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たしかに、またとない貴重なエピソードもある。
しかし、この本の魅力はインタビュアーである著者の本を作る人への敬意にあり、そこから醸し出される、香り立つ文章が、なんともいえず、切ない、大切なものに出会ってしまった感情を呼び覚ますのだ。
どの仕事人も素敵。何度もこみあげるものがあった。
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本は決して、作者が文字や絵を書いて、それを印刷すれば出来上がりというわけではない。内容を誤りのないものにするためには校閲の作業が必要だし、印刷された「紙の束」を本にするには製本や装丁が要る。そもそも、文字の形(フォント)や本の紙にも色々な種類があって、それはそれぞれ本のために誰かが作ったものだ。
本は、特に紙の本は、そんな多くのプロフェッショナルたちの仕事で成り立っている。これはそんな人々に焦点を当てた本だ。
自分は電子書籍はあまり得意ではなくて、コレクション的な意味も含めて紙の本が好きなのだけど、その割に、本がどのように作られているかということにはあまり目を向けていなかったような気がする。だから、本が絶版になったというような話を聞くと、「データはそこにあるのだから、絶版なんて言わずに刷ればいいじゃないか」と思っていた。文字通り、刷ればそれで本ができると漠然と思っていたのだ。でも、違う。私たちが欲しいのは本であって、紙の束ではない。それが本になるには、また多くの手をかける必要がある。
売れない本は絶版になってしまう。残念なことでもあるけれど、それは、本というものが多くのプロフェッショナルの仕事を経て生まれてくることの裏返しなのだと分かった。
様々な仕事が本書では取り上げられているけれど、自分が一番好きなのは新潮社の校閲部を紹介している章。ある作家さんが、新潮社の校閲はすごい、と言っているのを見たことがあって、興味があった。どちらかというと「古き良き時代」のことについて多く語られてはいるけど、総じて校閲という仕事の意義や使命について熱く語られている。校閲は出版社の良心だ、と。校閲が、単に誤字脱字のような明らかな誤りだけでなく、ストーリー構成の矛盾点までも指摘する仕事だとは知らなかったので、驚いた。
この本を読んだ後に、古本屋で昭和10年代とかの本を目にする機会があった。当然活版印刷で、装丁も豪華というわけではないけれどどれもとてもこだわりを感じられる作りだった。自分がその時見たのは価格にして数百円だったけど、それでもだいぶ興奮したので、『ビブリア古書堂』シリーズなんかで高価な古本を犯罪を犯してでも手に入れようとする人に、初めてちょっと共感できた気がする(笑)
本は文庫本も良いけれど、本書を読んだ後は、より個性の出る単行本を読みたくなる。本屋さんで製本や装丁に着目したフェアなんか組んでくれると面白いのになあ、と思った。本好きは読んで損のない一冊だと思います。
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本というのは不思議なものです。嗜好品のようでいて、世の中ではとっても重要なものと認識されてもいて、意識して手に取らない限り一生関わらない本が大多数を占める。それだけ沢山の本があるのに街中で本読んでいる人なんて一握りで、誰が消費しているのやらさっぱり分からない。本作りに携わっている人は(売り手も含め)殆ど求道者のような扱いで、とてもじゃないけれど経済活動しているように感じられない。
一部の話題の本や映画化された本以外は本当に地味に展開されていて、本好きではない人にアピールする方法なんて思いつきもしないです。そう考えると王様のブランチって大事だなと思います。
そんな中で、まさに本作りの裏方中の裏方から、書き手まで本を作り事に関する手が沢山描かれています。
紙までは何とか認識していましたが、書体迄作らなければならないという所で頭叩かれたようなびっくりが有りました。そうだ、本もPCも携帯もまず字が全部作られ登録されていない限り使えないんだと思ったらば、この駄文を何気なく打っている事が申し訳ない位です。何万語という字を一つ一つ検証するなんて考えもしませんでした。
紙も今となっては中性紙が普通ですが、ここ数十年に確立した技術なんですね。その技術が有ればこそ読めているんだと思うと、ひたすらひたすら感謝感謝です。
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著者の仕事観の本ではなく、外からはなかなか認知されない本にまつわる職についている人、数名を取材した本。
書体デザイン、製本マイスター、活版印刷屋、校正校閲などなど。さらっと読み。
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一冊の本は「文字体」、「装丁」、「紙質」、「校閲」、「海外との販売代行」など様々な分野で様々な人が魂を掛けた芸術作品である。
「文字体」はより読者の心を摑む文字にする為に数万文字を一文字ずつデザインし、指摘を受けつつも全てこなす。担当した人は文字の更新に7年の歳月を要したと言っていた。しかしまた充実した7年間であったとも言っている。今打っているこの文字も一文字一文字デザインしてくれた人達がいてこそである。さらに昔は手彫りで掘っていた時代もあり驚きである。
「紙質」は昔酸性紙が主であった為長期保存が効かずボロボロになるものが多かった。長期保存する為に中性紙を使用しなければならないがコスト、時間が掛かり大変であった。また、「紙」は縦繊維と横繊維があり、ページをめくり易いのは縦繊維である。そうした読者への気配り、技術の進歩にも魂を賭けていた。
