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これまで男性学の本を読むといつも何かもやっとしたものが残っていたのだが、本書を読んだことによってその理由がよく分かった。本書は、従来の男性学で語られてこなかった「息子であること」は男性にとってどういうことなのかを、息子介護を題材にして考察している。なぜ介護なのかというと、介護のなかでも家族介護においてどのようなケアが実践されているかは、ケア提供者と受領者の関係性に直結しているからであり、男性が親の介護をするということは息子という立場を取る以外に関わりようがないためである。
家族介護について論じた先行研究や著者自身の調査から導き出されているのは、私的領域での女性への依存を不可欠としているにも関わらず、その依存状態や依存関係を不可視化することで成り立つ、自立/自律を至高のものとする男性性である。男性性の虚構を暴く過程は学術研究でありながらスリリングであり、提示された男性性の成り立ちはグロテスクですらある。
従来の男性学は男性の中だけで完結しておりジェンダー関係の観点が圧倒的に不足しているのではないかという著者の批判や、家事分担がなぜ難しいのかなど、介護に限らない様々な論点が含まれている点も面白い。
論点が多岐に渡っていることのマイナス面だろうか、個々の章は独立してそれぞれ興味深いものの、分析視角として論じた内容が実証的な章ではあまり活かされていないなど、章間の関連性は弱い印象を受けた。
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本文が論文調でかなり読むのに苦労するが、内容的には興味深かった。ただこの問題に対する解決策が抽象的なままで終わっているので、実用的に読むのはあまり期待しない方がいいと思う。
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最終章に向けての力技の追い込み。色々といいたいことが出てこようと、これが書ける男性が出てきたというだけで昭和の御代からの30年をありがたいと思う。
いろいろと、書きたいことはあるが、今はごたごたとして言葉にならない。
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男性学の本。タイトルどおり、息子による介護ではなぜ暴力が当然のように語られるのか?がかかれている。そこには、暴力をふるう息子の行動が「自然」に思える文脈が存在するだろう、という問い。母への介護が圧倒的に多いが、父を介護する息子もいる。そして、なぜか父への暴力は多くない(と思われている)のはなぜか?
世の中のいわゆる男らしい人はそれを成立させるために払われた周囲の女性の気配りをなかったものにする、依存体質があるのではないか。これは私は気づいてなかった。
文体になかなか慣れなくて読むのに苦労したが、読んで良かった。
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読んで思ったことは内容はタイトルにある「息子介護」よりもサブタイトルにある「男性性の死角とケアのジェンダー分析」の方が内容をよく表しているなということです。
本書では男性性研究で語られる「自立、自律」に関して、息子介護を切り口にケアのジェンダー分析から議論を展開しています。
男性性に関する本は読んだことがなかったため、非常に興味深く、こういった本を読まなければ恐らく手に入れられなかったであろう視点を得ることができました。ジェンダー平等が当たり前である社会を目指すためにも全ての男性に読んでもらいたい1冊です。「自分は女性性軽視なんてしたことないです」と自負している人も読んでみると新たな視点が得られると思うので是非に。