとに“造られた”ものだったとは知らなかった。
明治神宮造営をめぐる、政治家や学者や新聞記者の駆け引きがメインだが、根底で問いかけるのは「天皇とは日本人にとってどういう存在なのか」ということだった。政治的にも思想的にもデリケートなテーマだけど、明治天皇が“日本”という新しい国に対して抱いていた想いには、じんと来るものがあった。
読み終わって数日後(16/8/8)に今上天皇のお言葉が発表されましたが、天皇という存在が明治の時代から背負ってきたものの大きさを知った気がする。
まかてさんはすごい!歴史のメインからは外れたちいさな出来事・市井の人々を取り上げて時代を活写するのが本当にうまい。
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朝井まかてさん「落陽」、2016.7発行、大作だと思います。「恋歌(れんか)」の頃から、本格的、正統派の小説だと思います。「遊び心」が少ないから、佳境に入るまで読み進めるのに肩が凝る感はありますが~w(私の歳のせいかも・・・w)明治天皇は数え年17歳で京都から東京の地に。この世を動かしているのは、統治者か、はたまた、つまるところ人の心情なのか・・・!双肩に国の命運がかかっていた明治天皇陛下の心に、記者瀬尾亮一を通して朝井まかてさんがぐっと迫っていきます。明治神宮の森に国民の感謝の心が息づいています。
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日経の夕刊の書評の5つ星。amazonでポチろうと思ったら売り切れ、紀伊国屋のWebストアでも売り切れで俄然欲しくなり購入。よかった。明治神宮創建にまつわる物語。明治神宮の杜が人口で150年計画で作られていることは、NHKのテレビ番組などで知っていたが、裏にこんなことがあったとは。歴史小説の常でどこまで、史実かどうかわからないが、いろいろ、今の日本の課題を考えさせられる。新聞というメディアの役割、外苑の新国立競技場、退任問題、政治と経済の関わり、皇室と皇族、等。明治神宮に涼しくなったら行ってみたい。
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明治神宮創建にまつわる物語。
明治神宮の森が人口の森であり、150年近くかけて森にするという壮大なプロジェクトであることなど初めて知ることが多く面白い。
また明治天皇自身について語られていることも印象的だ。
苦悩も哀しみも怒りもない全知全能の神がこの世を支配する西洋式の神格化と違う。
「国見」という土地や民草を見、聞き、知るからこそ感情を露わにし嘆いたり悩んだりしながら国を治め、だからこそ人々は想いを寄せ忘れない。
それこそが日本の神々であり、それを体現しようとしていたのが明治天皇だと語られる。
明治天皇に対するそういう想いがあるからこそ、明治神宮の森のプロジェクトが生まれたのかもしれない。
またこれは個人的な想いではあるが、明治天皇が体現しようとしていたものを継承しようとしているのが今上天皇ではないだろうかと思わされてしまう。
右傾化とかそいうことは関係なく、天皇と我々国民との関わりを伝える一つの作品と言えるのではないかと思う。
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献木十万本、勤労奉仕のべ十一万人、完成は──百五十年後。いざ造らん、永遠につづく森を──
明治天皇崩御直後、東京から巻き起こった神宮造営の巨大なうねり。
日本人は何を思い、かくも壮大な事業に挑んだのか?
「ただ、かくなる上は、己が為すべきことを全うするだけです」
明治四十五年七月、天皇重体の情報を掴んだ東都タイムスの瀬尾亮一は、宮中の大事
が初めて庶民の耳目に晒される状況に記者魂を揺さぶられる。快復を願う万余の人々が
宮城前に額ずく中、天皇は崩御。直後、渋沢栄一ら東京の政財界人が「御霊を祀る神宮
を帝都に創建すべし」と動き始める。一方、帝国大学農科大学講師の本郷高徳は、「風土
の適さぬ地に、神宮林にふさわしい森厳崇高な森を造るのは不可能」と反論。しかし、曲
折の末に造営が決定すると本郷は、取材をする亮一に〝永遠に続く杜〟造りへの覚悟を
語った。やがて亮一も、一連の取材で芽生えたあるテーマに向き合うことに…。
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記者として,明治神宮の森造営にかかるあれこれを取材するうちに,明治時代,明治天皇への思いが募ってくる.二流紙東都タイムズの瀬尾亮一の成長譚でもある.そして語られている明治天皇のストイックな姿が,今の天皇陛下と重なって見え,その大変さが偲ばれた.