「校閲」は菅田将暉、石原さとみ主演のドラマ「地味にすごい」で校閲部門の人々の仕事ぶりを描いていたが、校閲の人達は本当に命がけだと思った。校閲は原作者の作品を最初に見て誤字脱字、矛盾がないか添削するいわゆる赤ペン先生である。しかし、見落とし等の抜けがあり、間違ったまま出版すれば最悪絶版の危険性もある。地味な部署だが本当にすごい部署だと思った。
「装丁」は本の表紙等のデザインで、本の顔だと思う。装丁する本を一読し、また取材をし、その本の魅力を最大限に引き出すデザインをする。技術、感性のスペシャリストと思った。
「海外との販売代行」は「タトル・モリ」という会社が海外に出向き、日本人にウケそうな洋書を翻訳し、出版し、また日本作品を世界に輩出している。洋書で代表的なものは「フォレスト・ガンプ」「氷の微笑」「シックス・センス」等。こうした人達が居なければ海外の良い作品を見れず、また日本アニメのように日本の良さをアピール出来ない。
本は時代の現れでもあり芸術である。江戸時代の本棚、中世ヨーロッパの本棚、そして現代の本棚、それぞれの時代にそれぞれの技法で作られており、感じるものもまた違う。
普段何気なく手に取る一冊の本、その本が本棚に並ぶことは多くの人達の歴史、努力の積み重ねであり、素晴らしい事である。「君達ほどう生きるか」の本を読んだ時に自分1人の存在は周りと切っても切り離せない存在だとあった。食べ物、着るもの、全てにおいて作る人、そして着る、食べる自分がいること、本についても同じで繋がっている。今回は本の制作過程を見たが、一冊の本の見方が変わり、より大切にしようと思った。
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”一冊の本を作るまで”みたいな本かと思っていたら、違った。本造りに携わる人々へのインタビュー形式。校閲の話などは面白かったが。
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フォント、紙、印刷、装丁、本を作るにはさまざまなプロフェッショナルのこだわりがあることがわかり、自分が電子書籍が苦手で紙の本が好きな理由がわかった気がした。特に新潮社は校閲に強いことがわかったことが興味深かった。
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「本」をつくる様々な工程を支える人たちに取材して構成された書籍。活字や紙、装丁など、とても興味深く読んだ。今ではつい電子書籍を選んでしまうけれど、本当は、モノ、としての本を大切にしたい。また、著者の稲泉連氏は、私の敬愛するノンフィクション作家、久田恵さんのご子息ということに、読後に気づいた。息子さんのファンにもなれそうで嬉しい限り。
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本作りの過程に関わる様々な職種の方のインタビューから、本作りの近現代の歩みや現場の様子がうかがえる本。であるとともに、それぞれの方の仕事観や本への思いも感じられて面白かった。
フォントや紙の作成、校閲や製本や装丁などのプロセス、どれも驚くほどのこだわりで行われている様子がわかる。少数でも必要とする人に届けるために活版印刷工房を営む方や海外作品の版権のエージェントの方、最後には角野栄子さんも登場し、もりだくさんな一冊だった。
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全ての本好きに捧ぐ…。
本を世の中に出すという連綿とした営みの奥深さを知ることができる。
これを読むと、やはり「本」という存在はこれからもなくならないことを実感する。
これだけ丁寧に圧縮されたデバイスがあるだろうか。
内容だけでなく、紙、装丁、デザイン、活字、あらゆる面でお気に入りの一冊というものを見つけたくなる一冊。
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子どもの頃から本が大好きでずっとお世話になってきて、出版社でバイトしたこともある。だから本にかかわっている人たちのことは意識しているつもりだったけど、著者、編集者、校正、印刷、営業、くらいは意識していたけど、活字作成者、製紙業界のことなどはちょっと意識を向けてなかったかもしれない。本書で取り上げられるのは印刷会社の事業としての活字作成(違いが判ってなかった!)、製本マイスター(古本屋さんでこうしたことをしているところはあるけど、欧州のような本格的なものではない)、活版印刷(三日月堂!)、校閲(校閲と校正の違い!)、製紙業、装幀家、海外本のエージェント(翻訳もの好き!お世話になってます)、児童文学作家(角野栄子さん)の8つの分野の専門家から語られる本作り。どの方も自身の仕事へのプロ意識とそれでいて本に対する優しいまなざしがよい。この本の作り自体も丁寧な仕事だと感じた。
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色んなジャンルのプロの話がまとめられてて読みやすく楽しかった。本が本であることの意味みたいなものを考えたくなった。
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「本」1冊ができる過程には
いろんな人の仕事が関わっている。
なんの製品でもそうだけど
そのそれぞれの仕事をまっとうしなければ
完成形は世の中に出せないのだな。
活字、活版印刷の章もよかったけど
ドイツで製本を学んだ青木英一さんの
修行の話がおもしろかったです。
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少なくとも本には8種類もの職業があると言われパッと答えることが出来るだろうか。昔と今の本では様々な栄枯盛衰があり確かに変わっているのに大抵はそれに気づかず本を手に取り読む。黒子と呼ぶだけでは収まらない様々なプロフェッショナルのお話