紙の本
沖縄行政
2017/07/05 06:56
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投稿者:七無齋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
行政側から見た沖縄事情。歴史を振り返りながら沖縄の真実を探る。細かい数字などわかりにくいところもあるが役人の事情もわかる。沖縄の様々な声に耳を傾ける必要がある。
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米軍海兵隊の普天間飛行場の移設をめぐる国と沖縄県の対立は根深い。保守と革新の単純化した構図でとらえられることの多い沖縄問題をどう考えればよいのか。本書では琉球処分、沖縄戦から米国統治、そして日本復帰という近代以降の歴史を踏まえ、特に沖縄県の行政に注目し、経済振興と米軍基地問題という二大課題への取り組みを追う。理想と現実のはざまで苦闘しつつも、リアリズムに徹する沖縄の論理を示す。
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理想論でも現状肯定でもなく。
理想と現実のジレンマ、ジレンマでもない行政のリアルも記述。
理想とイデオロギーによることも捨てたくないけれど、今できることを進める姿勢ってやっぱり大切とくに行政マンにとっては。
沖縄の問題は長い。いや沖縄問題でなく日本問題。
最後の辺野古埋め立て承認に至るプロセスの章もリアルで良かった。あくまで考えるは法に適合しているかどうか。知事の「自然体で」という指示が印象的。いや全部を肯定するわけではないけれど。
リアルにいま何ができるか、って視点は大事。
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まえがき―「クールな視点」で沖縄を語りたい
第1章 「沖縄問題」の問題とは何か?
第2章 「辺境県」からの脱出―沖縄振興の展開
第3章 アジアのフロントランナーを目指して―沖縄振興の新しいパラダイム
第4章 沖縄県財政と米軍基地の跡地利用
第5章 基地問題の理想と現実
おわりに―沖縄県は外交も行う
編著:高良倉吉(1947-、沖縄県伊是名村、日本史)
著者:川上好久(1954-、沖縄県、元副知事)、小橋川健二(1955-、沖縄県、県職員)、當銘健一郎(1980-、沖縄県、県職員)、又吉進(1956-、沖縄県、県職員)
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沖縄県庁で実務に携わった当事者が筆を取り、極力イデオロギーを介入させずに沖縄の現在及びこれに至るまでの歴史を解説している。沖縄政策に携わる人間にとり必読の書。
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沖縄問題を、過去から現在に続く、歴史認識や沖縄アイデンティティの問題だけでなく、行政職員という立場での論点がまとめてある。琉球大学法文学部教授、専門は琉球史で、仲井眞弘多知事県政時の副知事。感情的に平和論を述べているものではないので冷静に読み進めることができた。
普天間基地移設条件付き全面返還の日米政府同意がそのまま継続すれば2022年の今年返還本当にされたのかどうか今更ながら疑問
沖縄の県土面積1割を超える基地面積、普天間基地は沖縄の基地のうち約2割程度を占める面積となる(本書で触れていないが、極東最大の空軍基地である嘉手納基地は羽田空港の2倍、その南北で栄え方が違う) 取りざたされている補助金は基地がない過疎の自治体の方が上位
私見として、日本の防衛を地理的な面ばかり強調して沖縄に押し付け米軍任せにするのではなく、国全体で考えないといけない時期にきていると思う 日米地位協定のために、コロナ禍でも好意的協力でしか行動制限は行えないし情報ももらえなかった
言語研究では、本土方言と琉球方言に二別、琉球方言は古い日本語から分離発展した琉球語である。漢文を王国の公用文とすると同時に平仮名も常用。
