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『バベル九朔』で躓いて、もう万城目作品は読まないかなと思っていたけど、短編なので読んでみた。
万城目の得意分野とも言える小作品たちだろう。こういう既存の事実というか設定があり、そこから空想を膨らませたもののほうが彼の持ち味が出る。
知らなかったが中国の歴史書にも造詣が深いとのことで、今回の5作品は『西遊記』『三国志』『史記』に原典を取っている。
『史記』は挫折しているが、『西遊記』も『三国志』も万城目に負けず、いろいろ読んでいるので(特に『三国志』)、面白く読めたかな。
『西遊記』はいわずもがな、あのTV番組の影響も少なからずあろう。万城目もおそらく。。。
『悟浄出立』は、いつも三番手の悟浄が隊列の先頭に立つシーンがエンディングだ。でも、慣れない先頭、どこへ向かえばいいか分からない。
すると悟空が言う;
「馬鹿か、お前は」
悟空は呆れた声とともに、手綱を引いて馬の動きを止めた。
「こっちが西天ですよ、と書かれた立て札が、どこかに用意されているとでも思ったか?ただ、自分が行きたい方向に足を出しさえすればいいんだよ!」
このシーンなんて、悟空の声、口調は間違いなく、堺正章の悟空だ(けっして香取慎吾などではない)。
そんな原典の力を借りつつも、それぞれの登場人物の新たな一面を垣間見せるストーリーが見事だ。
万城目の真骨頂、なかなか楽しめた。
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さごじょーが主役の話?ん?と読み進むうち中国文学の奥深さにどんどん引き込まれてゆきまする。
ちょっとがんばって三国志とか手に取ってみよかいなーと思った一冊
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マキメマナブ氏の本は当たり外れが大きいが、この本は私には当たり、であった。
三国志や史記、西遊記をもとにした創作であり、全体としておもしろく読んだが、なかでも虞姫寂静、父司馬遷が個人的にお気に入りのエピソードである。己の正道とでもいうべきものを、絶望の中でも貫いた登場人物に心打たれたからである。
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だれか、編集者。
中島敦「悟浄歎異」「悟浄出世」の続編アンソロジーを出してくれないか?
万城目学版は充分面白かったし、納得できる出来だった。
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中国の話をもとにした小説。著者の解説もよい。wikipediaを使いながら読んだ。中島敦を読みたくなった。
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いやこれは、いつもの万城目調は全くないね。
作者名を伏せて読んだら絶対にわからないだろうな。
むしろ実に正統な歴史小説だ。
こう言うのも書けたんだとちょっとビックリ。
5つの短編が入っているのだけど、題名から西遊記関係の話が続くのかと思ったら、それは最初の一編だけで後は三国志や史記を下敷きに、脇役だった人たちを主人公にした話だった。
幸いなことにどれも原典のお話はすぐにわかったので、作者がそれをどのように料理したかがわかって面白かった。
個人的には虞美人の話と司馬遷の話が好み。
虞美人の設定が絶妙でその最期も印象的。
そして司馬遷に再び筆を執らせる娘の激情がいい。
やっぱり想いの物語が好きなんだよね。
この勢いで作者にはぜひ中華なファンタジーを書いて欲しい。
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いつもの万城目学作品というものではないけれど、それでも登場人物の複雑な心情がひしひしと感じ取れて、短編だからこそ面白かったように思います。中国古典を少し知ってた方が面白く感じたので、巻末の説明書きを読んでから読み進めました。
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万城目さんて、根っこが物凄く真面目な人なんだろうな。
些細なこともきちんと考えて、答えを出していくような。
史記にちょっと興味が湧いた。いい翻訳があるだろうか。
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沙悟浄、趙雲は知っているけど、他の人は名を聞いたことがある程度。関心を持ってこなかった人物の話を楽しめるかな? と少し不安があったのですが、「虞姫寂静」と「父司馬遷」が心に残りました。
万城目さんが描くいつもの少し不思議な日本の風景は出てきませんが、たまにはこういうのもいいですね。
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本屋の夏の文庫フェアコーナーで、わたしは西遊記ファンなもんでタイトルぱっと見で「おっ中島敦のやつか。買お」と衝動買いしたやつです。有名な作家さんやけど初めて読みました。中島敦リスペクトで、中国古典の脇役に焦点を当てた短編集でした。
西遊記以外は全く知らなかった(高校古典の漢文までの知識しかありませんこーゆーの)わたしでもものすごーく読みやすかったし面白かったです。
しかし胸糞悪い展開ばかりを招く八戒をあんなに美化せんでもいいと思うな。八戒はひどいやつなので(…)どんだけ綺麗な話にしようとぜんぜん繋がってる感じもしなければ納得もできなかったよ。あーいうキャラが八戒の魅力なんやし、何より悟空の出番が少なかった。でもニヤニヤしている悟空を見れたから割と満足です。
中島敦のやつもっかい読もう。「李陵」は読んでないし。
ほかの話もどれも面白かったです。
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中島敦の悟浄出世からインスパイアされた表題作の他に、中国の歴史上の人物や出来事を元にした4作が収録されている短編集。
悟浄出立は爽やかで面白かったけど、中国史ってのはどうも全体的に血なまぐさくてグロテスクなイメージが伴って、読後感がいまいち。。司馬遷が宮刑というグロい刑を受けていたなんて知らなかった。
普段はすっかり忘れていたけど「李斯って焚書坑儒の人よね!」と、世界史で習ったことや漢文で習ったことをふと思い出すのも面白かったけど、たぶん再読はしない。
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初めて万城目学さんの作品を読んだ。
どの話もおもしろかった。
私の好きな「人生訓話」的なものが入っているのと、言葉が重くてよかった。
特に表題作の『悟浄出立』は悟浄が前に出るのもよかったが、八戒の人生が興味深かった。
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◆◇◆「名脇役たちの物語」◇◆◇
『悟浄出立』 万城目学
今までの万城目学とは一味違った短編集。有名作品に出ていくる『主役ではない』登場人物たちにスポットを当てている。西遊記の沙悟浄、三国志の趙雲、項羽と劉邦の虞美人、はたまた史記の司馬遷の娘など、なかなか渋い人選です。
どの登場人物たちも見せ場をもった存在感のある名脇役だが内面が描かれることは少ない。特に三国志の趙雲は人気キャラとして名高いが仕事をそつなくこなしていくイメージが強い。今作では、主人公の劉備たち3義兄弟や天才軍師の孔明たちの影で故郷に思い悩む人間らしい様子がえがかれている。とても新鮮です。
僕は主人公ではなく、脇役たちが好きなのでとても楽しめました。改めて、たくさんの人間によって大きな物語があると思えます。最近はスピンオフで脇役を主人公にしたものが多いです。他の古典でもできると面白いかもしれませんね。
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悟空、超雲、虞姫、荊軻、司馬遷。それぞれ見てきたように創造を逞しくして、「小説」を切り取る。なかなかよろしい。
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西遊記の悟浄を主役にした物語……そんな単純な理由で購入したが、最近自分が読了した『李陵・山月記』『項羽と劉邦』と同一線上にある物語を、万城目氏の筆で読めたことで面白さが倍増した。中島 敦著「我が西遊記」がどうしても読みたくなった。悟浄も八戒も天帝に仕える神仙だったという驚き。そのような目で見ると、三蔵法師一行に別の姿が見えてきそうだ。