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決して他人事では片付けられない。
もしわたし自身が彼女たちと同じような生まれならば、きっと恋人、家族、社会などからの抑圧からは逃れられないのだろうと感じずにはいられない。
気づかない内に渦に巻き込まれ、何が原因で過酷な状況に置かれているのか、冷静に判断そして対処までできない。
彼女たちの、生の声が聞こえるような一冊であった。
上間さんが渦に巻き込まれ、一寸先をも見えない彼女たちの生活を側で見守り支え、ケア関係を結びながら紡いだ物語。
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2019.04.07
この本について何かを書くことは僕にはまだできない。
何回も何回も上間陽子の話を聞きたいとおもう。僕にできるのはまだそれだけしかない。
2019.09.03
2回目の『裸足で逃げる』。
少しだけ言葉にしてみる。
本書に登場するのは沖縄の夜の街で働く少女たち。ぼくは彼女たちのことを知らない。顔を見たこともなければ,声を聞いたこともない。でも,ぼくは彼女たちの存在を知っている。本書を読み終わった今,彼女たちの存在がリアルに感じられる。顔も見えれば,声も聞こえる。彼女たちがそこに存在することを疑いのない事実として知っている。でもぼくは彼女たちのことは知らない。
本書で描かれるのは貧困やDVなどの社会問題。ぼくはそれらを知っている。たとえば,貧困とは貧しくて困窮していることであり,DVとはパートナーへの暴力である。でも,ぼくが知っていたのはそれらが何かということであり,それらがどういうものかということは知らなかった。本書を読んでぼくはそれらの事実を知らなければならないと思っている。
最近,知ったことがある。ぼくの父親の青春時代,車は右側通行だった。一番身近であるはずの親のことさえぼくは知らなかった。でも,話を聞けば知ることができる。話を聞くことで,存在しなかったものを存在するものに変えることができる。
本書に記録されるのは少女たちの生活の軌跡である。今自分にできることはこの本を存在させ,彼女たちの存在を隣人にすることである。まずは彼女たちの存在を知ってほしいと思っている。
(本書評は高知大学図書館広報誌あうるNo.22に寄稿したものです)
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これも社会学の生活史の調査手法の1つでしょうか。しかしながらあまりにも若い登場人物たちなのでそれぞれ未来に続く生活史があり、調査は人との関係になっていくのかなと思いました。
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少女達にインタビューするだけではなく、完全に彼女達の人生の一部に関わってしまうスタンスで書かれたルポタージュです。
ルポタージュの定義をよく分かっていないのですが、客観的視点が欠けているのがマイナスになりそうな感じではあります。でもその踏み込み方が感動を呼ぶのも確かです。
本当なら中学や高校に通っているレベルの女の子たちが、妊娠し子供を産み、DVを受けたり性的暴行を受けたりしながら、それでも生きて行こうとする姿は胸が痛むし、それでも前を向いて進む姿には涙が流れそうです。
生家の貧困やネグレクトからそういう道を選ばざるを得なかった少女が、この本の大半を締めますが、彼女たちが負の連鎖を断ち切れるのか未知数ではあります。
中には脳性麻痺の子供を抱えて看護師を目指す子もいます。他の子たちも光に向かって歩ける子ばかりなので、幸せになれる事を祈るばかりです。
虐待やネグレクトを受けた子供が親になると、どうしても加害者になる可能性が高いと言われています。いつの時代も一定数います。僕の子供時代も周囲にいました。お母さんの手料理食べたことないなんて子もいました。今どうしているんだろうと思います。みんな幸せになっていますように。
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沖縄の風俗業界で仕事をする女性たちへの聞き取り調査、フィールドワークを通して、沖縄の若者や貧困、教育について研究する著者による、6人の女性についての話。
1ヵ月くらい前に読んだ『走る日本語、歩くしまくとぅば』の中で紹介されていた本で、他では絶対に出会えそうな本だし、と思ってその場でAmazonで注文した本。
もうなんか、おれの知っている、周りの世界とはあまりに違い過ぎて、でもたぶんこういう世界はたくさんあるのだけど、おれが単に知らないのか、見ないふりをしているのか、少女たちが語る言葉がそのままの形で記載されているので、突きつけられる感じだ。この本を読んだのもそれこそ3週間以上前の話なので、その後で2冊別の本を読んでしまって記憶が薄れているが、それでも何とか覚えている部分は、夫に暴力を受けた「翼」の話。翼の親友の美羽が、翼が暴行された直後に駆けつけてくれてとった行動の話。「美羽は『大丈夫?』っていわなかったんですよ。『ちょっと待ってよ』って。『何するのかな?』って思ったら、『美羽も、くるされたみたいなかんじにやってきたよ!』って化粧で遊んできたから!『一緒に写真撮ろう』なんですよ…」(pp.85-6)の部分。だから、もしかしたら、他人事と思っている人ほど「大丈夫?」という声掛けをするのかもしれないし、最近ある人が言っていたことで「関心を装った無関心」という言葉がすごく心に刺さっているが、これもそれと同じで「大丈夫?」という言葉は、実はとても残酷な言葉なのではないのか、と思った。
