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実際の事件をモデルにした北欧ミステリー。
しかも書いてる本人が、当の犯罪者の兄弟。いわば身内の話。
暴力の連鎖と犯罪、それを追う警部も兄弟にトラウマをかかえている。
これは、まぎれもない「家族の物語」だ。
それも、息が苦しくなるほど締め付けてくる「家族」の。
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リアリティのある話だったけど、それもそのハズ。ネタバレ注意のあとがきでビックリ。解説も秀逸でした。続編も書かれるようで、どんな話になるのかたのしみです。
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どうしてそこまで、銀行強盗に執着し続けたのか。兄弟の結束をそんな形でしか表現できなかった。悲しい家族。捕まっても、なお揺るぎない結束精神。
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実話に基づくという制約がある中で、キャラクターの造形は良くて、作品に入り込めた。けど、その分ラストの部分でのあっさり感が残るかな。
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第三部と第四部の転換が強烈だった。登場人物の見え方ががらりと変わる。彼自身の嫌悪の対象と同化している姿がはっきりと示される。おぞましく哀れな教育の成果としての過剰な暴力は、決してコントロールできず、彼を飲み込んでいる。
暴力のある家庭の悲惨さは言うまでもない。言うまでもないから言語化できていなかったが、この作品を読んで暴力の悪影響の手触りを感じた。
してはならないことは何を捨てても失っても、してはならないのだと、理解できるのは大人だからだ。子供は愛を求めることが正解で、実際にはそこに選択肢はない。
だから、服従させてはならない。
上巻は結構疲れたが、下巻は一気に読めた。
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(上巻より)
軍の倉庫が国内に点在するスウェーデンならではの犯罪の発端や、
盗難予防のインクに染まってしまった札束との格闘、
暴力的な父親と兄弟たち、とくに長男との葛藤と
今まで読んできた北欧ミステリーのなかでも、
秀逸な面白さ。
でも厳密に言うとミステリーとしての面白さというよりかは、
結局は実際の事件を実際の兄弟とともに描いた、
ノンフィクションとしての面白さなのであって、
ミステリーとしては反則技なのかもしれない。
それでも、ミステリー好きとしては読んだ方が良い作品だと思う。
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北欧ミステリ界の精鋭として脚光を浴びるルースルンドが脚本家のトゥンベリと共作したクライム・ノベル。読了後、スウェーデンで実際に起きた犯罪をもとにしており、トゥンベリが事件関係者の身内であることを知ったのだが、そこでようやく納得できた。実は、批評家らがこぞって絶賛している本作に、私はさっぱり感心しなかったのである。読んでいる最中、人物設定や展開に妙な違和感/唐突さを覚え、なぜこうなるのか、という疑問が多々あったからだ。
察するところ、「事実」に絡め取られるあまり、付加した創作部分がおざなりとなり、結果的に辻褄の合わない中途半端な作品に仕上がったのだろう。犯罪ルポなのか、フィクションなのか。その迷い/曖昧さが全編に渡り染み付き、結果的に剥がれ落ちている。穿った見方かもしれないが、本来は筆力のある作家であるはずのルースルンドが、共作者とその家族を気遣い、テーマを十分に掘り下げられなかったのではないかと感じた。
〝物語〟は、母親に対する父親の暴力が常態化した家に育った3兄弟の陰惨な日常を描く「昔」と、工務店を真面目に営む一方で犯罪者の道を歩んでいる3人の「今」、という過去と現在のパートを交互に展開する。文庫本上下巻で1000ページを超えるボリュームだが、エルロイ/ウィンズロウに倣ったと思しき文体はリズム感があり、一気に読むことはできた。だが、余分な贅肉が多く、このプロットであれば3分の1の分量で事足りるし、全体が引き締まったのではないか。特に、狂気に満ちた父親に喧嘩の極意、つまりは「熊と踊れ」的な戦法を長男が教わることが主軸の「昔」は、中弛みが激しく、敢えて分離させるほどの重みを持たない。
「今」に於いて兄弟と幼馴染みの4人は結束して銀行強盗となるのだが、犯罪に手を染める動機を一切明かしていない。俗悪な家庭環境が悪影響を及ぼしたで事足りるのかもしれないが、少年期に無駄なページを割くよりも、何故「暴力」に魅せられ、父親の〝上〟をいく犯罪者を目指したのかを語る方が重要ではないか。
血の絆が暴力を通してしか感じとれない家族。裏切りが親と息子、兄弟同士の間で起こるが故に、関係はより縺れ、憎悪は倍加する。それらは朧気には伝わってくるものの、一人一人の造形がステレオタイプで浅い。全体的なまとまりの無さ、父子の不可解なエピソード、無能な刑事パートの無意味さなど、どれもが踏み込んだ情況を作り出せずに終わっている。事実を優先した結果、肉付けがアンバランスなのである。主題とする暴力の描き方も表面的。投げ出したかのような結末からは、主要人物の一人の生死さえ分からない。
ただ、長男が裏稼業遂行のためにあっさりと信条を捻じ曲げ、絶縁したはずの父親や幼馴染みと和解していくさまは、非常に惨めでありながら、唯一リアリティを感じた。
マイナス面ばかり強調してしまったが、本作に対する期待の反動であり、事実と虚構の上に成り立たせる小説の難しさをあらためて学んだことで良しとしたい。
