アレント思想の分かりやすい解説
2017/05/14 13:02
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Takeshita - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハンナ、アレントは師のハイデッカー、ヤスパースにも劣らぬ西洋思想史の正統を受け継いだ偉大な学者である。女性であり、ユダヤ人であり、英語が喋れないと言うハンデにも関わらず、アメリカ亡命後英語で見事な著作を書き大学教授にもなった。著作は大部であり、該博な知識とドイツ哲学の伝統を踏まえた精緻な論理で必ずしも読み易くはないが、著者はこの人の他の著作同様、H.アレントの思想を判りやすく解説している。全体主義と言う20世紀の怪物、そしてそれと終生格闘したH.アレントの思想を知るための格好の入門書。
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ブログ更新:『アレント入門』中山元
http://earthcooler.ti-da.net/e9403572.html
本書は思想家の「入門もの」であるが、ハンナ・アーレントがドイツを離れて亡命するきっかけに切り口をしぼっている。アーレントが亡命したのはナチスの迫害を逃れるためであったことはいうまでもないが、「出来事」としてより注目すべき点がある。それは、それまで信頼していた友人たちがナチスのイデオロギーに幻想を抱いたことに衝撃を受けたことにある。ドイツの良心的な善良な市民が、なぜユダヤ人の迫害に目をつぶり、ナチスの道徳規範を受け入れたのか、という。
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"昨年の後半からハンナ・アーレントを集中的に読んでいる。
もともと気になる思想家だったんだけど、今、なぜアーレントかというと、世の中が全体主義的なものにむかっているのではないかという感覚的な怖れがあるのだと思う。
そして、人間の多様性と異なる人との対話とか、自分の内面の一貫性(インテグリティ)とか、人間の心の強さ(美しさ)と弱さ(悪をなす心)とか、わたしが、個人的にいろいろ悩んでいたり、考えている主題にとても関連性が高い思想家で、自分の思考に刺激を与えてくれそうな人だからかな。
わたしは、ある思想家を学ぶときに、最初に入門書は読まずに、分かろうが、分かるまいが、まず、本人の書いた本を読んでみる。できれば、2冊以上、読んだところで、入門書を読むことにしている。まずは、なんとなく「自分で読んだ感じ」というのを大切にしたうえで、他の人がどう理解したのかというのを知りたいと思う。
自分が読んだ感覚を大事にするということと同時に、ちょっとクイズみたいなところもあって、自分のここの読みはやっぱそうだったんだよな、と思ったり、分からなかったところがなるほどと思ったり、いろいろ発見がある。
さて、中山元さんの「アレント入門」は、わたしの関心にとって、ど直球な本であった。取り扱っているのは、「全体主義の起源」「人間の条件」「イェルサレムのアイヒマン」「道徳哲学のいくつかの問題」で、「全体主義はどうして起きてしまったのか」「どうして人はかんたんに巨大な悪に加担してしまったのか」「それを防ぐための方法はあるのか」みたいな問いを中心にアーレントの思想をかなり明確に説明してくれる。
あらためて、アーレントのメイン・テーマが確認できたし、それがだんだん発展していくプロセスが腑に落ちた感じ。とくに、「イェルサレムのアイヒマン」の思想的重要性が明確にされていて、ここは驚きだった。「アイヒマン」は、もともと雑誌に投稿されたルポで、他の入門書では、それが巻き起こした騒ぎを中心に紹介されることが多いのだが、この「入門」では、アーレントの思想の一つの到達点として扱われている。自分が、なんとなく読み飛ばしてしまったところに大事な論点があったんだな、と目から鱗がたくさんおちた。
あらためて、この「入門」を読むと、アーレントという人は、自分にとって本当に切実な問いを本気で考え続けた人だったんだなと思う。
彼女の本を読んでいると、難解なんだけど、「な〜んだ、そんな当たり前のことをそんなに難しく考えていたんだ」と思ったり、「ちょっと、そこ論理の飛躍があるんじゃない」とか、「最初になんとなくの答えがあって、それを正当化するロジックを古典からもってきてない」みたいに思うことがある。
ある意味、そうやって揚げ足をとりたくなるのは、彼女が、論理的な一貫性や体系性を求めていないからだと思う。彼女は、自分にとって切実な問いを徹底的に考えて、自分なりに納得できたことだけを書いているのだと思う。
わたしは、その彼女の思考プロセスと結論にかなり共感を感じるのだが、そこに波長があわない人にはきっと穴���らけの議論なんだろうと思ったりする。
彼女は、哲学、思想、古典の教養の分厚さは普通ではないのだけど、ある意味、アマチュアの哲学者なんだろうと思う。
反論しようと思えば、いろいろできるだろう。
が、アーレントの魅力は、自分の意見だけが正しい訳ではないという前提があって、そういう反論に対して、オープンなところかな。
「入門」という位置づけだけど、1冊目に読むには、やや難しいかもしれない。入門書のなかでは、矢野さんの「ハンナ・アーレント」が一番分かりやすいかな?"
