紙の本
孤高の4編
2017/01/26 10:11
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
芥川賞に5回落選しても、著者の挑戦は止まらない。底辺から社会をにらみつつ、バーナード・ハーマンやトム・スコットに敬意を表すところがよかった。
紙の本
わたしは好きです戌井ワールド
2016/09/05 13:14
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投稿者:まもり - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいて苦しくなるやるせなさいっぱいの短編集。普段あまり読まないジャンルなので逆に新鮮に感じた。私は酒飲みではなく体質的にそちらに逃げることはできないので根本的に共感はできなかったがグタグタになりダメな自分を自覚しつつそれだからこそ飲まずにおられず…ボロボロになっていく様に「人って…」と傾ぐ。負の思考連鎖の中登場人物はハキダメにいるがそれ程必死で這い上がろうともせず、かといってこだわりのある生き方は変えられずもがく代わりにのんだくれる。読後眉をハの字にして表紙の田口トモロヲさんのイラストにじっと見入った 。
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4編の短編集。「芥川賞5回落選作家!による、血まみれダメ男ブルース」と帯にあるとおり、たしかに主人公は血まみれのダメ男たちばかり。「川っぺりらっぱ」はいい感じで終わりそうだったんだけどな。やはり最後は血まみれ。
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下手くそな演奏しかできないのにダラダラと音楽を続ける。続けていれば何かいいことがあるといった漠然としたフワフワしたものだけがよりどころ。目的をもって生きるという執念はない。我武者羅だけど少なくとも前には転がっていた、そんな時期もあったのに、中年になった今は転がることもできず、ただ沈滞するのみ。何も起こさず何も起きない生き方。童貞に逆戻りしていくような生き方。悲しいペーソス漂う中にも、どこか憎めない生き方が、読む者の心をどこかホッとさせる。読後は清々しい居心地の良さが広がった。
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ダメ男がダメ男なだけに血まみれになる短編集。ダメすぎて哀愁にまみれている。でも、ほんのちょっぴりだけ羨ましさを感じてしまうのよね。ダメに生きるって。。最後の「川っぺりらっぱ」が一番すきでした。
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『青鬼』
格差社会の下層にいる男。ある日からまぶたの裏に青鬼がうつって消えない。現実から逃げ出すと、自分が鬼になっていた。
『カナリア』
大学時代に芝居をはじめてから、ほとんど生活を変えることなく飲んでばかりいたら五十歳になっていた男。カナリアを飼うことに決め、購入に付き添ってくれたモンちゃんがその帰りに事故に遭う。
『酔狂市街戦』
飲みすぎてちゃんと演奏の出来ないバンドのメンバーである3人の男たち。ツアーで訪れた京都の市街地で、いきなり市街戦を始める(幻想)。
『川っぺりらっぱ』
サックス奏者の男。やっぱり酒好きで、前歯が一本ない(前歯がなかったらサックスは吹けないと思う)。サックス教室の生徒たちと家族と川辺でバーベキュー。
西加奈子さんとのトークイベントで初めて知った作家さん(兼俳優)。肉眼で見た彼は「色気のあるダメ男」という印象で、生涯通じて誰かに媚びたことなんてなさそうな雰囲気が漂っていた(トークは終始彼のペースで進み、とにかく自由だった)。
著書もそんな彼の印象に違わず、誰にも媚びてなくて、ストーリー性もなければ夢も希望もない。文字だけなら笑えるけど、現実にいたら冷たい視線を浴びせてしまいそうなダメ男ばかりを描いている。でも、誰にも迷惑かけてなくてむしろ善い人ゆえに割りを食ってばかりでちょっと辛くなった。がんばれ、中年。
町田康さんに影響を受けているようだけど、やっぱり町田康の描くダメ男には敵わないかな〜と、個人的には感じてしまった。
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おかかえ運転手に、売れない舞台役者、同じく甲斐性なしのサックス奏者…。しぶとく這い回る底辺男の諧謔と哀歓と正義を描く。表題作ほか全4編を収録。
戌井昭人らしく全く共感できない情けない男たちが主人公の物語が4篇。にもかかわらず読み出すとズルズル物語に引き込まれ、気づくと読み終わっている。内容的には無頼派に近い気もするが、そんな立派な分け方は似合わないかも。不思議な作風で、「万年芥川賞候補」が頷ける。
(B)