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『ミレニアム』シリーズ以来、北欧ミステリをちょこちょこ読んでいますが、なかなかおもしろいのが多いです。これも、ぐいぐい読ませる小説でした。
本筋と直接は関係ないのですが、「どれだけ変装しても、身体の動きのパターン、パーツとパーツをつなぐ身体の動き方には個性が出る。新たな身分を得てちがう人間になりきろうとすれば、それを変えなければならない」というような言及に妙に納得させられました。いや、別に身分を偽りたいと考えているわけではないのですが。(2019年4月2日読了)
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暴力に取り憑かれた主人公レオ、父親のイヴァン、二人の弟の物語。二人の弟は途中で犯罪から抜ける決断をする。父はレオに犯罪の手助けに呼ばれるが、かつての自身を振り返りながら、暴力で一線を超えるかどうか悩む。
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このミス海外編2017年版1位。スゥエーデンの実在の事件を元ネタにした犯罪小説。兄弟3人を中心としたチームによる連続銀行強盗で共著者の一人が実際の主犯との3人以外のもう一人の兄弟らしい。スェーデンを舞台にした小説ははじめて読んだ。事件描写や捜査の状況は緊迫してて面白いけど、心象風景や少年時代の事件の描写が細かく分量も多くて退屈。上下巻の大作でかつくどいところもあって、読み進めるのに苦労し時間がかかってしまった。読みやすさを重視する自分的には評価つけれない。まあ、面白かったし、読書好きの人なら何の苦もなく読めるのかも。
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長い。父親との確執に至る章を挿入する形式は取ってつけたような印象を受け、小説としては普通かなと思ったが、実際に起きた事件の再構築による物語ということ、更には翻訳者あとがきを読んで知った作者にまつわる事実(これはネタバレなんでしょうか?)を知るにいたり、すさまじい小説だと読後感じました。
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本当に読み応えがあった。
実在の事件をモチーフにした圧倒的迫力のクライムノベルの下巻。
あとがきを読んで、あらためてこの強盗事件を起こした3兄弟(実際の事件を起こしたのは4兄弟で、そのうちの犯行に加わらなかった一人が本書の著者・ステファン・トゥンベリ)の視点や心情がリアルに描かれていることに驚愕した。それほどまで、犯人グループの心情に寄り添ってこの事件が描かれているのだ。
次々と成功する銀行強盗、犯人グループに翻弄されまくる警察。
もはやこの『軍人ギャング』と名付けられた犯行グループの犯行を誰も止めることはできないのか。
しかし、どんなに完璧な犯行も、回数を重ねていくごとに、不安が募り、グループ内での関係に変化が生じてくる。
これまでは完璧なリーダーとして君臨していた長男のレオに対して、弟たちは違和感を覚えていく。
「暴力に支配されてしまった兄」
これこそ弟達が感じてしまった違和感だ。
どんなことであっても、物事は『中毒』になり得る。
『銀行強盗中毒』になってしまった兄レオは、さらに大きな銀行、さらに高額な金額を求めて強盗計画を作って行く。
そして、犯行に破綻がやってくる。そう破綻はいつも内部から始まるのだ。
三兄弟の心情が『現在』と父親達から虐待を受けていた『過去』の二つに分けられ交互に描写され、読者は三兄弟の心情に深く深くのめり込んでいく。
重厚な物語の結末は、驚くべきずさんな犯行により幕を閉じる。
読者の誰もが「そんな計画で、そんなメンバーでは成功するはずがない」と分かっているのだが、レオは突き進んでいく。
本書を読み終わった後、長い沈黙が僕の胸に訪れた。
圧倒的な暴力は人の人格を変える。
それは子供のころから育まれる。
人生とは、もう既に始まった時から終わり方は決まっているのかもしれない・・・。
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2019.12.11
あまりにも破滅型過ぎて共感出来ず。
他もたくさん理解不能な設定や発言が多かった。
事実を元にしてる所のみがセールスポイント。
学生時代なら好きだったかもなぁ。
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事実に基づいてるって知らなかった。
北欧小説だから期待してたところもあったけど、ある意味逆に裏切られた。
もしかしたら翻訳が良かったのかもしれないけど、題名からの想像と違って、当事者の繊細な感じが想定内だったから良かった。
でも、最後はね。
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兄弟が銀行強盗を次々に成功させると同時に、少しずつ明らかになってゆく、その目的。
レオは自身の中に存在する、いくらお金を奪っても決して癒されない深い孤独と、父親への想いに気づき始める。
他の誰よりも父親に認めてもらいたかったのだというレオの心の叫びが、過剰な暴力となって形を変えてゆく様が、何とも悲しい。
この作品では、親子、夫婦、兄弟、親友、恋人など、さまざまな関係性に基づく愛情と暴力の形が描かれている。
言葉では伝えられない感情が暴力となり、その想いが強ければ強いほど、彼らは本当に破壊しているものが何なのか、その実態が分からなくなっているようだ。
一番冷静だと思われたレオが少しずつ感情に飲まれてゆくのとは対照的に、兄弟を想うフェリックスの心の強さが際立っていくのがとても印象的。
銀行強盗がテーマのクライムサスペンスだと思って読み始めたが、思った以上に人間の愛情や絆を深く描いてあってとても楽しめた。上下巻を通して中々にボリュームがあるのだが、一気に読みきってしまう。