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ア-レントについて、ナチスドイツの悪への対処とそれにかかわる道徳に関する点に絞った入門書。それにしても、ここ数年のアーレントばやりにはすさまじいものがあるが、それはなぜだろうか?30年近く前から読んでいる者としては、何をいまさら、という印象である。
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アーレントの思想の全体像をわかりやすく解説している入門書です。
『全体主義の起源』や『人間の条件』で論じられている公共性の問題にまつわるアーレントの議論を明快にときほぐし、そこでの議論にもとづいて『イェルサレムのアイヒマン』でアーレントが何を問題にしているのかということに切り込んでいきます。その上で、アーレントがソクラテスの道徳性やカントの共通感覚などの思想からなにを学び、全体主義や公共性の喪失といった現代的な状況のなかでどのような倫理の可能性を見いだそうとしていたのかが論じられます。
アーレントという思想家には、どことなく魅力を感じつつも、ポストモダン思想の軽やかさに一度は魅了された者としては、「公共性」という問題設定に窮屈さを感じていたのですが、本書を読んでその思想の根幹にあったものと、自分自身がどの点に引っかかりをおぼえていたのかが明確になったように思います。
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これは理解しやすくまとめられた一冊。
『全体主義の起源』『人間の条件』『イェルサレムのアイヒマン』3作に焦点を絞り、社会の良識がいかに崩壊するのかを問う。伝統的な道徳規範にしたがっていた多くの人が、どうしてナチスを支持したのか? さらに言えば戦後は再び転向することになった異様さを論じる。これは日本も同様で、とても他人事には思えない。
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アレントの有名な著書を集め解説した本です。凡庸な悪という言葉で有名なアレントの思想を知ることができる、私のような学生にも読める本だと思います。
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ハイデガーをかじってても思うが、ギリシャに夢見すぎでは。アレント個人には興味を持つが哲学的思想にはやはりというかハイデガーの面影が濃い
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アレントによる道徳観の分析を分かりやすく読めました。ずっと気になっていた悪の凡庸さのつまみ食いが出来て嬉しい。
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全体主義と戦った政治哲学者の思想のエッセンス
おぞましい悪を成し得たのは、凡庸な悪だった
想像力の欠如と思考の停止
自分との調和の大切さ
労働、仕事、活動
公共の、現れの空間、社会
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「発言するということは、そのようにその人の人格とアイデンティティを作りだすと同時に、それを他者の面前にさらけだす行為である。発言はみずから危険をおかすことであり、その危険を引き受けようとする勇気を示すことである。-発言することは、他者から反論されることを引き受けることである。」
「1930年代のドイツで失われていたのは、まさにこの公的な領域だった。人々が大衆としてではなく、市民として発言するための場所が失われいたのである。」
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アレントが、ナチスを例にした全体主義、アイヒマン裁判を通じて表した悪の凡庸さ。人が、どうしてそれらを受け入れたか、それらをどう防ぐことができるかを思考したことを解説する良質な入門書。
今、世の中に上げる声が、自らで思考したものなのか、自己愛だけで他者への意識が欠けてないか。
結局、そこに行き着くのに…。忘れないようにしよう。