紙の本
意外な組み合わせもあり、楽しい企画
2016/10/14 20:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タンポポ旦那 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変面白い企画だった。いずれの作品も読んだことがあるが、なにぶん昔のことなので、記憶が薄れている部分があり、懐かしく読みかえせた。
特に「安達が原」は古典能の世界を未来社会に見事に転換した作品で、手塚治虫の中でも最も好きな作品の一つ。これに感銘を受けた夢枕獏が同じ題材を基に、全く異なる物語「黒塚」を著しており、こちらも好きな作品だ。
いずれにしても、受賞作家の選んだ、いかにも原点たりうると思える作品もあれば、意外な組み合わせもあり、その意味でも存分に楽しめた。この上は、他の受賞作家の選ぶ手塚作品も紹介してほしいものだ。
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選んだ理由付きで紹介されている。
うち3つが自伝っぽい戦時中のもの、または戦争を題材にしたもので
自分も未成年で読んでひどく印象に残ったのを覚えている。。
結構、有名なものが多い=皆、印象深かったのだろうなぁ。。
萩尾望都「ジョーを訪ねた男」
→切ない。。。
浦沢直樹「安達が原」
→タイトルがSFなのに、と思っていたら鬼婆伝説を題材にしていたのか。。小学生時代に鬼婆の由来を読んだ時も切なさに衝撃だったなぁ。。。
アッサリ(と見えた)引き金をひけた男性が意外だったけれど、職業や、彼女の今後を考えての葛藤があったのだろうか。。。
諸星大二郎「人間牧場」
→星新一みたい。
こうの史代「ゴッドファーザーの息子」
→友の別れの辛さより、友情の方が記憶に残る、爽やかなイメージのある作品
ヤマザキマリ「ガラスの脳」
→今読むと、妊娠していたら違う展開に。。と思ってしまった
村上もとか「マンションOBA」
→初読。本当、いろんなジャンルを描く人だ。。
岩明均「紙の砦」
→これ、未成年で読んだとき本当衝撃だった。。。生き残っても、ラストが悲しくて。。。
今日マチ子「カノン」
→これも戦争もの。国語の教科書の夏の葬列を思い出す。
妻子がいてカノンの願いがちょっと。。。と思ってしまうのは潔癖すぎるだろうか。。。
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25.7 x 18.2 というB5サイズなので、字も大きくとても読み易かった。
萩尾望都さんと今日マチ子さんが選んだ2作品は読んだことがあったが、
8作品のどれもが人間社会に対する批判に満ちていて、訴えかけてくるものがあった。
手塚治虫さんが描く戦争マンガは悲惨で、登場人物の多くが絶望的な運命に陥ってしまう。
今のロシアよりもっと酷い戦争を日本が行っていたのは、わずか80年程前のことだ。
マンガでは終戦(敗戦)間近の日本が、アメリカ軍の猛攻撃に合う場面が多く描かれるが、
それだけのことを日本は他国に対して行ってきたから猛反撃をくらったにすぎない。
戦争マンガは、領土拡大を狙って戦争に突き進んだ日本を風刺しているのだが、
宇宙人やお化けや獣たちなどは、愚かな人間どもを懲らしめる役回りで登場する。
人間は宇宙の中ではちっぽけな生き物に過ぎないが、ほっておくと見境なく悪事を働くしょうもない奴だ。
手塚漫画を読むと、欲望に流されるがままの弱い人間が支配する社会では、性善説を信じていては生きていけないことがわかる。
手塚治虫文化賞は、朝日新聞社が主催する漫画賞なので、数ある漫画賞の一つにすぎない。
選考者はマンガをよく読む人から選んでいるそうだ。
第1回の受賞者でもある萩尾望都さんは、第7回~第12回まで選考委員にもなっていた。
マンガをよく読む人といえば、三浦しをんさんだが、第13回~第15回に選考委員をしていた。
この間に、よしながふみ『大奥』が選ばれていたので、しをんさん推しかなと思ってしまった。
『大奥』は2021年に日本SF大賞も受賞しているが、15年も前の2006年に萩尾望都さんの『バルバラ異界』が日本SF大賞を受賞していた。
漫画作品からSF大賞に選ばれるのは凄いなと思う。
2006年の手塚治虫文化賞マンガ大賞は何か調べてみたら、吾妻ひでお『失踪日記』でした。