紙の本
1975赤ヘル元年
2024/05/27 15:53
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投稿者:森の爺さん - この投稿者のレビュー一覧を見る
重松清氏の小説は一時期集中的に読み漁り、その後読まなくなっているが、現時点では本書が最後に読んだ作品になっている。
1975年つまり昭和50年は日本のプロ野球史上においても極めて印象に残る年であったと思う。前年V9で連覇に終止符を打ち、「わが巨人軍は永遠に不滅です。」の長嶋茂雄新監督の巨人がまさかの最下位に沈み、万年Bクラスの弱小球団であった広島カープが優勝してしまったのだから、関東の片田舎のアンチ巨人の少年であった私にとっても驚きだった。
本書では、その1975年の広島市を舞台に中学1年生3人、東京から転校してきた巨人ファンのマナブとやんちゃな野球少年のヤスと新聞記者志望のユキオを中心に、カープの初優勝までの道のりと3人とその周囲の人々に起きたことを同時進行で描いており、当然ながら非常に長くなっているが、それ以前に読んだ学習塾を舞台に大人達と子供達の人間関係が交差する「希望ヶ丘の人々」程長くは無い(「流星ワゴン」とか長編でも長く感じなかったが、まあ長く感じるかどうかは作品によって異なると感じる)。
初優勝までのカープと言えば「鯉のぼり」で5月くらいまでは頑張るが、以降は負けが込んで最後はBクラスというのが定番だったが、1975年は下位に落ちることなく夏場を乗り切り「まさか」と半信半疑だったカープファンも「もしかしたら」の熱狂(元々熱狂的なファンが多かったので更に熱狂するのは怖い)に変わり、勝てば優勝を決定する巨人戦を迎えるという実際の軌跡が感じられ、最初「赤は女の色」と今なら問題発言になる理由で赤い野球帽を拒んでいたヤスが赤ヘルに馴染んでいくのがリンクする(今や広島と言えば「赤」のイメージを抱いてしまう)。
一方で甲斐性無しのマナブの父親が手を染めたマルチ商法が他を巻き込みという流れは読んでいてイラつく、仕事が長続きせず妻(マナブの母親)から愛想を尽かされても懲りずにマルチ商法を見抜けずに成功を目論むどうしようも無い父親に振り回されるマナブ(母親は再婚していて頼れない)を見ていると(DVよりはマシとは言え)「子供は親を選べない」と思うし、その点でほろ苦さの残る最後となっている。
そして戦争の傷跡を一身に背負ったような老夫婦を通じて垣間見える被爆都市広島と貧乏球団カープとの関係はかつてプロジェクトXで取り上げられた「樽募金」に代表される広島市民の支援に支えられた市民球団の姿が理解出来るし、全編広島弁による会話もよそ者としては臨場感を味わえた。
早いものでカープが初優勝を遂げた1975から2025年には50年を迎える。古葉監督や衣笠氏も亡くなったし、当時中学1年生だった方々も60歳を過ぎてカープ初優勝を孫に語っている人もいるだろう。
個人的には学生時代に岡山県出身の知人に「広島県が隣だからカープファンも多いの?」と聞いたら「巨人ファンと阪神ファンが大部分でカープファンは余りいない。」と言われた記憶があるので、岡山県出身である重松氏がこのカープ本とも言える小説を書いたのが意外に思った。
紙の本
読みやすい
2016/12/02 11:57
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投稿者:寿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カープの初優勝までの一年と共に、新中学生たちの友情と原爆や戦争で様々なトラウマを背負ってしまった人たちが織り成す心温まるストーリーでした。重松さんの小説はどれも読みやすく、あたたかい気持ちになれますが、この小説もカープの25年ぶりの優勝をきっかけにたくさんの人々に読んでもらいたい小説です。広島の人はもちろんですが、県外の方にも、広く読んで広島のことを知ってもらいたいと思いました。
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1975年、広島に引っ越してきた訳アリの中学生マナブ。被爆都市の事、カープ一番な事に中々馴染めない彼にも少しずつ仲間が出来てうち解けていく。そして、カープは優勝へ!!
マナブは父と共に別の街へ‥‥大人になったマナブはきっと広島に戻ってくるよね‥‥
普段は見ないスポーツ欄を開いたら広島にマジックがついている!!