本当に何とも言えない気持ちになるのだけれど、それでもこれは読書記録だから、印象に残ったところを記しておく。重い脳性麻痺の子どもを持つシングルマザーの「鈴乃」の話。「昼間は学校に通い、夜はキャバクラに出勤する」(p.94)という鈴乃は、著者と手紙のやりとりをしているらしく、「たぶん鈴乃は、私よりも忙しい日々を過ごしている。それでも鈴乃の手紙には、どこかゆったりした時間が流れている。それは、鈴乃が日々の繰り返しを大切にするひとだからだろう。」(p.95)という言葉。鈴乃自身に関する話ももちろん印象に残るのだけど、「日々の繰り返しを大切にする」っていう言葉を覚えておきたいと思った。それからレイプされた人の話も出てくるが、「レイプされたあと、頻繁に性交渉を重ねることはよくあることだ。それは、レイプされたことがなんでもないことだからではなく、そのとき味わった恐怖を無化し、奪われたコントロール感覚を取り戻すために、もう一度同じような場面を再現して、今度こそ、その恐怖に打ち勝とうとして行われる。それによって、自分は事件に負けなかったこと、変わらずに存在していることを、何度も何度も被害者は確かめようとする。」(p.161)という部分。これはハーマンという人の『心的外傷と回復』という本からの引用らしいが、レイプだけでなく色んなトラウマがこんな形で処理されることがある、ということが分かった。嫌なことを何度も度も思い出して、その傷ついた過程を追体験することで、だんだんその傷が癒されていく、のような話を何かの本で読んだ気がするが、それと似ているのだろうか。あとは刺青の彫り師の「ルイ」の話が出てくるところ、「沖縄の刺青のスタジオは、彫師の腕が悪くても、たいてい客に困らない。沖縄の刺青のスタジオには、どんな図柄でもいいから早く完成させてほしいという若い海兵隊員がやってくる。部隊内部では、暴力やいじめがある。だから年齢の若い兵隊は、自分を少しでも強く見せるために、とにかく短期間で刺青をいれようとする。」(p.189)のだそうだ。適当なおしゃれでタトゥーを入れているのではなく、そんな事情があったなんて。本当に見かけでは分からない。あとは自身も未成年で年齢を偽って援助交際をした「春菜」の話のところで、インターネットのサイトで相手を見つけるという部分、「このサイト自体がやっぱり十八歳以上ってなってる。けどやっぱり未成年とか、いっぱいいるから。中学生とか、いま、普通にいるっていうから」(p.219)っていう部分は本当にショッキングだ。
この話に限らず、高校生ではすでに親になっている、という少女の話、ありえないくらい身勝手な男の行動、なんか全て、何とも言えない気持ちになる。2冊前に読んだ本の中でもどこかの国で凄まじい拷問を受けた人の話が出てきたけど、そういう状況に生きる人の話を聞くと、一体おれならそういう状況どこまで耐えられるのか、どうやって生きていけるのか、考えてしまう。結局何を感じてもおれがその状況にいないのだから偽善な感じもして、ただただ無力感を味わう本だった。(19/09)
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青い海、きらめく太陽、鮮やかな緑の山、楽園の沖縄…
でもこの本はそんな沖縄の夜の街をさまよい歩く10代の少女たちの言葉を集めたドキュメンタリー
沖縄の言葉やら、筆者の文章もちょっとわかりにくいし、いきなりよくわからない人の名前が出てきたりして読むのにかなり時間がかかってしまった。
でもそれだけじゃない。読むのに時間がかかったのは少女たちの人生があまりにも過酷だったから。
家族や彼氏から日常的なDVにさらされている少女、
家庭の事情で自分の居場所がなかった少女
レイプされて自暴自棄になってしまった少女
たった一人で子供を産むという選択を選ばざるを得なかった少女
身体を売ることだけが彼氏の愛と日常をつなぎとめる手段だった少女
彼女たちを自業自得だという人もいるかもしれない
でもそれを言う人は「自分自身がそんな過酷な人生を経験していないから」なのではないだろうか?
子供は母親や父親の愛情を無条件に注いでもらえる
甘えて安心して幼少期を過ごす
でも、このインタビューに応じてくれた少女たちは違う
子供なのに、ある意味「大人」であることを周囲から押し付けられ子供ではいられない
誰よりも早く大人になることを強いられた少女たち
妊娠した少女に「あんたが決めろ」ではなくて一緒にどうするのかを考えてあげるのが大人なんじゃないのかな
レイプされて心も体もボロボロな少女にまずすることは彼女をいたわってあげることだったんじゃないのかな
彼女たちが欲しかったのは「あなたは悪くない」という自分自身を肯定してくれる言葉だったと思う
今の世の中、そんな言葉すらかけることもできない大人が増えちゃったのかい?
