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社会保障制度を元国家公務員である著者が分かりやすく説明した一冊。
社会保障制度の成り立ちや役割、今の日本の状況、これから人口減少していく中での課題などをエビデンスをしてしながら記載しています。
公助と共助、自助でこれからの社会保障制度をどのように維持していくべきかという部分は大変勉強になりました。
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これは良書。元官僚の著者の上から目線だけ気にしなければ、最良の分析考察を厳密なデータとともに把握できる。
成長が止まり、税収が減り、社会保障の予算に占める比率が50%を超え、政策的な自由度が限りなく小さい。例えば教育に全く使えない。それが我が国の実態。
そんな中、日本人の貯金好きは異常。無駄にため込まないために一番大事なのは公的年金への信頼感だが、政争の具になってそれが失われている。
結果として今、日本は貧困が進んでいる。しかも中間層が減って貧困層が増える二極化。何といっても最大の原因は非正規雇用。同じ会社で働いているのに、非正規は社会保険が自腹。つまり低所得者ほど相対的な社会保険負担が大きい。
打ち手は何か。とにかく皆が働くこと、働きやすい環境を作ること。規制緩和でビジネス作ろう。高齢者にもどんどん働いてもらおう。知的産業では、フィジカルな優位性は関係ない。女性の活躍が広がる。北欧は60年代に女性のGDP貢献が壮絶だった。保育所作ろう。
海外では少子化対策ではなく家族政策(Family policy)という表現が普通。そして消費税増税。使途は若者。老人しか投票しない日本を変えよう。
参考文献として本書の主張への反論も多数収められている。そういうところも健全。
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厚生省の統計問題がわちゃわちゃ言われている今この時期(2019年頭)に自信を持って言う事は出来ないけれども、官僚としての長い実務経験のある著者が、良質なデータを数多く提示した上で、日本の社会保障の現状についてイデオロギーを交えずに歴史背景や他国との比較の上で冷静に分析している。
「教養としての」という名のついた本には表面的な話を並べ立てるだけで、学びが少ない本も少なくないが、本書は本当の意味で「教養としての社会保障」と言い得る良著である。
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社会保障の理念、社会保障制度と経済成長との関連性の説明がわかりやすい言葉で丁寧に説明されており、とてもわかりやすかった。
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【ミクロとマクロ】
福祉の現場にいてミクロの視点で社会保障の物足りなさを感じている。だからこそこの本でマクロの視点を知ることが有意義だった。
寿命延伸
医療の進化
労働力不足
少子化
人口減少
「安心して子供が産めない」社会であるがというが「計画的でない子供」が問題になっている気がする。家計が苦しく両親が働くことによる子供に対する愛着不足。貧困による教育格差。非行化。引きこもり…などなど。
制度の整備が必要なのは大前提。
加えて「共助」など心の整備?が必要。
「自分さえ良ければ」という考えが社会保障制度の最大の敵ではないだろうか。
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初心者にもわかりやすくまとめられていて勉強になった。
社会保険料は高いと思っていたけど、そうではないな、と感じるようになった。
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・医療、介護、年金、失業、子育て、公的扶助、社会福祉、公衆衛生、健康増進など生活万般のリスクを補うもの
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## 感想
- 普通に知識の勉強としてよかった。歴史を紐解く、というとあれだが、国民皆保険を作るところから現代までの話をざっと眺められた。
- 元、内閣官房内閣審議官の人ということで、どこかに寄った話だと嫌だなと思ったが、思ったよりもニュートラルな立場で書かれていた。最後の方はエモさもあったがご愛嬌(定量や戦略ではなく思いが乗っかる文章で終わる、という程度の意味)
## メモ
- 社会保障が理解されづらいのは
- ①政治・経済・雇用・家族政策・医療・など幅広くまたがるため。
- ②マクロ経済の仕組みを踏まえなければいけないが、ミクロ経済の感覚が混ざるため(往々にしてマクロにとって正はミクロにとって悪≒逆行する)
- 自助を基本とし、共助が補完し、それでもダメなら公助がある。
- 共助は、年金や雇用保険など、防貧の考え方。公助は救貧(救済施策。例えば年金で支払い能力がない人は保険料免除ができたりすることもそれ。)。
- チャレンジができて、失敗しても貧しない仕組み、がセーフティネットがある、と言える状態。
- 日本の社会保障は、終戦時期且つ高度経済成長時代だから成り立ったモデル。
