紙の本
ジェリーフィッシュとはクラゲに似た形の小型の飛行船のこと。
2018/07/29 04:22
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
第26回鮎川哲也賞受賞作。
帯に<新時代の『そして誰もいなくなった』登場!>、とありますが・・・物語の舞台はパラレルワールド展開の80年代。“ジェリーフィッシュ”を成立させるために世界をイチから作り出すところはさすが鮎哲賞応募作!
まぁ、若干文章が固いとか、一部登場人物の個性が薄いもしくは類型的過ぎるとかはありますが、そして刑事コンビのアニメのような会話っぷりも私はもうげんなりする年代になってしまいましたが、80年代だったらこんなもんかな、と思えるし。
なによりも、それを超える大ネタトリックの存在には大向こうから声をかけたい感じ。
そうそう、鮎哲賞といえばこういうトリックよね!、としみじみします。
巻末には審査員総評が載っていて、これも面白い。
辻真先の「ぼくに比べたらみなさんにはまだまだ時間があるんだから」的な発言にはちょっと笑ってしまいつつ、でもドキドキするのでやめてください。
電子書籍
翻訳じゃない洋物ミステリー
2018/03/18 16:02
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投稿者:koki - この投稿者のレビュー一覧を見る
古き良きアメリカンな世界観を純粋な日本語で読めるのが嬉しい。そこに真空気嚢というちょっとしたSFがミックスされて、『そして誰もいなくなった』式のミステリーが繰り広げられる。小型飛行船という舞台をしっかり活かしていたのがよかった。
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時代は1980年代。ジェリーフィッシュと呼ばれる小型の飛行船が開発され世界を飛んでいた。ジェリーフィッシュを開発している会社の次世代機が冬山で事故を起こしたと連絡が入る。駆けつけたマリアと蓮は軍により機体を回収され、残されたのは6体の遺体のみ。事故にしては遺体に他殺の形跡があるというのが不可解だった。
時代を少し過去にし更にジェリーフィッシュというSF要素を加えた本格ミステリ。構成としては章ごとに捜査パートと事件中パートが交互になっているため、アガサの「そして誰もいなくなった」より綾辻の「十角館」に近い。
ミステリ部は秀逸。現代版「誰もいなくなった」と言われれば身構えて読んでしまうが、それでも終盤のカタルシスは読んでいて楽しかった。
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2016年鮎川賞。
ミステリ枠で、今年トップクラスの良作。
ハウダニットが大味のトリックで解かれたとき、インパクトのある真実が引きずり出される、ミステリの理想型のひとつ。
またメイントリックに加え、密室トリックやフーダニット等、プラスαのトラップもいちいち効いていてニクい。しかも大袈裟にしないから、プロットに綻びが出ない。
文章も新人とは思えないクオリティだし、キャラクターも必要充分に書ききっている。
総じてとても完成度が高い。傑作を読んだ、と読後に感じる、いうことない読書体験をさせてくれた。
4+
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トリックもプロットもよく考えられてはいると思う。
けど、とあるトリック(仕掛け)をサプライズっぽく演出したのはいいんだけど、物語の中でその仕掛けが掛かる部分を強調してこなかったために、作者の意図が伝わり辛くなっているのは残念。
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独自の設定である気嚢式浮遊艇の普及した近過去の世界が面白い。ただ本格かというと疑問。『そして誰もいなくなった』を踏襲して本格の要素を使っているが、推理要素は少なめ。推理よりも新事実から発想で解決していくので本格の雰囲気からはどんどん外れていく。本格のガジェットがあまり活かされない。犯人が用いたトリックや手段は最初から数通りに絞られ、サプライズの作り込みが弱い。むしろ情景や優美さ人間臭さドラマチックさ、そのあたりが強い。ますます本格にこだわる必要性がなく、綺麗なストーリーモノのミステリとして読む方が楽しい。
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デビュー作なのに、ここまでのミステリを書いていて、ミステリの面白さを表してる作品はない。
すごく良いミステリです。
久々に正統的なクローズドサークルで、久々震えるような大仕掛け。いい感じでした。
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本格ファンが渇望していた古き良きミステリ
新技術の航行試験中に消息不明となった小型飛行船・ジェリーフィッシュ。開発部部長の死を皮切りに、クローズドサークル内で犠牲者がまた1人と増えていき・・そして誰もいなくなった。
