電子書籍
翻訳の奥深さを感じましたよ
2016/11/28 15:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岐阜の森人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
久々にデジタルで読書した。日米開戦当時の在米日本人の苦難を描いた「日々のひかり」に感動をしたので、J・ルービンさんのエッセイを読んでみた。エピソードがいろいろあるが、第一部では翻訳にあたりルービン氏は村上さんに実際色々確認して正確を期していることがよくわかった。私自身名作「ねじまき鳥クロニクル」は何故か奇妙にもルービンさんの英語翻訳のみでしか読んでないが、日本語原作のイメージがよく分かったことを覚えている。エッセイ第二部の誤訳についての追求している執念深い?日本人(クレイマーではなく本当の学者だと後で分かるが)に対する真摯で正直な氏の態度に人柄を感じた。翻訳者としてのあるべきで姿であり氏は本当に信頼できる方と分かった。又能や日本文化にも何にも増して私以上に造詣が深くその点でも親しみと同時に敬意が湧いた。
紙の本
自伝的エッセイとしても
2023/05/28 14:38
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
村上春樹の英訳者の一人であるジェイ・ルービンのエッセイ。村上春樹ファンはもちろんのこと、日本文学者の自伝的エッセイとしても興味深い。
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2016年67冊目。
夏目漱石、芥川龍之介や村上春樹の翻訳を手掛けるハーバード大学名誉教授。
村上春樹のインタビュー集によく出てくる名前なので気になっていた。
村上作品と出会った時の衝撃からその後の追っかけっぷりまで、本当にこの人の作品が好きなのが伝わってくる。
とても面白かったのが、翻訳時の単数・複数の使い分けの話。
村上春樹の『1Q84』の、二つの月がタマルに見えているのか見えていないのかをめぐるシーンで、「今日は月がきれいだ」というセリフを「moon」と訳せば一つしか見えていないことになってしまい、「moons」にすれば二つ見えていることになり、どちらにしても解釈が限定されてしまう。
結局ジェイ・ルービンが使ったのは「moon-viewing」(月見)問いう単語だった。
「翻訳というものは一番強烈な読書方法だと言っても過言ではない。」
「翻訳者はある程度発明家にならなければ、原作のムードやイメージを十分に読者に伝えられない。」
一つひとつの言葉に、物凄い積極性を持って向き合い続ける翻訳者の姿勢にとても感銘を受けた。
夏目漱石や芥川龍之介のように、現存しない作家には解釈を確認しようがないから、本当に大変なことだと思う。
それにしても、初期三部作で出てくるバーの名前が「ジェイズバー」なのは、とても嬉しかっただろうな〜と思う。
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村上春樹の海外での評価へ、翻訳に関する話しは面白かった。芥川に関する話しなんかも読んでて興味深かった。しかし、作家の個人的な日本の話しや、息子の話は残念ながら興味ない。残念ながら翻訳家であって本格的な
作家でもエッセイストでもない。
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だれよりも村上春樹のファンであることがわかります。本当に心奪われてるよ。
村上春樹にはいる前にそうとう日本文学を学んできた方で、日本文学や謡や能など日本芸能への造詣がふかく、その博識ぶりがわかる。とくによく語られるのは、夏目漱石と芥川龍之介への敬愛。江藤淳氏の研究室で夏目漱石の書に囲まれて声が降りてくるのを待つあたりとか、ルービン先生…となった。見ればなつかしや。
『日々の光』も読んでみたい。
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著者は村上春樹氏の翻訳者なので2015年に出版された小説と村上作品の雰囲気が似ているのはある意味当然、好ましく思っていた。
ところが『日々の光』(初めての小説)は、村上春樹との交流が始まる前、既に完成していたと知り驚く。生まれも育ちも違う二人だけど出会うべくして出会ったのか。
ほかにも運命の引き合わせのような数々の出会い、家族愛、友情などについて ルービン氏の誠実な人柄と仕事に対する真摯な姿が伝わるエッセイ。
もともと漱石や芥川など、日本文学の研究と翻訳者だった著者と村上春樹の公私に渡る付き合いの深さは、村上作品にも少なからぬ影響を及ぼしたはず。息子さんと音楽の出会いも素晴らしい。感謝と尊敬の気持ちで読み終えた。
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日本文学、日本文化に対する熱量が半端なく、読んでいるこちらのハートが熱くなる。
村上春樹がメインだが、芥川龍之介、能、そして、翻訳、自作の小説『日々の光』など、多岐にわたる。
重複がいくつかあるが、微妙に異同があるので、まあ、よしとしよう。
日本語が美しい。
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村上春樹の翻訳者として有名なルービン教授の翻訳夜話。
この人のはノルウェイの森を読んだだけですが、春樹っぽい忠実な訳で良かったです。
ネジマキ鳥は流石に長過ぎて読む気力が…
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永年の大いなる疑問がある。
もし私の母国語が英語だったとして、やっぱり今と同じように村上春樹が好きだったろうか?
というのも、私は、村上春樹さんの書く日本語が本当に本当に好きだけど、物語の内容、つまり、ストーリーラインとかキャラクターとか結末とかは全然好きじゃないことの方が多いから。
だから、違う言語になったら(=大好きな要素が取り除かれたら)好きじゃないかもしれない、という疑念がどうしてもぬぐえない。あるいは、「外国の人は村上春樹の何がいいと思っているんだろう?」とか。
そういったことを考えていると「そもそもほんとに外国で受けてるのかしら・・・一部のマニア受けを日本人が大げさに言ってるだけじゃないのかしら」と疑い始めていたけど、この本を読んだら、実際に世界中の多くの人に愛されている証拠がいっぱい書かれていて、ビックリした。
す、すいません。疑ったりして。
でも、やっぱり、彼の何が受けているのかは、最後までよく分からなかったけど・・・。
だけど、ジェイ・ルービンさんが、日本という国の文化と文学を本当に本当に、私などが足元にも及ばないくらい深く深く愛しておられるのは非常によく分かった。
なんだか、その愛がまぶしくてクラクラした。
日本人なのにロクに日本語の文学を読んでなくて、その真価も全くと言っていいほど理解してなくて、ほんとすいません・・・と言いたくなった。
タイトルは「村上春樹と私」だけれど、前半よりも後半の、村上春樹さんとは関係のない話の方がおもしろかった。
特に、翻訳の苦労の話(日本語は数をあんまり気にしないところ)と、検閲の話(同じ検閲でも、戦前と戦後では微妙に意味合いが違うところとか)。
海外の編集者が世界の文学のトレンドにものすごく敏感なのにも驚いたし、編集者からルービンさんに本の企画の相談がくるところは、内容が素敵でわくわくした。もう出版されているんだけど。
ほかにも、「MONKEY BUSINESS」がしぶとく生き残ることになった裏事情にもビックリした。すごく興味深かった。海外で継続されただなんて、驚きしかない。しかも私には思いもよらない理由で。なんだか隔世の感。
息子さんの仕事についての話は明らかに蛇足で宣伝しすぎなような気がしたけど・・・父親として自慢でもあり、心配の種でもあるのかな。
「日々の光」は、もともと興味あるテーマなので、ぜひ読んでみたいと思った。