問題提起と事例報告
2017/07/04 17:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
普段使っている擬音語、擬態語。しかし『「スクスク」と「クスクス」はどうして意味が違うの?』などと考えたら「何か法則はあるのかとか」いろいろ不思議に思えてくる。本書の各章のタイトルにはそんな疑問を表した文章が並ぶ。
オノマトペを扱ったフォーラム(2017)との連携企画で発表されたものを中心にまとめられている。外国語でのオノマトペの扱いの違いとか、幼児語との関係など、面白い問題提起がたくさん見つかる。
日本語は「オノマトペが豊富」でそれが「外国人に難しい理由の一つ」などと聞いたことはあるが、オノマトペが豊富なのは日本語だけなのか。多数の言語の調査は興味深いし、「英語では動詞で区別するところを日本語は副詞」などという説明は面白い。幼児語で名詞だった「ワンワン」が成人の言葉では「ワンワン泣く」など副詞になっていく過程などもわかるったら面白そうだ。
興味深い問題提示も多かったが、研究としてはこれからの部分が多いのだろう、調査事例報告に終わっているものも少なくなかった。少し物足りなさも残るが、これから驚くような新しい視点が出てくることを期待したい。
オネマトペの理屈
2023/01/31 06:59
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投稿者:だい - この投稿者のレビュー一覧を見る
○オネマトペとは
擬声語 わんわん げらげら
擬音語 ざあざあ ぱちぱち
擬態語 きらきら さらっと
擬容語 のろのろ ふらりと
擬情語 いらいら わくわく
○クスクスとスクスク
オノマトペには音と音が表すものの間に自然な関係がある
p 張力のあるものを表す(破裂音)
パン(pan)
ピン(pin)
突然の事態 パッと(patto)
濁音(b d g z)
強い力、重いもの
二音節語基
・第一子音 触感的な特徴を表す
・第二子音 運動や状態の特徴を表す
スクスク
第一子音 s
第二子音 k
→滑るように上に伸びる
クスクス
第一子音 k
第二子音 s
→硬い表面のものが擦れる
比喩的に拡張され、擦れる様な笑い声
○オネマトペの意味変化
きんきん (擬態語、擬音語)
・きんきん声
甲高くて頭に響いてくる様子→やや不快
・きんきんに(2000年以降)
とても冷えている様子
きんきんの源流は、室町時代(看聞御記)
茶碗と手鞠が、甲高く打ち合い響いてくる音
変化のポイントは意味の中心が“固さ”から、“冷たさ”に移動したこと
また、頭がキーンとなるほど冷たい感覚の二筋があいまって形成されたもの?
○オネマトペに方言?
雀の鳴き声
チュンチュン 近畿中国地方と東北日本海側
チーチー 関東中部、四国九州など
→周圏的分布
○外国語に方言?
オノマトペの多い言語の共通点
・未開・未発展の地域に多い
・アニミズム文化に多い
得意分野 音や視覚触覚
苦手分野 感情、色、匂い、味
○外国人に使えるか?850
○言葉の発達に役に立つ?1020
○赤ちゃん言葉とオネマトペ1190
○モフモフの由来1360
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オノマトペとは擬声語、擬音語、擬態語などのことで、たとえば「ギャーギャー」、「ワンワン」、「ドッシリ」などである。本書はそのオノマトペについて日本語のそれに限らず、海外のオノマトペも含め広く分析、考察したもの。私は日本語は世界でもトップクラスでオノマトペの多い言語なのでは、と思っていたが、本書によれば実はそうでもなく、たとえば、日本語のオノマトペの概数は「2000語以上」なのに対し、朝鮮・韓国語では「5000語以上」、タミル語、ヨルバ語、イグボ語などでは「無制限」とのこと。一方、日本人に最もなじみのある英語は「数百語」。
その他にも語の反復や音の分析等、広い視点でオノマトペの概要が掴める面白い本であった。
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オノマトペの音韻的特徴,方言としてのオノマトペ,日本語以外の言語におけるオノマトペなどについて,各章は独立しているのでどこから読むことも可(とはいえ敢えてバラバラに読まずとも,最初から通してさっと読み通せる)。
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音やモーラ形での印象の違いや、外国語のオノマトペなど興味深い話題も多かったが、章ごとに執筆者が異なる書の常として、テーマ間の繋がりが見えにくく、痒い所に手が届かない。オノマトペの研究はまだ浅いと記されているが、横断的な評価が読みたい。
なお副題にあるピカチュウにはほぼ触れられない(というかこれはオノマトペでないのでは?)
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サブタイトル見て、この本大丈夫かなぁって思ったけど、なかなかにドン・ピシャリ、笑。読者層が厚いとは言えない言語学本で増版されてる理由も読んで納得。
オノマトペって、一見面白いのに学問すると掴みがたく苦手だったんです。積読本がいくつかあるくらい。説明もスッと入ってくる。
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普段何気につかっているオノマトペを言語学の見地から読み解いていきます。
オノマトペにこんな構造や意味があったなんて、とびっくりする話が多く大変勉強になります。
海外のオノマトペも興味深いですね。
大変面白かったです。
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擬音・擬態語を意味するオノマトペ。
本著はオノマトペに関するシンポジウムと同時に企画された、8編の異なるテーマの研究をまとめた一冊。
我々が普段何気なく使っているオノマトペは、考えてみるとかなり不思議な概念だ。
なぜ理解を超えて感覚で共有できるのか。どういった原則があるのか。などなど、言語の構造や認知過程はわからないことだらけ。
本著ではそれらをはじめ、海外でのオノマトペなどにも触れている。
各テーマごとのページ数が少ないため論考としてはボリュームが不十分ではあるが、そこらの同種の本よりよほど要点がまとまっており、テーマの面白さも相まってオノマトペ入門として良い一冊であった。
気になるテーマを見つけて、じっくり調べる足掛かりにもいいと思う。
個人的には認知心理学的観点からの6章 ことばの発達に役立つのか、についてが特に興味をひいた。
同じように思える行為でも対象の微妙な違いで「意味の中心」が動き、言語表現もニュアンスが変わる。オノマトペはその中心に直結した観念でもあるということに、感覚を伝える概念としての核があるように思えた。
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序 日本語にはオノマトペが欠かせない
1 「スクスク」と「クスクス」はどうして意味が違うの?