80年代のパラレルワールドという舞台設定がされてるうえ、船内と地上を交互に描いていく様子は「十角館の殺人」を強く意識しており、全体的にどこか懐かしさを覚えます。一方で、従来の型にとらわれずに、そこから発展させて新しい趣を演出しているところは、"21世紀の"という評価が的確に表してくれています。文章が少しこなれてないなと感じましたが、気になる程ではありませんし、無駄がなく端正にロジックを積み重ねていく辺りは玄人好みの作風と言えます。
ジェリーフィッシュが飛び立っていく大空のように、ミステリに無限の可能性を垣間見ることができた作品です。
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マリアと漣の会話が痛くて、うわーやめてくれ、もうそこ掘り下げないでーと悲鳴が出た。漣のマリアに対する皮肉が低レベル(小中学生か?と思われるほど)で、むしろ漣に対して引いてしまう……。
トリックは“あれ”さえ先に見つかっていれば万事解決だったのでは?と思ってしまい、書き時にアンフェアさを感じてしまった。まあ、自然な成り行きとして有り得ることなので、そう感じたのは私の感性の問題かもしれないが。
また、文章の論理性がこちらとずれている感じがして、「え?今そういう話をしているの?そこから導き出されるのはそういうことなの?」と戸惑うこと数回。
説明不足であり詰め込みすぎと言おうか。読んでいてあまり面白くは感じなかった。
驚かそうという意図を感じる文章に、そこまで驚きを感じなかったのも辛かった。
答え合わせのページで、ところどころ犯人が上手くいきすぎなのも引っかかった。辻褄合わせの時間が始まったような感覚がしてしまい残念。
確かにこれはエラリー・クリーンではなくアガサ・クリスティーだ。しかし本家「そして誰もいなくなった」の方が読み物として美しいことは言うまでもない。「21世紀のそして誰もいなくなった登場!」の帯に期待しすぎてしまったかな。
個人的にだが、買わずに図書館での入荷を待っても良かったと思う作品。
それでも★3なのは、設定は十分書き込まれているし、本としては成立していると思うから。
※ここからややネタバレ※
単なる希望だが、北山猛邦「『ギロチン城』殺人事件」ばりに、後から読むと気付く叙述があると良かった。来るか!?来るか!?と期待してしまった……。
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架空の乗り物「ジェリーフィッシュ」内で起こる連続殺人事件と、事件後の警察による捜査が交互に進められていくのですが、双方で真犯人の動機が掘り起こされ事件の全貌が明らかになる展開が巧妙で引き込まれます。
真相は既視感のあるトリックを上手く組み合わせた感じで意表を突くことに成功していますが、辻褄合わせで苦しい部分があり、ややアンフェアに感じてしまうのが残念なところです。
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『そして誰もいなくなった』を連想させる、クローズドサークルもの。
叙述トリックは興味深い。が、実際に彼らに研究を完成させられるのか疑問だし、回想場面で、レベッカがなぜあれを贈ったのかがわからずもやもや。
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第26回鮎川哲也賞受賞作は「現代版“そして誰もいなくなった”」の名に恥じない(原著は未読ですが)フー/ハウダニットの傑作。鮎川賞応募作品ですから「まずはトリックありき」なのは当たり前。多少の強引さははあるもののそれを超えて面白ければ文句はありません。
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本作を読むにあたって、事前情報は無ければ無いほど良い。オビや煽りで、真相はともかく展開の予想がついてしまうのはもったいない。それを置いても、意欲作であり一気に楽しめる作品。7.5
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事件が起こる過程(被害者&犯人)・事件の追求(警察)・回想(犯人)がそれぞれ1章の中に順番に描かれていた。警察が違う推理をしていたら「そこ違うんだって!」と言えないもどかしさを感じ、いつの間にか物語の世界にどっぷり浸かっているのを実感することが何回もあった。
読了後にタイトルをじっくり考えると少し悲しい気持ちになる本だった。
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第26回鮎川哲也賞受賞作。
小型飛行船というクローズドサークルで起こる殺人事件。
事件がどのように起こっていったのかという当事者視点、事件発覚後の捜査員視点、犯人の過去の視点が交互に描かれていてどんどん話に引込まれる。
捜査陣はラノベ風にキャラが立ちすぎている反面、飛行船の乗員たちはあまり印象に残らないまま死んでしまう人もいてちょっと残念。
しかし本格ミステリど真ん中なトリックは爽快だし、ラストシーンが切なく美しい。