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明治神宮造営ときいて、一大国家プロジェクトに挑む職人、技師、あるいは宮内庁の役人のドラマを想像していたので裏切られた。
題材はいいのに、著者の人間の描き方とラノベみたいな文章力のせいで台無し。新聞社のスクープも最後はどうでもよくなって、ただ明治天皇の心の闇が本題となるが、その追究のしかたが甘い。人生負け組の男が天皇ですら孤独だったと確認して溜飲を下げる野次馬根性というか、それだけの話。文筆業しか経験していない、いかにも筆の先でさらっと流した感じの構成力のないストーリー。
タイトルは昭和天皇をあつかった映画「太陽」をもじっているのだろうが、神宮とか神林とかそんなタイトルでいいのでは。
資料にひきずられてうまく構成できず失敗している。男性の実力派歴史作家が書けばもっと化けたのでは。誰かに書き直してほしい。元ネタだったNHKスペシャル見れば十分なのでは。
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明治神宮の森が出来るまでの奮闘と、明治天皇の人となり。あまり思ったこともなかったけど、明治神宮の森は人工の森であり、森を創るに際し覚悟のもとに取り組んだ人々がいた。
そこに祀られている明治天皇に対する人々の東京に祀りたいとの思いがあった。
そして新しい時代に自分を殺して生きていかねばならなかった明治天皇自身の思い。
京都を出てから殆ど戻られることのなかった京都だが、死後は京都に眠りたいという思いもあった。
深く感銘させられた。
今度明治の森に踏み込み、参拝するときは思いが違ってくるだろう。
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以前、NHKスペシャル「明治神宮 不思議の森~100年の大実験」を見た。神宮の森は150年計画で人工的に作られたもので、当時の予想よりはるかに都市化が進んだ100年後の今それが完成していることにとても驚き、感動した。
書き下ろしのこの本も、番組に触発されたのではあるまいか。
「東都タイムズ」はスキャンダル記事中心の三流紙で、「万朝報」を懲戒解雇されて拾われた主人公の亮一は、ネタによっては強請も働く記者だったが、探偵から仕込んだ「天皇御不例」の情報から、彼の記者魂が変わる。
渋沢栄一らの民間人が中心となり、当初、御陵を東京に建設すべしという運動を起こそうとしたが、天皇自身の希望で京都に建設されることが決まっていたため、天皇を祀る神宮を創建すべしという運動に変わった。内苑は国が作り、外苑は民間の献費で作ろうというのだが、なぜ、そういう運動が起きるのか亮一は考え込む。
一方神宮創建には大きな問題があった。神社を荘厳な神域とするためには鬱蒼とした針葉樹の森が必要であり、学者は東京の環境では無理だと否定的だったのだが、政府は場所を代々木に決定し、神宮の杜の建設を帝国大学林学科のメンバーに下命した。
亮一は、なぜ人々が明治天皇の死をこれほどまで悼むのかにこだわりながら取材を進めるようになり、同僚の女性記者とともに帝国大学林学科への取材を重ね、神宮の杜建設の企画を他社に先駆けて報道するようになって、東都タイムズの報道姿勢もスキャンダル紙を脱していく。創建当初の森は針葉樹の大木を移植して荘厳さを確保するが、いずれ枯れていくため、150年後には天然更新によって広葉樹林が形成されていくように、壮大な実験とも言うべき計画的な年次進行による林相の設計がなされた。植樹用の樹木は全国から1万本を集める計画だったのが、寄付は10万本に達した。
亮一は思う。政府の方針に反対する人も、戦争に反対する人も、みな天皇を敬慕する。漱石が書いたという奉悼文も思想と魂が分離している。旧幕臣で天皇御不例を伝えて探偵をを辞めた市蔵は、「あたしなんぞが畏れ多いことですけどね。よくぞ天皇として全うしてくださった、ああ、ありがたかったってぇ万謝の念が、神宮を造営し奉りたいってぇ志の源なんだろうって、あたしはそう解釈してんですがね。」と語る。政府から国民の精神的支柱となるよう求められ、模範のない後進アジアにおける近代立憲君主を全うした明治天皇の生身の姿を知りたいと、新聞社が倒産して浪々の身となっら亮一はつてをたどり、京都へ行って粘って元女官から話を聞くことができた。天皇が日清、日露戦争の戦死者名簿を夜更けまで暗い灯火のもとでながめ、自らの場所に立ち続けたことに感慨を深くする。人々を神宮造営へと向かわせたその根源は何だったのかを書きたいと思う。