2 オノマトペの意味は変化するの?
3 オノマトペにも方言があるの?
4 外国語にもオノマトペはあるの?
5 外国人は日本語のオノマトペを使えるの?
6 オノマトペはことばの発達に役にたつの?
7 どうして赤ちゃん言葉とオノマトペは似ているの?
8 「モフモフ」はどうやって生まれたの?
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オノマトペというものが随分と気になっていた。中国語も英語も学んだ上で、日本語のオノマトペの表現の豊富さが好きだし、楽しい。ちょっと勢いで自前のオノマトペを使ってみても通じちゃったりする。
でも至って真面目な本書、軽妙なオノマトペと難解な学術表現のギャップが甚だしいのだけれどそこまで含めた味わいといおうか。勉強になる上にシュールさにくすりと笑える楽しい一冊だった。
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この岩波科学ライブラリーでは、これまで生き物に関するものばっかり読んでましたが、この本が初生き物以外の本です。
読む前はもうちょっとユルい内容を想像していたのですが、読んでみると、かなり学術的な内容でした。でもそれはそれで面白い。何故オノマトペからその対象のものを想像できるのかとか、日本語以外のオノマトペとか、オノマトペと赤ちゃん言葉とか、どれもなかなか奥が深い。いや〜こういうことをちゃんと研究している人がいるんだ。学問の世界は奥が深いですね。
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副題や表紙からは柔らかい読み物を連想させるが、その実
真面目でどちらかと言えば硬めの論説集。ただ一本一本が
短めなのもあって読み易く楽しむことができた。この本を
入口にさらに奥深く進んでいくのが正しいだろう。ただ
オノマトペが何処まで探究されているのかはわからないの
だが。
アメコミ風漫画を描いていた時に描き文字をどうやって英訳
しようか悩んだことを思い出すな。
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言語学未習者からはとっつきやすいトピックから、科学的な究明のあり方を追体験しつつ、その背後にあるアプリオリな感性の存在について哲学や生理学などに跨る広範な不可思議に触れられる。
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人間はオトマノペに対してどのような印象を抱き、どのように獲得しているのか、またオトマノペに法則はあるのか。
複数の観点からオトマノペに対してアプローチが行われているが、中でも外国語のオトマノペと赤ちゃんとオトマノペに関するものが面白かった。
外国語にもオトマノペはあるが、ヨーロッパから離れた地域の言語に多く、アニミズム文化にも多く存在するという仮説は興味深い。
赤ちゃんとオトマノペについては、赤ちゃんは脳が未発達のため視覚と聴覚の刺激が関連づけられて音と視覚の間に類似性を感じるとあった。以前読んだ『幻覚剤は役に立つのか』の中で、脳のデフォルトネットワークが発達することで固定された考え方になるが、子供は脳の回路が最適化されていないため、柔軟な考え方ができるとあったが、オトマノペの話もまさしくそれとつながっているのだと感じた。
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身近に溢れるオノマトペ。
知ってるつもりでも、言語学者にかかれば、その奥深さが見えてくる。
オノマトペの音の構成、その仕組みには法則がある。
モフモフは、学んでなくても「猫を触った感じ」「柔らかい毛布」などのイメージが自然とわいてくる。
これは、その法則が自然と私たちの中に学習されているからなのだ…。
言語学の本を学ぶと、なぜこんな複雑なルールを私たちは知らないうちに理解しているんだろうと、とても不思議な気持ちになる。
ほんとに言語学って面白い。
この本は、なかなか難しい内容を、とてもわかりやすくまとめていると思う。
学びも多かった。
とくに驚いたことは次のこと。
一つ目、オノマトペの音には一つ一つ、なんらかのイメージがある。ここはわかるんだけど、一音目にくるか、二音目にくるかでイメージが変わるということ。「フワフワ」と「ワフワフ」だと、同じ音を使っているにもかかわらず、全く受ける印象がちがう。これは初めて気づいた。
二つ目、上の一つ目の延長だけど、なんと、新しいオノマトペが生まれたらどんなふうに運用されるか、その予想ができるシステムがあるらしい…。本書では「モフモフ」を使って予想が算出されていて、だいたいのイメージにあったデータベースになっていた!
三つ目、わたしは日本語にオノマトペが多いということで、他国はオノマトペがあまりないと思っていた。が、実は韓国語のほうがオノマトペが多いということ、さらに多い国があるということを知った。さらに、オノマトペ総数と、オノマトペで表される概念のレベルが異なるらしい。これはとても面白く、さらに自分の日本語びいきがよくわかって、少し恥ずかしくもなった。
これ以外にも面白い話がたくさんあったが、紹介しきれない。オノマトペは奥深い。
国立国語研究所と言語系学会連合共催、第10回NINJALフォーラムで紹介された内容だとか。
長年積読本だったのだけど、ようやっと読み終えました。面白かった!!