伊波普猷は琉球処分を薩摩藩からの支配重圧奴隷からの解放、琉球王国は滅亡したが日本帝国にはいって復活という論点とした。中国依存を否定し、日本経済に取り込まれた。
明治末期に南洋道問題、沖縄と植民地台湾を合併して南洋道を樹立した策動があったが、立ち消えとなったらしい。
戦時中沖縄は全国平均の四割以下の所得水準の低迷、沖縄戦では3か月で沖縄居住者約25%の人々が犠牲、県営鉄道などのインフラ破壊や琉球王国時代の遺産破壊。
アメリカ統治時代、沖縄を保有するか日本領土のままにするかもめたらしい。12か所の民間人収容所での待機後、住居地へ帰還。しばらく無通貨時代をへて日本円とB円軍票併存する通貨経済が再開。
1948年中央銀行的な役割の琉球銀行設立、B円軍票が琉球列島唯一の法貨となる。軍用地料で巨額の金額が集中的に支払いが行われた時期に軍用地代ブームとなった。戦後復興、沖縄型高度成長を経て復帰運動、沖縄復帰。復帰後ドルと円の通貨対応に追われる。
沖縄復帰対策要綱で、沖縄振興開発金融公庫、沖縄開発庁、沖縄振興開発審議会、沖縄総合事務局、税制などの特別措置。
米軍の基地従業員の大量解雇、沖縄の全就業者の約1割占めていた、ピーク時4万(1968年)⇒1万(1977年)。
復帰不安で一般企業の採用手控え、本土就職者の減少、離農や新規学卒者の滞留などで高失業問題が出現。
基地経済からの脱却、自立経済構築を目指した日本復帰だったが経済上の難題多く、社会基盤の整備、地理的自然的不利性、辺境性の問題があった。
公共工事、観光産業の民間投資と収入増加、自由貿易地域の指定、情報通信関連産業の実績、大学などの教育機関誘致、基地跡地整備、世界遺産登録、サミット開催など地域振興につながるプロジェクトなどで一定の成果。
県民所得格差は約61%(復帰時)から74%(2011年)まで改善。基地関連収入の県民所得割合は約16%(復帰時)から5%(2011年)まで減少、振興計画は県民所得向上の実績達成。
地域振興とは、地域にヒト、モノ、金、情報をいかに集積させるか。
2025年まで人口増加予想、若年の労働力を有する。完全失業率の改善、小学生の学力最下位から20位(2015年)
一括交付金は沖縄の特殊事情だけを対象とする沖縄振興制度
国庫支出金、地方交付税の合計で県民一人当たりの額が多くなるのは、過疎辺地地域を多く抱える県にみられる現象 沖縄が突出して多いわけではない
公的依存度は基地面積の割合と相関関係があるとはいえない
在日米軍基地の面積は約2万ヘクタール、県土面積の10%以上、海兵隊は在沖米軍基地の約75%。米軍訓練のため民間船舶や航空機の航行制約される制限水域と制限空域が設定。
1996年SACO最終報告で、普天間飛行場移設条件付き全面返還の日米政府合意
返還機関5-7年の予定だった 代替施設、V字型二本の滑走路背地位などの修正合意がなされたあと、2013年辺野古崎埋め立て承認申請書が県に提出、嘉手納基地以南の基地統合し2022年以降に返還するという計画
2013年仲井眞知事は沖縄防衛局埋め立て申請を承認し工事開始
2014年現職仲井眞氏を破り翁長雄志知事が当選、その承認を取消、工事中断
その取消の違法性が裁判で争われる
首長が変わるたびに変化、返還のめどが立たず長期化
軍転特措法が制定での米軍基地返還後の跡地利用の法整備、有害物質(PCBポリ塩化ビフェニルの検出)や不発弾、廃棄物などの環境調査が必要。土地資源としてリゾート開発、公共的土地利用、農地利用など検討されているが、経済効果の評価がなされるまでに数十年以上かかるという問題あり。
那覇新都心、牧港住宅地区は細切れ返還で20年以上の期間となった。返還前後の経済効果は那覇新都心は32倍以上、小禄金城地区14倍、北谷桑江北前地区108倍。(2006年駐留軍用地跡地利用に伴う経済波及効果等検討調査)
米軍基地によって可住地面積の小ささから九州で福岡に次ぐ地価の高さ