- 号令で民営化したり中央管理的にしたり。
- 人口オーナスの時期、少子高齢化では、立ち行かなくなる。
- 逆に言うと、労働人口を増やすしか無い。
- 女性を増やす、高齢者でも働く、(外国人を受け入れる)、生産性を上げるetc
- 女性雇用ではなく、家族労働戦略(男女でどうやって総量としての雇用を増やすか)の視点で考えるべき。
- 日本の制度は、国民皆保険という奇跡や、医療や介護の手厚さはピカイチ。
- アメリカはいまだに保険に入れない人もいる。
- すぐ救急車呼んじゃうみたいな問題もあるが(やかかりつけ医などがないスウェーデンでは病院が数週間先まで待つとかもザラらしい
- 内部留保(会社が蓄えているお金)が多い
- 高齢者の貯金も多い
- ps.最後に、職場の後輩に引退時に送ったとされる文章が思いの外よかった。初めて社会人=公務員になった諸君へ。実態把握能力・コミュニケーション能力・制度改善能力、が必要だ、という話。
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少し表現や記載が冗長な部分もあるが全体を通して楽しんで読めた
深く考えたことはなかった社会保障の意義、制度設計の重要性など、当事者ならではの視点で描かれていて勉強になる。
タイトルの通り大人の教養として読んでおきたい本
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人間は助けてあって生きていく。その思想を形にした画期的なシステムが社会保障
●本の概要・感想
多くの社会人が給与明細の控除額を嘆く。その控除額が社会保障を支えているのである。徴収分を嘆くのはミクロの視点であり、その意義を理解するにはマクロの仕組みを知らなければならない。社会保障の制度は一人ひとりが安心して暮らせるために作られた合理的なシステムだ。これを守り、生かし、いかに日本を発展させてゆくか。きちんと社会保障を学べば、給与明細や税徴収の見え方が変わるに違いない。社会保障は生きる価値の無い人などいないとする。人は時に助け合い、支えあわなければならないとしている。その制度を皆で選んでいる。そのことを我々は知るべきだろう。
●本の面白かった点、学びになった点
*社会保障がリスクを分散させる。不安を軽減させる
・人生にはリスクがつきものだ。明日事故にあうかもしれぬ。一家の大黒柱がいなくなるかもしれぬ。難病を発症し、いつものように働けなくなるかもしれぬ。もし、そんなリスクが現実になったとき、誰も手を差し伸べてくれない世界だとしたら。自分の貯蓄や家族だけしか当てにできないとしたら。人々は不安を抱き、他者を信頼しづらくなるかもしれない
・社会保障は助け合いを約束したシステムだ。生きづらい人、生活に困窮する人皆を支えていく仕組みである。生活には困っていない人たち同士でお金を出し合って、いざというときに備える。そのような仕組みがあるからこそ、僕たちは安心して人生を送ることができる
*社会保障が経済を回す
・日本の成長産業は社会保障と深く関わっているところばかりだ。福祉や医療、教育等..。もし、社会保障がなければ、金持ちは自分の資産を抱え込んでしまう。そうならないように、一定の額を徴収し、社会保障として還元することで、経済が豊かになる
・今や社会保障に関わる消費および投資がその地域を潤している場合もある
*社会保障は恵まれない人々の自立を支援する。自助・互助・共助・公助の考え方
・社会保障は何でもかんでも人々を支援するというわけではない。皆でリスクを分散しつつ、本当に大変な目にあっている人にはお金を渡すという仕組み
・まずは自助と互助を求める。あくまで自分の力で、それでもうまくいかない場合には周りの力で助けあう。それでもうまくいかない場合には共助の仕組みが働く。自分が普段払っている保険によって支援を受けられる仕組みだ。それでも困窮にあえぐ人には公助によって支える。虐待や生活保護者などがこれにあたる
*年金は破綻しない。なぜなら、ある分しか払わないから
・年金が破綻すると吹聴された政権があったが、全く払われなくなるということはない
・マクロ経済スライドという仕組みを導入した。ざっくり言うと、「払える分しか払わない」という仕組みになっている
*皆保険を達成した日本の奇跡
・皆保険を達成したのは日本が戦争に負けて資産格差がほとんどなくなったから。今の中国などでは、皆保険制度を作り上げることはムリだろう。資産家や金持ちが金銭的に割りを喰う制度になるからだ
●読んだきっかけ
オーディオブックのセール。図表が54もあってびっくりした。とても良い本だったけど、図表はオーディオブックと相性悪いんだよな
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社会保障の理解が難しいことの理由の一つは、制度がとても複雑でしかもスケールが大きいことにあります。
できるだけ分かりやすく、一人ひとりの生活に関わるもの、という社会保障の基本をベースに、〜(略)〜「市民目線」で解き明かし、社会保障をある種の「一般教養」として理解していただこう、というのが、本書の主旨です。
社会保障が国家の機能として普遍的に位置付けられていくのは、第二次世界大戦後です。イギリスで有名は『ベバリッジ報告』で福祉国家の理念が語られ、「揺りかごから墓場まで」のスローガンのもと、福祉国家への道を歩き始めました。
