紙の本
再起をかけるメロディー
2020/11/21 15:10
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
離婚によって生き甲斐をなくした女性と、指が動かなくなったピアニストとの触れ合いが繊細です。ふたりっきりの静謐な時間と、それぞれが選んだ答えが感動的でした。
紙の本
物語りを物語る物語り
2017/01/17 20:11
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投稿者:ruraru - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分自身の物語りを語るなかで、負の経験(と思われたもの)を自分の人生の中に肯定的に位置づけ直すこと。それがカウンセリングにおいてクライアントのめざすもの(もちろんカウンセラーに導かれながらだが)だとすれば、そうしたカウンセリングのプロセスそのものをクライアント自身が一人称で物語るのがこの小説である。だからこれは悩める主人公が自身の物語りを物語ることそれ自体を物語る小説。従ってまた、もう一人の主要人物である若きピアニストは主人公の投影であり、逆にピアニストも主人公と同じような境遇にある限り自分自身を主人公に投影している。つまり互いに理解しているといっても、それは、互いに自分を相手に投影している関係にすぎない。一方で、後半に登場する、暴力的な夫から逃れてきた母子は、主人公にとって真の他者であるように見える。そしてこの他者によってはじめて主人公は自身の負の経験と向き合い、その意味をとらえ、人生の行路の中にそれを位置づけることができる。小説として高く評価は私はしないが、今の点は面白いと思う。それよりも、とても好きな言葉に私は出会った。「 世界は私を必要としていない。・・・・なんという大きくてあたたかな拒絶」。この言葉に出会えただけでこの小説を読んだ価値はあった、と私は思っている。
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離婚のショックで落ち込む元議員の妻「まゆこ」。ジストニアという病で手が動かないピアニスト「トキオ」。二人はうつ病にまで追いつめられるが、年齢を重ねる中で誰もが苦しみながらたどり着く「ありふれた答え」へのきっかけを掴んでいく。「私もトキオも取るに足らない存在で、でも生きていてそれだけでじゅうぶんなの」。等身大の自分を応援できる人生主人公への復帰は近い。
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いつか、私にも本当の自分の気持ちに気付く時が来るのかな
気持ちが強いときからトレーニングしたほうが良さげだな
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おえーって感じ。読みたくない。でも、おえーってなっても、わたしもこの気持ちに心あたりがある。さいご、なんかよかったね。
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うーん、悪くはない。が、前作の方が良かった。前作の『四月は少しつめたくて』と、構成も似ているが、あっちの方が自然だった。
40歳のやつれ果てた女が、いくら難病で鬱でも、年下の新進ピアニストの男に声を掛けられるというのが、あり得ない気がする。前作は中年のかつては人気のあった詩人と若い編集者だったから、気持ちが入りやすかった。それに、前作はカルチャーセンターの生徒たちの人間模様もリアルで面白かったが、こっちは残り四分の一になるまで、ほとんど二人きりの世界で、息が詰まる。唐突に現れたシングルマザー母子も不自然。
比べたらきりがないが、それだけ前作の出来が良かったわけで、前作を読んでいなければ、これもそこそこ良かったのかもしれない。しかし、『おしかくさま』『四月は少しつめたくて』と、「おおっ!谷川直子いいぞ!」と盛り上がった気持ちが少し冷めたのも事実。
ピアノに関しては、ほとんどドビュッシーのアラベスクしか出てこないが、トキオの指導が的確で、その部分を読みながら、もう一度弾いてみるか、という気持ちになった。ピアノの音や構造についても『羊と鋼の森』より、表現が上手かった。
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うつ病になってしまった政治家の元妻とピアノが弾けなくなったピアニストが世界一ありふれた答えを見つけるまでの話。『四月は少しつめたくて』よりは、こちらの方が読み易く思う。
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自分の考えと心は違う。
答えはタイトル通り、シンプルなんだけど、それが一番難解で難関。
人はいつだってもがき苦しむのだ。
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2017.2.11
自分の身に何が起ころうと世界は毎日動いている。それは分かっていても、実際に自分の身に辛いことが起きたときにそれを事実として受け入れるのはなかなか難しいもの。それでも、他人から見ればわからない辛さなんかを人はそれぞれ抱えていて、そうやってみんな毎日を生きてるんだと思う。タイトル通り答えはきっとシンプルで、でもそれに気付いて認めるのはなかなか大変なことなんだろうな。読み進めるのが苦しいような、でも登場人物の気持ちがわかる場面もあって。切なくてちょっと苦しい、でも人に優しくしたくなるそんな本だった。
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ピアノの練習をすることが大きな部分を占めている.ドビュッシーのアラベスクがずーっとバックに流れているような感覚の中で,一緒に死のうと約束したうつ病の二人がカウンセラー的な問答をしながら,生きる事を諦めきれないで進んでいく.最後唐突に現れた親子の登場で一気に物語が加速しいい感じに終わる.なかなか,透明感のある物語だった.
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表紙の絵に惹かれて。波打ち際の白いピアノが孤独で寒そう。このピアノを鳴らすのは誰でもいい。音楽は誰も必要としていない。ドビュッシーのアラベスクを聴きながら読んだ。レベルは全然違うけど、ピアノを弾きたくなった。
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同じ病の苦しみを持った二人のお話なんだけど、とても静かな、色でいうと水色の時間がずっと流れていた。
まゆこのアラベスクの曲のイメージだからかな。
読みながら、頭にアラベスクが流れていた。
ピアノを練習し、少しずつ氷が溶けていくように変わっていくさまが良い。ずっと平坦に進む感じが、親娘との出会いで流れが速くなる。
最後のセリナのアラベスクは良かったな。
ずっと重い小説を読んだ後だけに、少し気持ちが軽くなれた。
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2冊目の谷川直子さん。
人が「治る」ってこういうことなんだなぁと。
世界が外に開く瞬間みたいなものが丁寧に描かれている。
この人の書く文章はなんだか独特。
何が独特なのかわからないけど。
なんだろうぁ、この感覚。
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ジャケ買いだったし
どうしても読みたいわけでもなかった。
でも読み始めたら最後まで読み終えるのに
時間はかからなかった。
心の中のもやもやは
病名がつく、つかないに関係なく
いつも自分を支配し続ける。
傷を舐めあいたいわけじゃない。
知った気になんかなってほしくない。
誰かのしあわせを願う気持ちの
なんと尊いことか。
自分以外の誰かのための時間。祈り。
生きようとするとき、そのエネルギーの源は
『誰かへの想い』なのかもしれない。
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議員の夫のために生きてきたのに、離婚することになって裏切られた気持ちの元妻、ジストニアという病でピアノが弾けなくなった天才ピアニスト。ともにうつ病と診断され、苦しい日々の中に答えを見つけようともがいている。自分がカウンセリングを受けているような気持ちになりながら、答えは自分の中にあるんだと改めて感じた。
終盤の母子の登場から物語が一気に加速して、とても温かい気持ちで読み終えた。