経済学の第一人者による経済を見る目を養う入門書です!
2017/11/27 10:18
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、経済学とは人間の学問であり、私たち人間の行動やその動機、また人々の間に協同の在り方を検討していく学問であるという考え方の下に、世の中の経済を見る(読む)目を養うために編まれた作品です。同書には、通常の経済学テキストのような数式や計算は一切出てきません。経済を見る目の基礎を養うことを第一義においた同書は、とってもわかりやすい経済学の入門書と捉えることができるかもしれません。非常に興味深い作品です。
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2017年はなかなかいい本と巡り合えているような感じが
します。久しぶりの伊丹氏の本。今回は経済ではありますが
経済学というよりも、教養としての経済。経営としての
経済。哲学としての経済。人間学としての経済というところ
がよくわかる内容だと思います。
自己啓発系よりも仕事に対して非常に有意なTIPSを
もらえる内容です。
『神の隠す手』
よく言われていた話ではありますが、『経済をなすもの
としてカネ、情報、感情』
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◎日本経済は、この20年間、ほとんど成長していない。
この「成長しなささ」は、国際比較をすると衝撃的。
アメリカは、この20年間でGDP2.2倍。日本は、”3%マイナス”
◎成長しなくなった今の日本の最大の問題は、国民の心理的エネルギー水準の低迷であろう。
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合成の誤謬とつじつま合わせが経済を導く。
戦後、日銀は自動車は輸入すればいいと考えていた。
産業観で、国単位の国際競争力に差がある。自動車とコンピュータ産業。技術蓄積の差、人件費の差、言語の壁などがある。
神の見えざる手と神の隠す手。
価格効果(やすければ売れる」と資産効果(金融資産が増えると消費が増える)
1991年の株価大暴落、同じ年にソ連が崩壊。
リーマンショックでは円高が進んだため、日本が一番被害を受けた。
ビッグマック指数。一人あたりGDPでビックマックがいくつ買えるか。日本はかなり多い。所得に比して物価が安い。
安定性の罠=冒険を阻害する。
ポーランドの市場経済移行の混乱=市場インフラと守られる法律がない。
日本の明治維新後の経済発展の基盤に責任ある行為を取るという社会的基盤があった。
具体的な制度は環境が整わなければ機能しない。
市場メカニズムは格差拡大のプロセスを内包する。勝者はより勝者になりやすい。敗者が育つまでの時間的余裕がない。必要な余裕がない。
格差がもたらす順機能=競争がインセンティブになる。
金融取引は規模の拡大が簡単なので、バブル化しやすい。素人の参加。金融商品は互換性があり波及しやすい。
民事再生法と住宅ローンの証券化は、意図せざる結果につながる。
日本のサービス業は生産性が低いイメージとサービスの質が高いというイメージ。このふたつは関連している。
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シニアは、経済的、健康、嗜好などばらつきが大きい。
歴史は跳ばない。跳んだように見えても、蓄積が決壊しただけ。
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経営の専門家による経済の話。マクロ経済について簡単に説明しており、理解しやすく、よくまとまっていると思う。学術的な難しい理論の説明はなく、その点がやや物足りない。日本の経済構造や、高齢化の話など参考になる点があった。
「日本語の壁という国際展開可能性の障害は、モノを売る産業にはあまり存在しない(サービス業では大きい)」p51
「ケチ精神が強いのは、家計と企業、つまり民間であろう。消費や投資という形でカネを使おうとしない。逆に、経済規律が最も低いのは政府で、負債が積み上がっている」p92
「日本の不平等拡大の主要要因は人口高齢化であり、同一年齢世帯内の所得格差はほとんど拡大していない。所得の多い高齢世帯の比重が大きくなっているとともに、もともと高齢世帯の所得格差は若年世帯の格差よりも大きいため、国全体では、不平等度は拡大しているという計算になる」p170
「(日本のサービス産業発展の道)道は大別して2つあると思われる。1つは、苦手の生産性の向上を、おもてなしを維持しつつ実現する道。その際には、ITの活用が大きな鍵になるだろう。2つ目は、サービス産業の国際展開を図ること」p264
「おもてなしの国日本は、その生産性の低さをなげくのではなく、おもてなしをますます磨き、かつ、おもてなしをモノとの協働で生かしていく。それが、国内外でサービス産業が発展する基本の道のようである」p267
「シニア需要の特徴は「多品種、少量、便利、割高」」p277
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著者の伊丹敬之先生は、高名な経営学者である。本書は、「経営学者が書いた、マクロ経済の本」だ。
色々なトピックスを扱った本であるが、自分にとっては、バブル崩壊後の、いわゆる「失われた20年間」をマクロ経済データで振り返っている部分が面白かった。
1996年の日本のGDPが516兆円。約20年後の2015年のGDPは500兆円と16兆円のマイナス。
16兆円のマイナスの内訳。民間消費と政府支出の合計はプラス7兆円の微増。民間投資が18兆円のマイナス、輸出入差がマイナス5兆円。
全体像を見れば、企業の設備投資や民間の住宅投資が大きく減っている。
一方で、この間の資産の動きを見ると、家計の金融資産は1272兆円から1706兆円に増加、企業の純金融「負債」は652兆円から431兆円に減少。
要するに、これだけの家計金融資産の積み増しがあるのに、消費は、さほど、増えていない。預貯金にお金がまわっている。また、企業もお金を設備投資ではなく、借金の返済に充てている。金を使わない、金を貯め込み、リスクを取らない日本の姿が浮かび上がる。
「どうしてそうなっているの?」というところの分析までは、本書は扱っていないが、それでも、バブル崩壊以降、日本経済が陥っている苦境がどういう姿であるのかが、理解しやすくなる。
示唆に富んだ面白い本。
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生々しく日本の過去と現在、そして未来について、定量的、且つ論理的に解説した一冊。
人本主義の経済合理性追求のオーバーランの結果生ずる安定性の罠と、安定性の罠から生ずる国民の心理的エネルギー水準の低迷、そしてこれら一連の流れが日本型市場経済と企業システムを色濃く作り出している、という主張は首肯点頭。
時期を置いて、改めて読み直したい1冊。
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経営学の大家である伊丹氏が経済の捉え方をわかりやすく解説している。
経営も経済も、主体となるのは「人」であり、人の心を理解することが大切だ、という氏のメッセージは心に迫るものがある。
経済を読み解く貴重な視点をこれでもかと提供してくれているが、個人的にもっとも心に残ったのは日本と米国の企業利益率の違い(米国:高/日本:低)を日本の協調型競争環境から説明している部分。氏は日本の競争環境を「相互作用型競争」と呼び、それがグローバル環境のルールと異なる(それゆえ日本企業は相対的にグローバルに競争力がないことがある)点を鮮やかに浮き彫りにしている。
経営に携わるにせよ、個人的に投資活動に勤しむにせよ、経済を適切にみることは必須のスキルであろう。その意味でこの書籍を読むことで大局観を獲得することが有益になる方は多そうである。