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知人から勧められ、チラ読みし・・・
「心して読みます」と告げた本。
吉川トリコ「女優の娘」を読んだときと、
同じ感覚。
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世間からは眉を寄せ、疎まられる存在の非行少年や風俗業の少女たち。この子たちも、光り輝く存在として生まれてきたはずなのに、大人や環境の犠牲となって、悲しく過酷な生き方を強いられてしまっている。大人として、私たち一人一人に出来ることは?目の前にいる子どもたちに出来ることは…?親や社会が悪いと批判するだけなら誰でもできる。子ども達の気持ちに寄り添って伴走できる大人でありたい。多くの事を考えさせられる貴重な本です。今後の行政はじめ環境の改善も期待しつつ、星4つ。
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地元沖縄の、知らなかった顔を見た。
同じ土地で生きている人たちの話とは思えない壮絶な出来事だらけ。
若年層の貧困について何も知らなかった。
知れて良かった。何か出来るわけじゃないけど、知らないより良かった。
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タイトルが、裸足の少女とネガティブなイメージでしたが、読み終わると、ネガティブから脱出しようと強い命を感じた!
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言葉にならん。何を書いても上から目線な感じになる。
沖縄のキャバ嬢たちへの生活史聞き取り調査ルポルタージュ。
読んでてキツい。
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wifeの言う通りめちゃめちゃ面白かったから一気に読んだけど、俺なんかからは何て言ったらいいのか言葉がない
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読んでいてこんなに辛く苦しい本はなかなか無い。だけど読み終えた後には、読んで良かったと心から思った。
著者の上間さんは琉球大学の教授(教育学)で、1990年代後半から2014年までを東京で、それ以降は故郷である沖縄で、未成年の少女たちの調査と支援に携わる活動をしている。
10代の若いうちに出産をしたり、性風俗の世界で働く少女たちと関わってみると、そういった少女たちの多くが家庭で虐待(性的虐待を含む)されていた経験や、強姦された経験、そして恋人からの暴力を受けていた経験などを持つことが分かっていく。
この1冊の本に6人の少女が登場する。
彼女たちは、普通の少女であれば中学から大学あたりまでの青春を謳歌している時代を壮絶に生きている。
性的に早熟であるため10代のうちに妊娠をして産む道を選ぶ少女、稼ぐためまたは恋人に貢ぐために性風俗で働く少女、親や恋人から凄惨な暴力を受けてきた少女など、どうしてこんなに若い女の子に苦難ばかりが降りかかるのかと感じてしまう少女たちのノンフィクションが紡がれている。
精神的な分野については明言はできないけれど、彼女たちの多くは、大切にされた経験がないからそのような苦難の道を選んで進んでしまうのかもしれないと感じた。
恐らくそれを回避する方法はいくらでもあるはずなのに、彼女たちにとっての最善が、奇しくも辛い道になってしまっていたりする。
読んでいて辛く、もどかしいのだけど、それが既に過去のこととして語られている章では、その先にあった晴れやかな現在についても知ることが出来てほっと一息つけたりもする。
この本に登場する少女たちは、壮絶な人生ではあるけれど、みな真っ直ぐ懸命に生きていて、とても美しい。
自分のためじゃなく、誰かのために生きるという身の削り方をしていて、もっと自分本位に生きていいのに、とつい思ってしまう。
そんな彼女たちにいつも寄り添う上間さんの存在がとても優しい。上間さんがいなければ、とっくにこの世から飛び去ってしまった少女もいただろうと思う。
身内のほとんどが信じられない存在である彼女たちにとって、他人である上間さんこそがいつでも信じられる味方なのだと読んでいて感じた。
ずっしりと重くて、だけど温かさや少しの希望も感じる本。
ささやかでも自分の居場所を見つけられた少女たちの本物の笑顔は、やはりとても美しい。
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沖縄の若者事情、家庭環境事情。
連鎖なのかそれも風土なのか、筆者が仲間となる事で得た情報である。
疎まれたり不思議がられながらも仲間にいれてもらう。
決して知りたがりの部外者でないから見えたものがあると思う。
土地ならではの商売や強みを活かして、雇用を増やし定着させ悲しみ苦しみを抱える人たちを減らしていけないだろうか。
この辺りは沖縄出身の議員さん達がしっかりと考えて欲しい。
DVの連鎖や水商売と風俗、そんな事を考えさせられた書でした。
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沖縄は異国情緒あふれる街だと思っていましたが、この本を読むと情緒どころかもはや異国な感じを受けました。幸せになる子がいてよかったです。なんだか辛くて、再読したいとは思えない本でした。