日本でも、1950年に当時の総理府に設置されていた社会保障制度審議会から社会保障制度に関する勧告が出され、1961年に国民皆保険・皆年金が達成されました。
近現代国家の社会保障の機能をひとことで表現するとすれば、「民生の安定」ということになろうかと思います。民生の安定とは、国民の生活・生計の安定を守る、ということで、人々が生活に困ることなく安んじて生活できるようにする、ということです。
社会保障のもう一つの機能は、民生の安定の延長上にあります。社会の分裂を防ぎ、それを通じて社会の発展を支える機能です。
さらにもう一つ加えると、社会保障は、近代化によって失われた社会=コミュニティーの相互扶助の機能を、国家が代替・補完するという形で生まれたきたと言えます。つまり、失われた相互扶助システムの代替が社会保障の機能ということになります。
日本の社会保障制度は、国民の「安心」や生活の「安定」を支えるセーフティーネットであると定義されます。具体的には、社会保障、社会福祉、公的扶助、保健医療・公衆衛生の四本柱で構成され、人々の生活を生涯にわたって支えるものとされています。
大事なことなので繰り返します。
共助とは、一人ひとりが、自分の責任で、つまり、どこまで行ってもリスクは自分のものだから、本来なら自分の責任で解決するべきものだけれども、現実には誰もが一人では負いきれないリスクに遭遇することもあるし、それを全部一人ひとりの自己責任ということにしてしまうと個人の生活が破壊されるだけでなく、結局は社会全体が壊れてします危険性が大きいから、危険性を小さくするためにリスク回避を共同化する、ということだと思います。
その考えを具現したのが、社会保障の仕組みです。つまり、社会保険とは、自助を共同化する仕組みということになるのです。
日本の社会保障の特徴
第一の特徴は、国民皆保険、皆年金制度であることです。
第二は社会保険方式に公費を投入し、保険料と税の組み合わせで財政運営していることです。
特徴の第三は、職域保険と地域保険の二本立てになっていることです。
そもそも、保育サービスも育児休業(所得保障)も権利として保障されるべきものです。
障害者雇用・母子家庭の母親の就労支援
給付型の福祉制度による障害者や母子家庭世帯の支援が必要であることは論を俟ちません。が、給付だけはなく、障害者も母子家庭の母親も、労働により社会参加し自立するこ���が、本人にとっても社会にとっても有益です。
『平成24年版厚生労働白書』は、社会保障の歴史や基本哲学、今日的課題について体系的にかつとても分かりやすく記述しています。
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/12/
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社会保障がゼロから分かりました!
(詳細は↓)
https://note.com/medialpxc7/n/ne8cb1cf0248d
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誰もがなんとなく知っているけど、明確には答えられない。
そんな「社会保障」について、これ1冊でみっちり学べる本です。
社会保障は「あくまで自立して生活することが前提で、もしダメになったらみんなで助けるよ」っていう制度で、だけどそれにはいろんなパターン・ケースが存在することを知りました。
日本の社会保障は世界一と言われているが、一方で世界一の高齢化の国でもあると言われています。
そのため、このままのルールでは無理が生じてくるという考察も勉強になります。
個人的に、この本を読んで、いま契約している生命保険の無意味さに気づいて
解約できたことが一番の収穫です。
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オーディオブックにて聴了。ものすごく勉強になった!本も購入を検討。
日本の皆保険制度が世界的にも珍しく、よく出来た仕組みだったとは。
一方で、リタイア後の層に手厚く、現役世代に優しくないという日本の社会保障の設計自体は、もはや時代に即していない。こういった制度も現実に合わせて刷新されていくべきだと思う。
マクロ経済スライドはまさに現実に合わせて保障を見直す、年金制度持続のための仕組みなのに、「年金が減る!」と騒がれて叩かれていたような…?
思想の一貫性なくその時々で政策を批判し煽り立て、有権者側に無知や無関心が植え付ける(政治は誰がやってもダメなもの、変わらないと諦観の念を抱かせる)マスメディアにも責任の一端はあろうが、高齢者優遇の政策や制度が変わらず残存するのは、最終的には《選挙に行かない》という行為を果たしてしまう若年世代自身の責任でもあると考えさせられる。
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普段当たり前と思っている社会保障。でも、世界を見渡すとこんなに恵まれた国は稀なんだなぁ。日本に社会保障ができた背景、制度の仕組み、充実した社会保障のために私達はこれからどう行動していくべきなのかとても勉強になりました。教養として一度は読んでほしい本です。