紙の本
『あの夏、兵士だった私』
2016/08/23 20:07
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投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
旧制水戸高から東京帝大、日銀から海軍主計中尉としてトラック島へ
多くの仲間、部下を死なせた極限の戦場体験を通して
現代日本の政治状況に警鐘を鳴らす
許 ア
さ ベ
な 政
い 治
を
国会周辺をうめつくしたこのプラカードは
ことし96歳になる著者が澤地久枝に頼まれて揮毫したもの
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俳人・金子兜太による〈魂の叫び〉が詰まっています。
自分の母親との原体験,秩父での自然,そして,秩父音頭の5・7調のリズム。治安維持法により,俳句の仲間でさえも捕らえられる現実。そして,戦争なんて…と思いながらも志願して最前線に赴き,アメリカとの戦闘で死ぬよりも餓死者を多く見てきたトラック島での体験。敗戦後,捕虜になってからの贅沢な生活。帰国してからは,日銀に戻り,労働運動に精を出す。
自らを「自然児」「荒凡夫」「存在者」「自由人」として生きると決め,そのとおり生きようとしてきた兜太。
最後の最後まで「アベ政治を許さない」と書き綴った本書は,戦争の惨さ・惨めさを腹の底から知っている兜太からの熱い熱いメッセージです。
反戦川柳作家・鶴彬のことにも触れていますよ。
身体は「定住」の世界に置きながら,時折,魂を「原郷」の世界に浮遊させることにした。それが「定住漂白」,「定住」と「漂白」の両方を併せ持つ概念です。(180p)
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金子兜太の書いたものだからと、手に取ってみた一冊。
「私たちはきちんと310万人の日本人が亡くなった15年戦争についての体験を聞かなければならない」と誰かに言われた時、神妙にうなづいて聞いていたとしても、何となく「ハイソウデスネ」という何というか「辛気臭い話はイヤダナ」という気持ちが付き纏っていたその話題。
きちんと聞いてしまった。私まで繋がってきた命について、震えがくるくらいには、感じ入ってしまった。
戦争には、反対します。
「世界平和度指数」によると、2022年に世界全体で紛争によって死亡した人の数は約23万8000人だそうだ。
政府を批判しても生爪を剥がされないということ。
空襲のこない自宅。
夫が徴兵されないで帰宅するということ。
原爆の熱風で吹き飛ばされていない自分。
今、鳥肌がたつということ。耳の奥まで心臓になったように鳴っているということ。
それには感謝するしかない。
『海に青雲生き死に言わず生きんとのみ』
そうだ、生きんとのみ。