普天間飛行場は沖縄戦で米軍占領後に接収、米陸軍工兵隊が本土決戦に備えて滑走路建設に由来。新たな基地を民間地域に建設し民有地は高い割合。住民たちは隣接する地域に移転せざるを得なかった。割当土地という居住許可が将来の禍根となる。
普天間飛行場跡地利用計画の障害は、返還時期の不透明さ、返還や跡地利用に積極的な地主と消極的な地主の混在、意識の低下。
鉄軌道や中部縦貫道路、大規模公園、新産業立地、企業誘致、財源支援が必要。
県民の渇望と喫緊の行政問題は
①基地の整理縮小②普天間飛行場の移設③日米地位協定の見直し
基地問題をめぐる保守革新の勢力構成は拮抗
普天間飛行場返還の日米合意の計画は、沖縄最大の政治問題で、宜野湾市と名護市、周辺自治体を巻き込んで容認論、反対論に県民世論を二分。
米軍基地総面積県土復帰時2万8660ヘクタールから2万2992ヘクタールと約2割減
普天間飛行場5002ヘクタール
①市街地の真ん中にあって小さい事故でも市民の生命安全にかかわる②騒音、飛行に対する不安が市民の正常な生活を妨げている③宜野湾地の発展の妨げ
当初名護市のヘリポート移設受け入れは市民投票反対票が賛成票を上まった��比嘉鉄也当時名護市長が建設受け入れたうえで辞任。太田知事はヘリポート反対掲げたが反対しない立場の稲嶺惠一知事が誕生。具体的な議論がなされたが移設先の方針は変わらず。2009年民主党政権誕生により鳩山由紀夫首相の見直し表明で、県民の期待高揚と失望へ。長い停滞の時期。
日米地位協定は「米軍による我が国における施設・区域の使用と我が国における米軍の地位について規定した条約」28条からなる。
地位協定第17条により、沖縄県警は被疑者を拘束できず取り調べに関しては米側が好意的に所轄警察署へ護送したうえで行わねばならなかった。1995年米軍少女暴行事件がきっかけで大きな抗議、県民要請を受け沖縄県が地位協定の抜本的見直し要求をまとめ日米両政府に提出。
日本政府のスタンスは協定そのものを改定ではなく、あくまでも運用の改善を図ること
1996年協定17条の見直しで凶悪犯罪の場合、米軍は起訴前の身柄引き渡しについて好意的考慮を払うという運営の改善が行われた
法律に基づく埋め立て申請を不承認とすることは知事の裁量権の逸脱の可能性
尾長新知事による承認の取り消し、国による埋め立て工事の中断、承認取り消しを不服とする代執行訴訟。国県双方の和解と協議、承認取り消しを違法とする裁判、福岡口頭裁判所那覇支部の判決(県敗訴)と事態はめまぐるしく展開
2016年最高裁は上告棄却し県の敗訴が決定
歴代沖縄県知事訪米は沖縄側が直接米国の政策担当者に基地問題を訴える行動であり、1985年西銘順治以降30余年の間に15回行われている。
沖縄ソフトパワー発信事業、ワシントンケネディセンターで沖縄芸能公演
沖縄県が企画立案し外務省や米政府、現地文化関係者の協力を得て実施した文化発信
米国に沖縄の認知、地方自治体として安全保障認識を深める目的
沖縄県は外交も行うという立場を、基地の島=沖縄の行政に課されている
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沖縄県庁で職歴のある人たちによる編著。
沖縄問題をリアリズムの視点から著述することを謳い文句にしているが、沖縄側・行政の視点が中心で沖縄の抱える問題の構造が理解しづらい。一方で、普天間基地の移設に係る箇所は当事者だったため詳細過ぎるほど論じており、バランスが悪い。
本書を読む中で、沖縄県議会の構成が与党が共産党を含む基地反対派で自民党というのは、中央の国との関係でかなりやりづらいだろうなと思った。
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沖縄問題を被害者目線ではなく沖縄生まれの当事者として考察した良書。大学講義にも使えそうな内容です。多くの執筆者が元県庁職員だったという特徴は、時には国と県民との利害調整で板挟みになった経験が、沖縄問題の客観性を担保する視点の確保に繋がったと思われます。副知事を務めたメイン執筆者、高良倉吉が書いたまえがきと第一章が良い。