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1975年初優勝を遂げた広島東洋カープ。その快進撃を広島の中学生と東京から来た転校生、そして原爆の歴史をうまく絡めて小説に仕上げている。中学生を主人公として小説を書くことには長けている著者。1975年という世代を懐かしく思う世代だけではなく、それを知らない世代にも楽しめる小説である。
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1975年のカープ優勝がベースではあるが、そこは流石に重松清。少年目線からのカープを描きつつ、被爆者の苦悩までキッチリと描ききっている。
文庫本だと640ページにもなるのだか、バランスとテンポが良く、飽きてくることもない。
ヤス、マナブ、そして愛すべきその親父。
何よりも広島の街と市民がイキイキと描かれている。
カープ優勝の今年もきっとそんなイキイキとしてるんだろうな。
読むなら今年がベスト‼️
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最も好きな作家である重松清さんの作品ですが、
タイトルを見ただけで「広島ファンじゃないし」と、これまで読まずにいました。
文庫版が出たのでやっと購入しましたが、いい意味で期待を裏切られました。
広島東洋カープのドキュメンタリー的なものを想像していましたが、
この作品には、「カープ優勝に盛り上がる広島の人たち」「原爆が遺した傷」「友情と青春」「家族の物語」という様々なテーマが込められていました。
重松さんは、アラフォーオヤジの物語も上手いですが、
小中学生の青春ものもキュンとくるものがあります。「くちぶえ番長」もそうでしたね。
ちょっと控えめな主人公に、熱い友人たちという構図も良いです。
照れながらも優しく友達想いのヤスが良いです。
最後の「マナブ」の使い方はたまらず涙が出てしまいました。
そういえば、「流星ワゴン」にも北別府さん出てましたね。
重松さんの代表作の一つになることでしょう。映像化希望。
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どんな内容なんだろうと思って読みましたが、単にカープの話ではなく、中学生の友情ストーリー。感動しました。
この本を読むと、よりカープを応援するのに強い感情を持てます。
あと、広島という土地が好きになります。
実際本を読みながら、当時の広島についてネットで色々調べました。
地図やら時代背景やら。
同じく本を読んでた会社の上司からも色々当時の話を聞きました。
そんなこんなで、読み終えて、心が一杯です。
カープファンの方。是非読んで頂きたいです。
きっと、今年の優勝の瞬間には涙をこらえる事が出来ないと思います。
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1975年、弱小だったカープが初優勝!
戦後30年が経っていたが、広島の人たちには戦争が原爆が、まだ重く残っていた。
そんな中、市民に大きな勇気と喜びを与えたのがカープだった。
昔のカープファンは無茶苦茶で、事件も起きたほど。
今はその頃の市民球場から、マツダスタジアムへ移ったが、市民に愛されるカープは今も健在だ!
それを象徴するのが、今年の25年ぶりのリーグ優勝。
重松さんの手によって、カープと少年の友情と戦争とが上手く融合された感動の一冊!これを読むなら、今がベスト!
2016.9.19
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悪くないのだけれど、全体的にパンチが弱い。もう少し畳み掛けてほしかった。広島という土地が持つ、剛毅さ、温かさは心地よかった。期待しすぎず読むとちょうどよいかも。
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ずっと気になっていた作品。カープファンではないが、野球が好きなのでとても気になっていた。今年読むことができてよかった。カープが優勝しそうなこともあるが、原爆を落とされたヒロシマのことを調べてみたいと思ったからである。いつかヒロシマへ訪れ、原爆ドームなどへ行ってみたい。
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広島東洋カープが1975年に初優勝した話だと思って読み進めていくと良い意味で期待を裏切られる。カープの試合や歴史はもちろん、30年前の原爆投下、それにより亡くなってしまった方や今尚身体と心に残る傷痕に苦しみながらもひたむきに今を生きる広島の方達の物語だったから。
家族や連れ、相手を想うからこそ上手く伝える事のできない人情の機微がすごく伝わってきた。
今年のカープも強い!このタイミングで出会えてよかった。
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9月4日のオリックス・バファローズ戦は延長12回に入り、午後5時20分を過ぎていた。突然の豪雨による中断も重なって、当初予定していた新千歳への最終便搭乗を断念することが決まった。新しい行程は翌日、旭川への直接移動だった。
伊丹を発ち、経由地となった羽田。乗り継ぎまでの時間をつぶすために搭乗ゲート付近の売店で何気なく文庫本が並んだ棚を眺めていたとき、一冊の分厚い本が目に入った。手に取った。600ページを超えていた。しかし、直感した。
「これはいま読まないと後悔する」
一気に読んだ。この時代に我々が野球人たりえる理由は何か。モチーフとなった広島球団、そして広島そのものの歴史、また登場人物たちの想いによって、突きつけられるものは多い。次に広島に行くときには、いままでとは違う感情を抱くに違いない。来月末。何としても、と思う。
現職を拝命して7回目の9月5日。野球の神様からもらったプレゼントは、4年連続の白星ではなく、素晴らしい一冊との出会いだった。
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マナブの父親は、ダメな人間だ。ダメなポイントがずれている。ダメな父親のせいで、マナブの世界が壊れるのが怖くてなかなか読み進めない。
やっと読み終わった。
マナブが、強く生きていってくれる事を願うばかりです。
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少年の成長譚×弱小球団の躍進
地方発祥のプロ球団で、(ヨワくても)現在まで地元に長く愛され、地域の人々に育てられ、となると、やっぱ現在ではカープしかないのだな。
昔だと、西鉄とか、南海とか、阪急とか、大洋とかかな?
あと、ロッテ(オリオンズ)とか。
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カープが優勝した年の広島の中学生の話。
今年はカープが強かった。
ちょうどいい年に文庫化されましたね。